【基本】フォトリフラクティブ効果

光強度の空間分布があると、ポッケルス効果(1次の電気光学効果)によって、局所的な媒質の屈折率が変化する現象のことです。これは、光強度の勾配の大きさによって発生する光学特性で、光カー効果(2次の電気光学効果)の高強度の光によって発生する非線形光学特性ではなく、非常に小さな光強度(~mW/cm2)でも発生します。

この効果を発生させる材料としては、半導体のCdTe, GaAs, InP, 強誘電体のLiNbO3, LiTaO3, BaTiO3などがあります。電気光学系数は、BaTiO3が大きく1.64×10-9m/Vあります。材料により電気光学系数が大きくなる波長が異なり、半導体では1µm近傍、強誘電体では633nm近傍となります。

この効果は、媒質中の不純物が重要な役割を果たしています。積極的なドーピングをしなくても、製造工程で、例えば炉から溶出した金属のように、故意ではない不純物も影響を与えます。添加不純物としては、Fe, Co, Rhなどがあり、それぞれのエネルギー順位に依存して応答する波長が異なります。また、ドープ量によっても、その性質はことなります。

例えば、不純物のないBaTiO3結晶では、紫外領域に大きな光の吸収が見られますが、Coをドープすると可視光領域での吸収が大きくなります。まだ、ドープ量を増やすことでより吸収率が高くなることが実験により確かめられています。Coがドープされていない結晶での実験を行う際には波長488nmや514.5nmのArレーザーが使われるそうです。一方で、よりHe-Neレーザー(632.8nm)など長波長のレーザーで実験を行うときには、Coをドープした結晶を用いるそうです。

この現象を応用して、二波を混合して光の増幅が行われます。また、光の伝搬により屈折率が変化するために凸レンズ効果が起き、レーザー光の回折による広がりを打ち消し、一定のビーム径で伝搬する空間ソリトンという現象もみられます。

この効果は、1966年にアシュキンによて、LiNbO3, LiTaO3結晶中で発見されました。

【基本】マイクロチップレーザー

従来の発振器とレーザー媒質を一体化し、小型化・低コスト化・高安定化を図ったモノリシックレーザーはマイクロチップレーザーと呼ばれます。

1990年ごろにコンセプトが提唱され、政府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)にも採択され技術開発が進み、現在では製品化もされています。

構成は、励起光を発するLDに、レーザー媒質を直接取り付けたような構成となっています。結晶としては、Nd:YAG、Nd:YVO4結晶などが用いられ端面は高い平坦性を有し、一方の面に高反射誘電体多層膜を、その反対に部分反射ミラーを構成します。レーザー媒質を積極的に温度制御することで、発振波長を可変にできるレーザーもあります。

媒質にCr:YAG等の過飽和吸収材料を挿入しておくと、過飽和吸収の原理により受動Qスイッチとして動作して、パルス発振が行われます。波長1064nm、サブナノ秒のパルスをミリジュールレベルで発振できるレーザーも製品化されているようです。

マイクロチップレーザーは、ヘッド自体が小型であるため、ロボットハンドに搭載しての作業も容易になると期待されます。

用途としては、材料加工、ホログラム、バイオ・メディカル観察・測定用光源があげられます。

【応用】Deep UV レーザー

レーザー微細加工を行う点から、レーザーの仕様を見たときに、重要な仕様の一つに平均出力があります。これは、加工の効率に直接影響を与えると考えられるためです。加工において、その効率というのはコストに直接反映されるため非常に重要な値です。

また、レーザーの場合の加工性は、波長にも依存します。なぜなら、波長によって材料へのエネルギー吸収性が異なり、それが直接加工効率に影響を与えるためです。

レーザーの波長は、基本波(近赤外)から2倍波(可視)、3倍波(紫外)というように短波長化が進んできました。近年では、さらに進み、4倍波(Deep UV)の産業応用も視野に入ってきています。あるレーザーメーカーは、平均出力60W@515nmのレーザーを元に平均出力20W@257.5nmのピコ秒レーザー(パルス幅1.5ps)を実現したとの報告があります。

このように、短波長化へ進むモチベーションの一つが、樹脂の微細加工です。樹脂は化学的な反応も寄与し、とくにUV領域の波長が多用されます。

近年、ホットな話題の5G通信用の基板にはポリイミドではなく、より誘電損失の少ない樹脂が使用されるようです。この樹脂は、3倍波のレーザーでも熱影響が大きく良好な切断が得られないらしいです。そのため、より吸収性の良い短波長の4倍波のレーザーを利用することを検討しているようです。

実際、この4倍波のDeep UVレーザーを用いた切断実験では、厚さ200µmという、微細加工にしては厚めのフィルムに対しても良好な切断ができたとの報告があります。

