【基本】チタンサファイアレーザー

サファイア(Al2O3)にTi3+イオンをドープしたレーザー媒質を持つレーザーが、チタンサファイア(Ti:Al2O3)レーザーです。0.66~1.15μmの幅広い帯域で発振され、一つの媒質としては最も広く、波長可変レーザーとして知られています。最も効率が良いのは、800nmです。

また、媒質がサファイアであるため、硬く安定しており、熱伝導性も良いのでレーザーの実用には有利です。励起光源としては、Nd:YAGレーザーの第2高調波や、アルゴンレーザーなど高出力で安定したレーザーが用いられます。レーザー上準位の寿命が3.2μsと短いため、ランプ励起は使えません。

発振形態としては、超短パルスから連続発振まで幅広い使われ方があります。チタンサファイアの結晶と、波長選択と分散補償のためのプリズム対、可変幅スリットから構成される共振器でパルス幅11fsの超短パルスが得られた例もあります。

また、近年は広帯域にわたって分散を制御するチャープミラーなどを使うことで10fs以下のパルス幅も実現されています。理論的には、350nmある利得帯域幅からすると、3fs程度のパルスが発生できる可能性があります。

この超短パルスは、共振器内のパルス自身がレーザー媒質内部で引き起こすレーザービームの自己集束を利用したカーレンズモード同期によるものです。いったんモード同期がおこると、自己位相変調により周波数が広がり、さらにパルスが短くなり、ピーク強度が増加します。これにより安定したモード同期発振がなされます。

さらに、従来の色素レーザーに比べ平均出力が大きいという特長があります。チャープパルス増幅を用いた再生増幅器も実用化されており、mJ程度のさらに大きなエネルギーを扱うことができます。

テラヘルツ光の発生やフェムト秒分光、微細加工などの用途で用いられています。

【応用】レーザーの医学応用(3)

レーザー治療

レーザーの医学応用として、治療や計測がありますが、ここでは、治療についてみてみたいと思います。

レーザーの生体への作用は、以下があげられます。

  • 光熱的作用:光が組織に吸収され熱となることで何らかの作用を行うことです。アブレーションなどがありますが、その他にも、熱的な除去、凝固、破壊などがあります。この作用により切開や穿孔、面的な除去を行います。心筋梗塞の心臓に対して貫通穴を開け血液循環を回復したり、血液凝固により組織の接着、止血などの実績があるようです。
  • 光音響作用:光を照射することで発生する高周波の振動を治療に役立てるものです。一例として、結石治療があります。多くは、水の入ったバスに入りスパーク放電などで衝撃波を発生させ、衝撃波により結石を砕きます。この方法を適用できない症状には、レーザーによる治療が行われることがあります。短パルスレーザーによる急速加熱により結石に膨張が起き衝撃波が発生し、その反作用としてさらに結石が破砕されるというものです。
  • 光化学的作用:光を照射することで、化学的に病変部を壊死させたり、活性化することで回復を早めることを指します。低出力のレーザーでは、痛みの緩和や鍼と同等の作用を発生させる場合もあるようです。

このように、レーザーの特性を有効に活用することで、消火器、呼吸器、循環器、泌尿器、眼科、耳鼻科、皮膚科、歯科等の幅広い領域で実用化されています。

1. 眼科治療

1.1 眼底治療

眼科治療のうち、眼底疾患へのレーザー応用は比較的早くから行われたようでようです。疾患としては、網膜症や眼底出血が対象となり、失明の危険もあるだけに重要な治療方法となっているようです。

眼球にコヒーレントな光が入ると、網膜上に集光されます。光が通過する水晶体等は水が主成分ですので、青や緑色の光が高い透過率を持ちます。このため、光源としては、514.5nmのArイオンレーザーが用いられることが多いようです。また、治療内容によっても変えており、例えば血管系はヘモグロビンへの吸収が良い577nmのレーザー、脈絡膜など深部の治療は波長の長い630nmのレーザーが使われているようです。

