レーザーのパワーって何?(1)

 少々分かりにくいかもしれませんので、このテーマについては、2回に分けてご説明します。

 主に次の2つがあります。今回の記事では、1の平均パワーの説明をします。ピークパワーの説明まですると、長文になってしまいますので…。

 1:平均パワー(W)
 2:ピークパワー(W)

 平均パワーの単位W(ワット)はJ/sec (ジュール毎秒)です。これは、単位時間当たりのエネルギー量を表しています。

 余談ですが、蛍光灯などで60W(ワット)というときのワットは、電力としての単位で、電圧(V)×電流(A)ですので、レーザーの平均パワーを表すときのW(ワット)とは意味あいが異なります。

 さて、平均パワーというのは、パルス発振するレーザーだけでなく、連続発振するレーザーの場合でも測定されます。なぜ平均パワーかというと、高速で時間変化する強度の時間平均になっているからです。

 この高速での時間変化がどの程度高速かということについて、ざっと触れておきます。

 例えば、パルスレーザーは、数kHz(キロヘルツ)~数MHz(メガヘルツ)という高速でその強度が変化します。また、連続発振するレーザー(CWレーザー)の場合は、更に高速です。C=λν(光速=波長×振動数)の関係式から、可視光領域のレーザーの場合の振動数νを求めると、毎秒10の14乗回の速さで強度が変化しています。

 実際には、このような高速の強度変化を直接計測することはできません。その為、単位時間あたりのエネルギーである平均パワーで計測しておくのが便利です。また、大抵の場合、平均パワーが分かれば、実務上、問題はありません。

 ピークパワーについては、また次の機会に説明したいと思います。

【応用】レンズ付きフィルム

1980年代に、「レンズ付きフィルム」が大流行しました。フィルムを内蔵した簡易なカメラで、撮影後に写真屋へカメラごと持ち込み、カメラは回収され、現像した写真をもらうというシステムでした。回収されたカメラはリサイクルされていました。

一般にカメラレンズは、収差を取り除くために非常に複雑に設計された構造です。一方でレンズ付きフィルムは、全く異なる発想で開発されました。
元々は、高感度で適正露出域の広い高性能フィルムの応用先を探す過程で開発されたカメラらしいです。

筐体や内部構造はほとんどがプラスチックで作られ、カメラの命であるレンズもプラスチックレンズ1枚です。きわめて簡易な固定焦点式でシャッタースピードも固定です。絞りもあらかじめ固定されており(F11~F16)、パンフォーカスによりピント調整を省く構造です。レンズはプラスチックレンズ1枚と言えども、非球面レンズであり収差を減らし、フィルムの方をカーブさせて像面湾曲を低減させる工夫がなされています。

フィルムは全て引き出された状態で本体にあらかじめ格納されており、ユーザーが交換や巻き戻しすることはできません。撮影1回ごとにダイヤルで巻き上げる構造によって、構造の簡易化とフィルム保護を実現しています。

この時代に、小型軽量のカメラで簡単に写真撮影ができるということで、「使い捨てカメラ」と呼ばれるぐらい身近なものとなりました(しかし、メーカー側はこの呼称は使用していません)。実は、構造があまりにも簡易すぎるために、開発会議においても「本当に写真が撮影できるのか?」と指摘されたというエピソードもあります。

1980年代に流行したレンズ付きフィルムですが、デジタルカメラの登場で下火となります。しかし、2000年代になると、自撮やインスタントカメラの影響でこのような簡易的なカメラに再び注目が集まっているという話もあります。

このように、高感度フィルムと新しい発想のレンズにより、全く新しいカメラシステムができたわけです。

なぜ、超短パルスレーザーが材料の微細加工に適しているの?