このように、レーザーが網膜まで到達して集光するという特性を活かして、剥離した網膜組織を加熱して凝固させたり、止血を行います。

1.2 近視治療

近視は、屈折力の低下により網膜に像が結ばなくなる疾患の一つですが、レーザーを応用した近視治療は、角膜を適切に処置することで屈折率を正常に戻すことを指します。屈折を司るのは角膜の他に水晶体がありますが、角膜は空気と接しているためにその影響が大きいため、直接角膜を処理します。

処置は、大きくPRK法とRK法があります。PRK(PhotoRefractive Keratectomy)法は、角膜表面を2次元的に除去して曲率半径を大きくする方法です。RK(Radial Keratotomy)法は、角膜表面に放射状に切り込みを入れいる方法です。近年は、安全性の高いRK法が主流のようです。

レーザー光源は、高品質な加工ができるエキシマレーザー(193nm,ArF)が用いられることが多いです。しかし、近年ではピコ秒レーザーのような超短パルスレーザーも使われるようになってきているようです。

2. 皮膚科治療

皮膚科治療のレーザー応用で多いものが「あざ治療」です。あざは、正常組織中に病変組織ができることで発生します。従来は、外科的に切除したり、ドライアイスなど極低温で凍結壊死させる方法がとられてきました。レーザーでは、選択的に処置を行え、正常組織に損傷を与えないというメリットがあります。

病変部を選択的に処置するために、吸収係数が大きい波長のレーザーを用います。418, 542, 577nmに吸収ピークを持つヘモグロビンを考慮し、さらに、到達深度や組織の熱緩和時間を考慮して処置に使用するレーザーが選択されます。例えば、パルス幅が数ns~100nsのルビーレーザー(694nm)、アレキサンドライトレーザー(755nm)、Nd:YAGレーザー(1064nm)が用いられるようです。

このようにハードウエアだけではなく、レーザーの照射時間やパルス幅、パワーの設定などパラメータの設定も重要です。例えば、血管壁へ熱変性を与える場合は、血液中のヘモグロビンへのみ影響を与えるのではなく。血管壁にきちんと影響を与える必要があります。医療応用であっても、パラメータの精密な制御は非常に重要となってきます。

3. 光化学的治療

光感受性の物質を補助剤のように用いて、がんの治療が行われています。生体内の腫瘍に残りやすい性質がある光感受性物質を静脈注射し、その吸収波長のレーザーを病変部に照射することで、がん細胞を選択的に破壊する方法があり、光線力学的治療(PhotoDynamic Therapy)と呼ばれています。

使用する光感受性物質によりますが、UVレーザー(410nm、Kr)が用いられます。また、より深く作用を到達させるために波長の長い色素レーザー(630nm)が用いられることもあります。

ここで見てきた例は多くはありませんが、医療の分野でもレーザーが広く活躍しています。

【応用】レーザーの医学応用(1)

レーザーの生体への作用

レーザーは工業用途のみならず、医学の分野でも用いられています。その応用は、狭義には治療と診断(計測)ですが、広義には光通信や情報の記録、微細加工なども含まれるかもしれません。

ここでは、狭義の治療と診断に絞って、レーザーのどのような特長が、どのように活用されうるかという光学的特性を見ていきます。

まず、医学では扱う対象は生物(生体)です。そのため、生体の光学的特性を見ていきます。生体に強度I0の単色平行光を入射するとき、生体が均一な吸収体であれば、入射位置から深さxの光の強度Iは、吸収係数\(\mu_\alpha\)を用いて、次式であらわされます。

$$ I = I_0 exp(- \mu _\alpha x) $$

しかし、実際には生体内部に様々な物質があり、散乱体とみなした方が良いです。そこで、散乱による減衰係数を\(\mu_s\)として、総合的な減衰係数\(\mu_t\)を用いて光の強度は次のようにあらわされます。

$$ I = I_0 exp(- \mu _t x) $$
$$\mu_t = \mu_\alpha + \mu_s $$

さらに、生体表面での光の反射もあります。その反射率をRとして、光の強度は次のようにあらわされます。

$$ I = I_0 (1-R) exp(- \mu _t x) $$

光がある単一粒子に照射されたとき、その散乱光はあらゆる方向へ進みます。進行方向に対する光の角度を散乱角と定義するとき、その角度が90度より小さい(光が進む方向へ散乱する)ときを前方散乱といいます。反対に90度より大きい(光の進む方向と反対)ときを後方散乱と呼びます。ぞれぞれ、非等方散乱パラメータgを用いて、g=1, g=-1とあらわします。等方散乱の時は、g=0です。一般に、生体内ではg=0.8~0.97と言われています。

この散乱は、一度で終わるものではなく、何度も繰り返し生体内をめぐっていきます(多重散乱)。この光が吸収され熱に変換されたり、生体分子を励起したり、様々な相互作用が起こります。しかも、均一の物質ではないため、複数の減少が複雑に発生することになります。

生体の主成分は水で、約70%と言われています。この水は600nm以下の波長帯で吸収が増大することが知られています。また、生体内にはタンパク質も多く含まれています。このたんぱく質は紫外域で大きな吸収を示します。このように生体での光の波長に対する吸収をプロットすると、700~1500nm付近で吸収が比較的小さくなります。このため、この帯域を「生体の分光学的窓」とも呼ばれています。

このように、生体の場合には、その生成によって光学的な特性が異なります。つまり、組織の種類によるところも多いです。内蔵のような軟組織と歯や骨のような硬組織でも異なります。下の図には、軟組織での光の深達長を光の波長ごとに模式的に示してあります。

【応用】レーザー表面硬化

材料(特に金属)の表面特性を変化させるために局所的な加熱を行うことがあります。その熱源としてレーザーを用いたものが、レーザー表面硬化法(Laser Transformation Hardening)です。

レーザーを材料表面に照射して融点以下まで加熱し、その後、冷却することで材料特性を変化させます。金属の熱による硬化は様々な方法がありますが、レーザーを用いる特徴としては、選択的に一部分のみの加工ができることや、加熱に対して自己冷却が進むため冷却が早いことが挙げられます。

実用的な数mm深さの表面硬化を行うには、出力kW級のレーザーが用いられます。従来は、CO2レーザーがメインでしたが発振波長が10.6μmであり金属への吸収率があまり良くないため、加工効率は良くありませんでした。場合により材料表面に吸収促進剤を塗布するなどの工夫を行っていました。一方、YAGレーザーが実用に近づいてくると光源の置き換えが検討されました。YAGレーザーの波長1.06μmは金属の吸収率が高く表面硬化に適していると考えられました。しかし、半導体レーザーの高出力化が進むと、扱いやすさやコストパフォーマンスの点で利用が進む可能性があります。

レーザー表面硬化は1970年代ごろには、すでに開発が進められていた技術のようです。1990年ごろには、歯車、ピストンリング溝、モーター軸、シリンダライナ、タービンブレードなど多くの工業製品に応用されるようになりました。

2000年に入ると、実用的なkW級の高出力半導体レーザーが入手できるようになりました。半導体レーザーは金属への吸収が良く、ランニングコストが安価でメンテナンスフリー、ファイバーによりレーザーのハンドリングが容易という特徴があり、レーザー表面硬化に有利なため、プロセスの研究開発がさらに進むことになりました。近年は、レーザー光源のさらなる発達により、また、市場のニーズにより利用範囲が広くなっているようです。

R. C. Reedらは、kW級のCWレーザーを用いてビーム形状によって硬化にどのような影響があるかを3種類の金属材料に対して調べています。

レーザー表面硬化は、局所的な表面処理が可能で、自己冷却で効率という点で、レーザーのメリットを活かした加工方法であるといえそうです。

【応用】リップル

レーザーで材料(特に金属)を加工するときに、微細なさざ波形状の模様(リップル: ripple)ができることがあります。周期としては、使用したレーザーの波長程度で、深さはレーザーの強度によりますがサブミクロン程度のほぼ規則的な凹凸で、いわゆるグレーティングに近いものです。この現象は、直線偏光のレーザーを使用したときに観察され、その偏光方向やレーザー走査方向によって形成される構造が変化します。