端的に言えば、パルスレーザーとは【一瞬だけ光るレーザー光】です。
そして、なぜ微細加工に適しているかといえば、極わずかな量ずつ材料を加工することができるからです。

 一瞬という時間を具体的に表すと、1ピコ秒間や、1フェムト秒間という時間の長さです。日本語で書くと、ピコ秒が1兆分の1秒、フェムト秒が千兆分の1秒です。日常の感覚では、まったく実感が湧かないですよね。

 そこで、この時間の短さについて、ご説明します。

 光がものすごい速さで進んでいくことはご存知の方が多いと思います。光の速度は、秒速で約30万kmです。これは、1秒間で地球を約7週半する速度です。

 1秒という時間も短い時間ですね。ただ、1ピコ秒の間に光が進める距離は約0.3mmです。これは、微生物の仲間(ミカズキモ、ハネウデワムシなど)の体長と同じ程度の長さです。

 同様に、1フェムト秒間に光が進む距離は、ウイルスの大きさより大きく、細菌の大きさよりも小さい0.3μm程度。要するに、肉眼では分からないくらいの短い距離しか進めません。

 光でさえも、この程度の距離しか進むことのできない程の時間がピコ秒、フェムト秒という時間の長さです。

 ここで、話がちょっとややこしくなります。
 ここまでに、光がある時間内に進める“距離”のお話しをしてきました。しかし、レーザー微細加工の説明をする上で、もう一つ、大事な点があります。それは、“パルス幅”です。

 これについても、ざっくりと書いてみます。
 まず、用語「パルス」について。物理的な意味でのパルスは、短時間に急峻な変化をする信号や、振動現象などのことを指します。

 次に、パルス幅とは、要は時間の長さのこです。
 もう少し詳しく書くと、パルスの立ち上がり時に最大値の50%に到達した時刻から、立下り時に50%にまで減少する時刻の間で、半値全幅(FWHM)とも言います。

 分かりやすさの為に、敢えて山登りのイメージに当てはめて、パルスのイメージを説明してみます。ある人が、山のこちら側から登って、山の向こう側まで下りるまでの時間がパルス幅、というイメージです。

 登山のイメージと対比させながら、更に説明してみると…。( )の中が説明の為のイメージです。

 1パルスの時間(≒山登りから下山するまでの時間)の中で、そのパワー(≒山の高さ)は曲線的に上昇(≒登山)し、ある時間でピーク(≒山頂に到着)を迎え、時間と共に、立ち上がり時と対称的、且つ、曲線的に減少(≒下山)するものが一般的です。

 そして、このように極短時間だけ光る光が、100kHzとか1MHzという時間間隔で繰り返し発光するので、まるで連続して光っているように見えてしまいます。(注意:絶対にレーザー光を肉眼で直視してはいけません。)

 例えば、100kHzならば、1秒間に、100×1000回の発光を繰り返すということです。

 言い換えると、100kHzのピコ秒レーザーならば、10マイクロ秒に1回、ピコ秒(のパルス幅の)レーザー光を出しているということです。
 別の言い方をすれば、1秒間に10万回のピコ秒(パルス幅の)レーザー光を出しているのが100kHzのピコ秒レーザーと言えます。

 そのようなレーザー光を利用して、レーザー微細加工は、1パルスが極短時間のレーザー光を所定の位置に、必要な回数だけプログラムして照射できます。
 更に、これを様々な条件と組み合わせて制御しながら照射するので、極わずかな量の加工を細かく制御しながら加工できるのです。

 ここで、極わずかな量ずつ材料加工する(光と物質の相互作用を起こさせる)には、一定以上の“エネルギー”が必要です。実は、パルス幅が短くなると“ピークパワー”が大きくなります。これについてのお話しは、また改めて。

【応用】偏光顕微鏡

光には偏光という性質があります。この性質をうまく利用した顕微鏡が偏光顕微鏡です。偏光は19世紀に方解石を観察して発見されたと言われています。イギリスのニコルが2つの方解石プリズムを貼り合わせたニコルプリズムを発明し、それを用いた偏光装置を考案しました。これにより、自然光から直線偏光を得ることに成功し、鉱物や岩石の研究を進めました。さらに、イギリスのタルボットが偏光顕微鏡を発明したと言われています。

光を第一の偏光装置により得られた直線偏光に対して振動方向が直交するように配置した第二の偏光装置では直線偏光がカットされます。この状態をクロスニコル(もしくは、クロスポーラ、直交ニコル)と呼ばれます。第一の偏光装置をポラライザ、第二の偏光装置をアナライザと呼ばれます。この2つの偏光装置の間に複屈折物質があると、それを透過した直線偏光の光が変化し、アナライザを通して検出されることになります。この原理を応用したものが偏光顕微鏡です。従来は、岩石や鉱物を観察していたので、偏光顕微鏡は岩石顕微鏡、鉱物顕微鏡と呼ばれることもあります。

アメリカのランドは薄板状の偏光板を発明し、ポラロイドと名付け、後にポラロイド社を創業しています。従来の方解石が大きく入手困難で高価であったのですが、ポラロイドは薄く使いやすく安価ということで広く使われるようになりました。

偏光顕微鏡は、一般的な明視野光学顕微鏡の光路に被測定物を挟んで1枚ずつの偏光板を加えたものが最も簡易な構造の顕微鏡です。したがって、外観は光学顕微鏡と変わらないものもあります。

クロスニコル状態のポラライザとアナライザの間に複屈折物質がある場合、常光線と異常光線の屈折率差と物質の厚さにより両光線に位相差(レターデーション)が生じます。この2つの光線はアナライザを透過後に干渉しますが、波長によって干渉の強度が異なるため色付きが生じます。これを干渉色と呼び、レターデーション量と干渉色の関係を示す干渉色チャートというものがあります。

偏光顕微鏡を使用することで
・クロスニコル状態での複屈折の有無の確認
・回転ステージを用いての消光角の確認
・検板を使用しての伸長の正負の確認
・コンペンセータを用いてのレターデーションの測定
を行うことができます。
被測定物の形状に加えて光学特性を測定できることが、偏光顕微鏡の最大の特長です。SEMやTEMでは実現できません。

具体的な用途としては、
・アスベストの定性分析・定量分析
・医療分野では、結晶性関節炎の診断・痛風の診断
・高分子材料開発での形状・光学特性評価
・雪の結晶の分析
・製薬会社での原材料の観察や品質検査
などがあり、多方面で離床されています。

【基本】モデルによる加工結果の予測

1. 加工結果の予測

レーザー加工には多くのパラメータ(変数)が影響します。例えば、穴加工を例にすると、レーザーのパワーを増大させると穴直径が大きくなったとします。レーザーのパワーという変数\(x\)を変動させながら、穴直径という変数\(y\)を測定すると、両者にはある関係が見えてきます。この関係を数式(モデル)\(y=f(x)\)で表すことで、ある変数\(x\)(レーザーパワー)での穴直径\(y\)という加工結果を予測できます。

結果を説明する方の変数\(x\)を説明変数(独立変数、予測変数)、説明される方の変数\(y\)を被説明変数(従属変数、目的変数、応答変数)と呼ばれます。

モデル化には様々な種類や方法がありますが、ここでは最も簡単な1つの説明変数\(x\)による単回帰分析を行いたいと思います。

これがさらに進んでいくと、重回帰分析やAI(機械学習)につながっていくことになります。

2. モデル化と予測

2.1 データ

次のような仮想のデータを考えます。変数\(x\)に対して変数\(y\)の関係が次のように10点得られたとします。

X =  1  2  3  4  5  6  7  8  9 10
y = 6.8  6.8  9.7 11.3 11.4 16.6 16.0 17.2 20.3 24.8

これをプロットすると下図のようになります。

何となく1つの直線が描けそうです。この直線をどのように描くと最も良いでしょうか?考え方はいくつかあります。それを次から見ていきます。

2.2 単回帰分析(最小二乗法)

単回帰分析は、一つの説明変数\(x\)と一つの目的変数\(y\)の関係を1次式で表したものです。$$ y=a + bx $$というように、2つの変数の関係が直線で表されます。求める値は、\(a, b\)となります。