これは、レーザーによって被照射材料の表面粗さによって励起された表面電磁波と入射レーザーとの干渉によるものと考えられています。

グレーティングの空間周期\(\delta_s\)は、励起された表面電磁波の波数をks、入射レーザーの波数をk0として、レーザー入射角度をΘとすると、以下のように表されます。

$$ \delta_s = \frac{2 \pi}{k_s \pm k_0 \sin \theta} $$

レーザーを適切に制御することで、このようなリップルを形成でき、写真のように虹色に光る模様を作ることもできます。

より実用的には、この技術を使って量子ドットを作る研究もなされています。こちらは、より高精度に加工するために2ビーム干渉により材料表面をエッチングしています。

【応用】サビ落とし

レーザーアブレーションの応用としてサビ落としがあります。アブレーションの閾値の差を利用して、材料表面についたサビのみを除去する技術です。パラメータを最適に設定することで、下地には全く損傷を与えることなくレーザーによりクリーニングすることができます。

パルス幅9ns、フルエンス0.3~0.4J/cm2、もしくは、パルス幅200ns、フルエンス1~4.4J/cm2のNd:YAGレーザーを照射することで厚さ4μmの赤サビをきれいに除去できているようです。除去後の表面粗さは0.89μmだったとのことです*。

市販化されている装置は、ヘッドを手に持ち、レーザーを対象物に照射するタイプが多いようです。ヘッドにはガルバノスキャナが内蔵されているものもあり、より高効率なサビ除去ができることが期待できます。レーザー出力は、100W程度以上のパルス発振のファイバーレーザーが使い勝手も良く多用されているようです。

ファイバーレーザーを使うことができれば、ロボット等によるレーザーのハンドリングが可能になるため、様々な表面形状に対して柔軟にサビとりを行うことができます。さらに、CAD/CAMと連携できれば自動で作業を実施できる可能性もあります。

また、アブレーション閾値の差を利用するため、サビだけではなく、成形型に付着した樹脂や金属についたセメント、金属に付着した油脂等の除去にもレーザークリーニングが使われます。

レーザーによるクリーニングは、従来はサンドペーパーや薬品に頼っていた作業を手軽に安全に環境にやさしい作業へと変えてくれました。今後も利用領域は拡大していくものと思われます。

*出典:レーザー応用工学、コロナ社、小原他

【応用】美術品の修復

絵画や彫刻品の修復にもレーザーが活躍しています。汚れた空気や経年劣化から美術品の表面がくすむ等の劣化が見られる場合があります。レーザーアブレーションの技術を使い、表面をほんの僅かだけ削り、元の表面を露出させ修復します。


PhotonicsMediaの記事にあるように、フィレンツェの研究所にて絵画を修復しています。様々なテストを行い、レーザーアブレーションで問題となる加工後の黄味がかった色を加工パラメータの最適化で克服しています。
ギリシャのFotakis教授のグループはKrFエキシマレーザーを用いて17世紀のイコンを修復したとしています。修復前後で見比べると、レーザーを用いた修復の効果がはっきり分かります。


また、近年の超短パルスレーザーの発展により、より高品質な修復ができる可能性も出てきました。”The potential of UV femtosecond laser ablation for varnish removal in the restoration of painted works of art”の記事にあるように、Paraskevi Pouli氏らのチームは、パルス幅500fsのTiサファイアレーザーを用いてナノ秒レーザーより高いエッチング分解能を実現しています。

イタリアのQuanta System社は、美術品のレーザー修復専用装置を販売しています。

このように、アートの世界でもレーザーが活躍しています。

レーザー微細加工をご利用の際のヒント

レーザー加工と言っても、実は、そのレーザーにも色々な種類があるのです。

 前半では、レーザーの使用用途によって、色々な種類があること。それを身近な例を引きながら、ご説明します。
 後半で、微細加工で使用されるレーザー加工の得意な点、不得意な点についてご紹介します。

●レーザーにも色々な種類があることを説明する為、所謂、「クルマ」を例にご説明します。

 日頃から、街中でもよく見かけるクルマにもレーザー同様に色々な種類があり、それぞれの得意分野があります。それでは具体的に、見ていきましょう。

 消防車は火を消すための専用車。トラックなら大量の荷物を運ぶことが得意。ミニバンなら多人数乗車と大きめの荷物を積むのに都合が良い。SUVなら、荒れた道でも安心して走れる。