このモデルの最も代表的な求め方は最小二乗法で、次のように\(a, b\)を求めます。

観測値の実際の値\(y_i\)と回帰直線から得られる\( \hat{y_i} \)の差(残差\(e_i\))の平方和を考えます。残差平方和は、$$ \sum^{n}_{i=1} e_i = \sum^{n}_{i=1} (y_i – \hat{y_i})^2 = \sum^{n}_{i=1} \{ y_i – (\hat{a} + \hat{b} x_i) \}^2 $$で表されます。この残差平方和を最小にする\(a, b\)を求めることが目的です。

残差平方和を\( \hat{a}, \hat{b}\)の関数としてみたとき、2次式となりますから、最小となるのは、それぞれの変数で偏微分した値が0となるときです。このことを考慮しますと、次の連立1次方程式が得られます。
$$ n \hat{a} + \hat{b} \sum x_i = \sum y_i$$
$$ \hat{a} \sum x_i + \hat{b} \sum x^2_i = \sum x_i y_i $$

これを解くことで、
$$ \hat{b} = \frac{ \sum (y_i – \bar{y})(x_i – \bar{x_i})}{ \sum(x_i – \bar{x})^2 } $$
$$ \hat{a} = \bar{y} – \hat{b} \bar{x} $$
が求まります。

R言語を用いると下記のように簡単に計算できます。

x<-c(1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10)
y<-c(6.8, 6.8, 9.7, 11.3, 11.4, 16.6, 16.0, 17.2, 20.3, 24.8)
dat <- data.frame(x=x, y=y)
lm.model <- lm(y~x, dat)
summary(lm.model)
> summary(lm.model)

Call:
lm(formula = y ~ x, data = dat)

Residuals:
    Min      1Q  Median      3Q     Max 
-1.7406 -0.8647 -0.1888  1.0301  2.1654 

Coefficients:
            Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)    
(Intercept)   3.6467     0.9668   3.772  0.00545 ** 
x             1.8988     0.1558  12.186 1.91e-06 ***
---
Signif. codes:  0 ‘***’ 0.001 ‘**’ 0.01 ‘*’ 0.05 ‘.’ 0.1 ‘ ’ 1

Residual standard error: 1.415 on 8 degrees of freedom
Multiple R-squared:  0.9489,	Adjusted R-squared:  0.9425 
F-statistic: 148.5 on 1 and 8 DF,  p-value: 1.906e-06

結果で表示されるCoefficients : Estimate Stdが求める値です。
この場合、
$$ a=3.6467$$
$$ b= 1.8988 $$
ですので、
$$ y = 3.6467 + 1.8988 x $$が求めたモデルになります。プロットとモデルを表示すると下図の通りとなり、それらしい直線になっていることがわかります。

このように求めたモデルから加工結果の予測ができます。例えば、\(x=11\)の場合、穴直径は\(y=24.5335\)と予測されます。

2.3 回帰分析(ガウス過程回帰)

今度は、前節とは別の方法で回帰直線を求めてみます。この方法はガウスによって発明されました。実はこの方法も考え方は最小二乗法なのですが、行列式を使って解くところがポイントとなります。詳細は、省きますが、連立方程式を行列とベクトルを用いて$$ Y = XW $$と表されるとき、求めたいベクトルWは次の式で求められます。$$ W = (X^T X)^{-1} X^T Y $$ただし、\(X^T\)は転置行列、\(X^{-1}\)は逆行列です。

今回の例を用いて、もう少し具体的に記します。求めたいモデル$$ y = a + b x $$は次のようにベクトルで表すことができます。$$ y = \left( \begin{array}{rr} 1 & x \end{array} \right) \left( \begin{array}{c}a \\ b \end{array} \right) $$

ここで、$$ Y=y, X=\left( \begin{array}{rr} 1 & x \end{array} \right) , W = \left( \begin{array}{c} a \\ b \end{array} \right) $$とすることで、Wを求めることができます。

では、具体的にRを使って解いてみます。

x<-c(1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10)
y<-c(6.8, 6.8, 9.7, 11.3, 11.4, 16.6, 16.0, 17.2, 20.3, 24.8)

dat <- data.frame(c(rep(1, length(x))), x)
xx <- as.matrix(dat)

t_xx <- t(xx)
ans <- solve(t_xx %*% xx) %*% t_xx %*% y
ans %*% y
ans
> ans
                         [,1]
c.rep.1..length.x... 3.646667
x                    1.898788

前節と同じように、$$ a= 3.6467, b=1.8988 $$と求められました。この方法の素晴らしいところは、モデルが1次式でなくても解くことができる点です。

3. 終わりに

実験結果のモデル化のため、回帰分析を行ってみました。単回帰分析によりパラメータを変化させたときの加工結果を求められることを示しました。このようにモデル化することで、未知のパラメータについての加工結果の見通しが立つようになりますので、非常に有効な手段です。さらに進めると機械学習へ発展できます。

【応用】レーザーマーキング

レーザーによって、様々な材料へのマーキングが行われています。レーザーマーキングは非常に多く使われているレーザーの応用の一つです。このマーキングとは、材料に幾何学的な印をつけることのみを指すのではなく、文字や模様、意匠性の高い印も含まれます。

一般にマーキングは、レーザーマーカーと呼ばれる装置で加工がおこなわれますが、原理的には我々が使用している加工機と同じです。レーザーを集光させ、材料に変質・改質を与え、他の部分とは異なる状態とすることで、人の目などに印として認識されるわけです。

普及しているレーザーマーカーは、COレーザーやYAGレーザー、半導体レーザーが使われることが多いです。長年の技術の蓄積があり安定して動作することとメンテナンスや価格など経済的なメリットが大きいためです。

マーキングをするためには、レーザースポットを加工物に対して相対的に移動させる必要があります。この方法の一つとしては、レーザー光路の途中に2枚の鏡を置き、その鏡の角度を変更することでスポット位置を変える方法があります。この2枚の鏡とその制御機構を含めた部分をユニット化してガルバノスキャナーとして実用化されています。
また、集光レンズを加工物に対して2次元的に移動させる、いわば、プロッターのような方法もあります。構造が簡易であり、走査範囲も比較的広くとることができますので、安価なレーザーマーカーが多く採用しているようです。

レーザーマーカーへ、どのようなマーキングをするのかデータを入力する必要があります。データの形式は、各レーザーマーカーの仕様によりますが、テキストデータや、ラスターデータ、ベクトルデータなど描画データ、もしくは独自のデータ形式があります。レーザーマーカーには、各データを編集できるソフトウエアが付属している場合が多いです。

加工対象物も多岐にわたります。基本的にレーザーで変色・変質できる物質には広く応用できます。木材へのマーキングや、飲料ボトルパッケージへのバーコード印刷、金属への製造番号マーキング、玩具やお菓子までマーキングしています。

多くのマーキングは材料表面へのマーキングですが、レーザー波長に対して透明な材料へは材料内部へ直接マーキングすることも可能です。例えば、ガラス内部を変質させることで光の透過性を変更させることも可能です。これにより、透明なガラスの内部に文字や絵が浮かんで見えます。このような内部マーキングはゴミ等を嫌う工業用途でも積極的に利用されています。

レーザーでは、微細に正確に高速にマーキングできますから、今後も利用範囲は広まっていくものと思われます。

【基本】装置の性能維持

1. 装置の性能維持のために

長期にわたり安定した加工を行うためには、装置の性能維持が不可欠です。性能を確認する方法や基準は様々あると思います。弊社が得意としているのは、レーザー微細加工ですので、加工結果を評価して装置が正常に稼働しているか評価することは理にかなっていると思います。

加工結果から装置の性能維持を確認する方法としては、例えば、ある時期に加工した結果を記録しておき、その後、修理やメンテナンス後に同じ条件で加工して同じ結果が得られるかを確認する方法があります。

では、得られたデータから装置の性能が維持されているかどうかをどのように評価すれば良いでしょうか?