 F1カーなどのレーシングカーは荒れた道は大の苦手。しかし、専用サーキットコースであれば、クルマ界では、最も速く走れるクルマです。

 一言に、クルマといっても、色々な種類があるというイメージを持っていただけたと思います。

 要するに、「レーザー」という“名前”は、色々な種類のレーザーをひっくるめた呼び名。それは、「クルマ」という“名前”のなかに、多様なクルマが含まれているのと同様です。

 従いまして、レーザーも、その種類によって、得意・不得意があります。

 例えば、会議などで使用するレーザーポインター。脱毛治療などに使用するレーザー。眼科治療に使用するレーザー。厚い金属板を火花を散らしながら切断するレーザー、など。

 世の中では、多様なレーザーが、それぞれの特徴を生かして、様々な現場で活躍しています。各分野のレーザーの仕事は、他の仕事が得意なレーザーでの置き換えはできません。つまり、金属板を切断するレーザーで、脱毛治療はできないという意味です。

●さて、ここからが後半です。当社でレーザー微細加工に使用しているレーザーにも、実は、得意・不得意があります。一応、念のために、補足しますが、後述する“不得意なこと”でも、条件によっては不得意でなくなる場合があります。
 このページで、敢えて、不得意なことをホームページに載せるのは、比較によって“得意なこと”の理解を助ける為ですので、ご承知おきください。

【得意なこと。特徴など。】

・少しずつ加工する。
 深さでいうと数μm~数十μmずつなどエッチングするような加工など。

・加工される部分以外への熱影響はほぼ無し。
 だから、樹脂材料でも焦げなく加工できるものが多い。

・薄く壊れやすい材料への微細加工(数十μm程度)
 例えば、切断加工、穴あけ加工など。
 加工時の振動、接触、摩擦、熱などがほとんど無く、材料へのダメージなどは、ほとんどありません。機械(刃物)加工の場合、一般的に、刃物と材料の接触で曲がってしまうなどの問題がありますが、超短パルスレーザーでの加工の場合、物理的な接触が無い為、そのような心配はありません。

・微細な形状を形成する。
 金属表面に段差50μmの階段を3段作る。

・数十μm程度の厚さの材料に、Φ10μm程度の穴を狭いピッチ(数十μm程度)で、Φ1mmのエリア内などに多数あけること。

・数mm×数mm程度のサイズに切り出す加工。或いは、数十μm×数十μmなどの切り出し加工も可能。薄い材料の方が得意。

・数十μm□~数十mm□程度の表層部分(数μm~数十μm)のみを除去すること。ただし、除去した表面には、レーザースポットの関係で、多少の凹凸は残ります。

【不得意なこと(できないわけではないけれど…)】

・深さ(厚み)数mm程度の加工。加工はできますが、時間がかかるという意味で不得意領域。

・大面積への加工。
 レーザーのスポットが十数μm程度なので大面積への加工は時間がかかる。

・通常、穴をあけると、穴の一方(レーザー出射側の方)の直径が小さくなる。 所謂、テーパー穴となります。
 但し、加工方法によっては穴の入口、出口の径がほぼ同じにすることも可能。

以上、微細加工の御検討の際に、参考なれば幸いです。

【応用】レーザーVIAホール加工

電子部品が載ったプリント基板の層間を電気的に接続するための穴(スルーホール)は、基板の小型化とともに小さくなってきました。一方で、電流確保のためにその数を増やす必要がある場合があります。また、ランドとの確実な導通も必要とされるため、穴の品質も求められます。

このVIAホール加工にもレーザーが用いられてきました。1971年に米ウエスタン・エレクトリック社により最初にこの技術が紹介されたようです。1974年には、同社がCO2レーザーを用いた加工装置を実用化してVIAホール加工の量産を始めたようです。この後、固体レーザー、エキシマレーザーを用いたVIA加工も提唱され、電子産業の盛り上がりの波に乗り、レーザーの一大応用となりました。