一つの方法は、統計的に評価する方法です。検定することにより確認する方法を以下に記します。統計的な計算にはR言語を使用します。

2. 評価

2.1 データ

ある時点で、ステンレス板へ直径φ100μmの貫通穴を40穴加工したとします。その加工穴の直径を全て測定すると、以下のdat0というデータが得られたとします。

> dat0
 [1]  99.29  94.97 100.78 101.17 101.78  91.89 101.10 101.55  92.89 104.78 103.92 111.50 100.78 100.23 100.48 100.35
[17]  90.76  91.64  99.61  97.09 100.27  89.44  92.51  94.49 104.93  94.51  96.00 100.40  98.39 100.73 111.53  94.38
[33]  98.47  97.42 107.56  96.15  99.59 103.94  94.71 108.28

その後、装置をメンテンナンスしました。従来と全く同じ条件で同じようにステンレス板へ直径Φ100μmの穴加工を40回行いました。その測定結果が、dat1として得られました。

> dat1
 [1] 107.55  97.05 106.23 102.22 105.38 102.96 109.92  95.39 100.36 102.00  97.53  97.26 103.39 102.71  88.20 109.74
[17] 105.00 118.00 107.61 100.82 120.28 120.49  96.19 106.31 102.23 104.62 104.87  95.93 105.21 114.00 102.52 102.52
[33] 111.89 108.89  93.61 104.87 113.42 111.99 106.02 107.83

結果をヒストグラムで確認してみます。

library(tidyverse)
library(ggplot2)
library(reshape2)
dat <- data.frame(dat0, dat1)
dat %>% melt() %>% 
  ggplot() + 
  geom_histogram(aes(x=value, fill=variable))  

性能が維持できているかどうかは、加工穴の平均直径が2回の加工結果でほぼ同じであると言えればよさそうです。ヒストグラムから、何となく2つの結果が似ているように見えます。性能は維持できていそうです。

より正確に評価するために、この2つのデータdat0, dat1から、メンテナンス後の装置が従来と同じ性能を維持しているか見てみます。

2.2 正規性の確認

検定を行うためには、データが正規分布しているかどうかが重要です。これにより検定方法が変わってきます。正規性の確認は、シャピロ・ウィルク検定で行います。

> shapiro.test(dat0)

	Shapiro-Wilk normality test

data:  dat0
W = 0.9765, p-value = 0.5618

> shapiro.test(dat1)

	Shapiro-Wilk normality test

data:  dat1
W = 0.97739, p-value = 0.5935

p値(p-value)を見ますと、0.05以上ですので、帰無仮説(H0:正規分布している)が棄却されなかったことになります。つまり、dat0, dat1とも正規分布しているとしてよさそうです。

2.3 等分散の確認

2つのデータは同じ分散であるか調べます。等分散の検定はF検定です。

> var.test(dat0, dat1)

	F test to compare two variances

data:  dat0 and dat1
F = 0.57319, num df = 39, denom df = 39, p-value = 0.0862
alternative hypothesis: true ratio of variances is not equal to 1
95 percent confidence interval:
 0.3031598 1.0837410
sample estimates:
ratio of variances 
         0.5731899 

p値が0.05以上ですので、帰無仮説(H0:等分散である)は棄却されませんので、2つのデータは同じ分散であると言えます。

2.4 t検定

前節で等分散であることが分かりましたので、t検定(スチューデントのt検定)を行います。等分散でない場合にはWelchの検定を行うことになります。

> t.test(dat0, dat1, var.equal = TRUE)

	Two Sample t-test

data:  dat0 and dat1
t = -4.0146, df = 78, p-value = 0.0001359
alternative hypothesis: true difference in means is not equal to 0
95 percent confidence interval:
 -8.330322 -2.807178
sample estimates:
mean of x mean of y 
  99.2565  104.8252 

p値が0.05以下ですので、この結果、帰無仮説(H0:2つの平均値データに差がある)が棄却され2つのデータに差がない、つまり同じ加工条件で加工した場合、装置は同じ加工結果を得られたことになります。よって、装置の性能は維持できていると言えそうです。

3. まとめ

検定という統計手法を用いることで、装置の性能維持ができていることを確かめる方法を見てきました。評価方法は様々ありますが、加工機ですから加工結果で性能を評価することが最も重要ではないでしょうか。

熱影響が少ない加工ができる理由 ~非熱加工についてざっくり言うと~

弊社ホームページに“非熱加工”という言葉がありますが、その点についてざっくりと御説明します。

結論から言うと、

【レーザーで加工した場所(レーザービームスポット径+α)から、加工したくない場所に熱影響が伝わるよりも前に、加工が終わるから。】

です。以下で、その理由について、日常的な例を交えて、御説明します。

日常生活の中には、非熱加工が起きる場面は、まず無いと思いますので、分かりにくいかもしれません。ただ、強いて例えるならば、次のような例で例えることができます。

キッチンで、熱湯の入っている鍋ややかんに、ほんの一瞬、指を触れたときは、「熱さ」はほとんど感じないと思います。しかし、1~2秒程度、指で触れ続けたら「アツッ!!」となって、慌てて指を離すと思います。下手をすると、火傷してしまいますね。

この関係は、鍋ややかんの【熱】と自分の【指】と、それらが触れ合ってる【時間】の長さの関係性で説明できます。つまり、【指】が【熱(源)】に触れている【時間】の長短で、熱さを感じたり、ほとんど感じなかったりするわけです。

レーザー加工で非熱加工というのは、レーザー【光】と材料【物質】と、その両者が影響しあっている【時間】の長さと大きな関係があります。

つまり、一瞬だけ熱い鍋に触れても、ほとんど熱さを感じないように、物質も“一瞬”だけレーザー光に照射されただけだと、レーザー光に影響される部分(≒加工される部分)は、極限られれた領域(レーザービームスポット径+α)になるのです。

そして、そのような、熱の影響が周囲に伝わらない程度の時間というのが、大体ピコ秒(10のマイナス12乗 秒)程度なのです。ただし、金属や、樹脂、ガラスなど材料によってその影響は異なってきます。

私たちがレーザー加工に使用しているレーザーは、1パルスの時間が、およそピコ秒程度なので、加工材料にほとんど熱影響を与えるほどの時間が経過する前に加工が終わってしまうので、所謂【非熱加工】ができるのです。

ここで、ちょっと“パルス”という言葉が出てきましたが、そのことについてはまた別の機会に。

【基本】光学ガラス

レーザーなど光学機器に使用するレンズは、様々な特徴がある特殊なガラスで作られており、光学ガラスと呼ばれています。その性質を順に見ていきます。

1.均質性

ガラスで良く見られるのは、窓ガラスや食器類ですが、この材料で光学機器を作ってもうまくいきません。それは、このガラスが均質にできておらず光が真っすぐに進まないためです。ガラス内部に屈折率が異なる部分があると、光は屈折率の高い方に曲げられてしまいます。実用上は、使用する光の波長の1/4以下であれば均質とみなすようです。このような屈折率のムラは脈理(みゃくり)と呼ばれています。また、粒状のムラだったり、周期的なムラの場合もあります。このようは不具合は、干渉計等によって検査されます。例えば、BK7という広く使用されている光学ガラスは、屈折率1.5168に対し、±0.000005というわずかなばらつきに抑えられています。

2.透明性

透明性は透過率で評価されます。これは、光が媒体を透過する際に吸収される量と吸収されずに透過する量の比で表されます。透過率Dは、測定される光透過率で、媒体外表面での反射損失を含んでいます。垂直入射光線の一表面における反射損失をR,吸収係数をk,媒質厚さをdとすると、透過率Dは以下のように表されます。

$$ D = \frac{1-R}{1+R} 10^{-kd} $$

ここで、$$ T = 10^{-kd} $$は内部透過率と言われ、反射損失を除いた透過率です。このように反射損失がありますので、透過率Dは100%にはなりません。