レーザー光源としては、樹脂を加工するという観点からCOレーザーが多く用いられています。また、このレーザーは技術的にも成熟しており大出力の者でも安定的に稼働でき、導入・ランニングコストも安いというメリットがあります。一方で、より大出力・高安定性を求め、YAGレーザーやファイバーレーザーなどを利用する例もあります。また、波長が長いと近年の微細穴加工に対応することが厳しくなります。実際にビアホール径は、数百μmだったものが、最近では数十μmにまで小さくなってきています。この微細化に対応するため、より短い波長のレーザーを用いる動きもあるようです。

VIAホールを加工するレーザー加工機は、電子部品の需要増から、より早くより多くの加工が求められます。そのため、ビーム走査はガルバノスキャナーで高速に行われます。さらに、1台の装置に複数のレーザーを搭載し、複数のビームラインで一度に加工する技術もあります。最新の加工機によっては、1秒間に数万穴という非常に高速の穴加工ができる場合があります。また、レーザー・レーザー光学系の進歩のみならず、アライメント・検査のための画像認識技術や、基板搬送技術も日々進歩しています。

基板の種類の多様化が進んできました。最近の加工機では、BGA, FPC, CSP, HDIなど様々な基板に対応できるようになってきています。このように、任意の加工対象へ柔軟に対応できるのがオンデマンド加工ができるレーザーの強みです。

【応用】レーザートリミング

レーザーは、微小な領域へエネルギーを集めることができ、除去量も精密に制御できるというメリットがあります。このように、微小な量だけ材料を除去する応用例の一つとしてレーザートリミングがあります。

ここでいうトリミングとは、抵抗やコンデンサなどの電子部品を少しだけ削り、その性能を調整することです。このような電子部品は最終製品の小型化・高性能化によって、どんどん小さく精度が高くなってきています。そのため、品質のばらつきが無視できなくなってきました。そこで、例えば抵抗であれば、抵抗そのものを少しだけ削り抵抗値を調整する作業が行われるようになりました。これにより、精度向上、歩留まり向上、製造工程での自動化、データ化ができるというメリットがあります。このような作業は、ファンクショントリミングと呼ばれ、そのための装置はファンクショントリマと呼ばれています。

ファンクショントリマは、レーザー、ガルバノミラーを含む光学系の他に、サンプルを移動させるステージや観察・アライメント系、性能を測る測定系などから構成されています。対象サンプルは、電子部品として個別になったものもあれば、ウエハを直接扱えるものもあります。装置形状は、多くを手動で行う卓上タイプからウエハを連続的に自動加工できる大型の装置まであります。

使用されるレーザーは、サンプルによって様々です。ナノ秒レーザーが使われる場合もあれば、より高精度の非熱加工を求め超短パルスレーザーが使用される場合もあるようです。波長もIRからGreen、UVまで幅広く使われているようです。レーザー出力も数Wの小出力タイプから、数十Wの高出力タイプまで用途に合わせて選択します。多くのメーカーでは、お客様の用途に合わせたカスタマイズを行っており、サンプルに最適な装置構成となっています。

かつては、微小粉体を高速・高圧で噴射して材料を除去するサンドブラストによるトリミングも行われていたようです。マイクロクラックが発生せず高速に低コストで導入できるというメリットがあったものの、微小量の制御が困難であり、削りすぎ(オーバーシュート)も起き、表面が荒れる(電子部品のノイズや安定性の原因)という課題がありました。

世界で最初にレーザートリミングを実用化したのは、米モトローラと言われています。1971年にネオジウムYAGとCOレーザーを組み合わせたレーザートリミングの開発に着手し、翌72年に米テレダインが最初の装置を市場に投入したようです。

このような、レーザーを用いたファンクショントリミンマを製造・販売しているメーカーは、国内外を問わず多く存在しているようです。また、その需要の増加、多様化によって、レーザトリマを専門に行う受託加工業者もあるようです。

今後も電子部品の小型化・高機能化、低コスト化が進むと考えられ、レーザートリマの重要性はさらに高まりそうです。