複数のレンズを組み合わせて使う光学系では、レンズ全体で光学ガラス部が厚くなる場合もあります。ですから、レンズによる光の吸収により像が暗くならないように透明性が求められます。例えば、BK7の場合、100mmの厚さでも光の吸収は1.6%程度しかありません。一般に、クラウンガラスはフリントガラスより透過率が優れているようです。またフリントガラスは高い反射損失がある場合がありますので、反射防止コーティングを用いる必要もあります。

また、波長によっても吸収率は異なりますので、媒質を透過すると、色が変わる場合があります。光学機器の設計には、この点を注意する必要もあります。

3.分散

分散は波長の屈折率変化のことで、色収差の原因となり画像の劣化に影響を与えます。色による屈折率の違いが大きい材料は「分散が大きい」といい、逆に小さい材料が「分散が小さい」といいます。プリズム光が分光されるのは分散があるためで、分散の大きい材料のプリズムは光が広がる範囲が大きくなり、分散の小さい材料では光の広がりが小さくなります。

通常、材料の分散は3つの光で測定されます。486.1nm(nF:ハイドロゲンFライン)、589.3nm(nD:黄色ナトリウムDライン)、656.3nm(nC:ハイドロゲンCライン)の3つの波長です。分散は、アッベ数(\(\nu\))で次のように表されます。$$ \nu = \frac{n_D – 1}{n_F – n_C} $$

ぞの材料でレンズを作った場合の赤と青の光の焦点位置の差(軸上色収差)を表しています。つまり、アッベ数\( \nu \)の材料でレンズを作ると、レンズの焦点距離の\( 1 / \nu \)だけ赤色と青色の光の焦点位置がずれることになります。

また、$$ n_D – 1 $$, $$ n_F – n_C $$ をそれぞれ屈折度、主分散と呼びます。

【基本】高調波化

レーザーは、その基本波をそのまま加工に用いることもありますが、集光性や材料吸収性の観点から、波長変換をして高調波を用いることもあります。例えば、Nd:YAG, Nd3+:YVO4のからの基本波1064nmを変換素子を用いて波長変換し、2倍、3倍の振動数のレーザー光を作り出すことができます。周波数\(\omega(= 1 / \lambda)\)を2倍にした第2高調波(SHG:Second Harmonic Generation, 532nm)や3倍にした第3高調波(THG:Third Harmonic Generation, 355nm)が実際に加工では用いられています。さらに、あまり見かけませんが、第4高調波(FHG, 266nm)もあるようです。

この高調波を生み出す原理は、非線形結晶を透過させることで実現しています。

SHGの場合、\(\omega_2 = \omega_1 + \omega_1\)ですから、$$ 9398cm^{-1} + 9398 cm^{-1} = 18796 cm^{-1} \simeq 532 nm $$

THGの場合、\(\omega_3 = \omega_1 + \omega_2\)ですから、$$ 9398cm^{-1} + 18796 cm^{-1} = 28194 cm^{-1} \simeq 355 nm $$

FHGの場合、\(\omega_4 = \omega_2 + \omega_2\)ですから、$$ 18796cm^{-1} + 18796 cm^{-1} = 37592 cm^{-1} \simeq 266 nm $$

となります。しかし、変換効率は100%ではありませんので、変換するごとに出力は低下します。この変換効率の向上と高出力化が課題となっています。しかしながら、特に微細加工においては、紫外領域のレーザーが有利である場合が多いため非常に注目されています。

SHG, THGを発生させる光学素子としては、LBO結晶があります。また、FHGを発生させるには、KTP結晶とCLBO結晶が使われます。

多くのレーザーメーカーから高調波を発生させるレーザー光源が販売されています。波長変換部をモジュール化して光源と一体化したレーザーが多く見られます。