さらに、別の応用としてシリコン基板への表面処理なども検討されているようです。

このように、将来性が期待されるDeep UVですが、その特性のため、特殊は光学系が必要となったり、光学部品の寿命等の課題も浮き彫りになってきています。

このように、新しいニーズによって、それを実現する基盤技術もどんどん進化していきます。

【基本】光アイソレータ

光アイソレータは、一方向の光のみを伝える光学部品です。順方向の光のみを伝送し、逆方向の光を遮断しますので、電子部品のダイオードのような働きをします。

一般に光の発信源に光が入ると動作が不安定になったり、ひどい場合には損傷したりします。この部品により、戻り光によるレーザーの損傷や不安定化、情報通信のノイズ低減等が実現されます。情報通信ですと、LD、ファイバ、PDが基本部品ですが、最近では、この他に光増幅器、光カップラ、光減衰器、分波器、スイッチなど多彩になってきています。そして、この光アイソレータも重要な役割を果たしています。光アイソレータは、LDとファイバの間に設置されます。

原理的には、磁性体ファラデー素子で光の進行方向により偏光方向が変化する現象を利用しています。一般的に、ファラデー回転子を偏光方向の異なる偏光子で挟んだ構造となっています。ファラデー回転子の周りには円筒形の磁石があり、光の進行方向に磁場をかけています。この光アイソレータには、透過する光が直線偏光の場合に利用できる偏光依存型と、偏光によらずアイソレーションできる偏光無依存型があります。

偏光依存型素子の場合、順方向に進む直線偏光の光が偏光子を通り、磁界の加わったファラデー素子で偏光方向が変化されます。その偏光方向の光が透過する方向(45度)に置かれた偏光子によって光は透過します。逆に、逆方向の光は偏光子を透過後にファラデー素子により順方向と反対方向へ偏光が回転させられ90度の角度となり、次の偏光子を通過できません。この原理により、逆方向の光の遮断が行われるわけです。

偏光無依存型素子の場合、複屈折の原理を用いて逆方向の光を遮断します。

光アイソレータで必要な特性としては、逆方向の光に対して損失が大きいこと、反対に順方向の光に対して損失はなるべく小さい必要があります。また、実用上は、小型・低コストが望まれ、温度係数が小さいこと、飽和磁界が少なくて済むことなど、様々な要求があり、その材料の選択も重要な要素です。

ファラデー素子として用いられるのは、YIG(イットリウム鉄ガーネット)や希土類磁性ガーネットR3Fe5O12などの磁性薄膜です(Rは希土類)。Rを磁気光学材料Biに置き換えたタイプもあります。長波長の光に対しては、これらの素子が有効ですが、短波長では吸収が大きいという欠点があります。この欠点を補うために、最近では希薄磁性半導体を材料として用いる場合もあります。

デバイス形状としては、表面実装で基板に固定できるタイプや、同軸状の筒で固定するタイプなど、用途に応じた形状として提供されているようです。

これからの情報通信社会において、より高速、高安定な通信に必要不可欠な光学部品です。

【基本】フラッシュランプ励起レーザー

今では、あまり使われなくなったかもしれませんが、従来からフラッシュランプによってレーザー媒質を励起し、発振させるレーザーが多用されていました。繰り返し周波数は低いものの、ナノ秒程度の短パルスレーザーを構築でき、高いパルスエネルギーを扱ることから、特に加工の点で有利で、工業的にも多くの分野で使われており成功したレーザーの一つではないでしょうか。

レーザー媒質としては、Nd:YAGやNd:YVO4といったネオジウムドープの結晶です。この結晶の吸収スペクトルは、急峻なバンドとラインからなっています。それに対して、幅広い連続波長(160~1000nm)をもつフラッシュランプで励起するわけですから、非常に効率は低いです。

そのため、大部分が熱となり放出されます。この熱により、熱レンズ効果でビーム品質の低下等が問題となります。加工応用の場合、このビーム品質低下が波長変換の効率低下や加工品質の低下に直結するという問題もあります。そこで、冷却が必要となります。電力の消費と水冷の手間というデメリットが生じていたわけです。

近年は、この励起光をLDに置き換えたDPSS(Diode Pumped Solid State)レーザーが主流となっています。LD波長もある程度は調整できるため、より効率の良いレーザー発振ができるようになっています。

【応用】レーザー曲げ加工

レーザーは物体に称されると熱源として働くことができます。一般に物体が加熱されると、熱による応力が発生してひずみます。この現象をうまく利用すると曲げ加工を実施することができます。このような加工方法はレーザーを応用した塑性加工の一種で、レーザー曲げ加工(レーザーフォーミング)と呼ばれます。

この技術は特に金属材料へ適用されます。金属へ溶融が起きない程度の温度となるようにレーザーを照射します。この時、レーザー照射位置は高温となるため、金属材料が膨張します。照射をやめると冷却され、反対に収縮します。

この原理を上手く応用すると、ひずみの応力で材料を曲げることができます。実際には、材料に対してレーザー照射位置を走査することで、直線状の応力ひずみが発生し材料が直線で曲げられます。レーザーを照射する直線を平行に少しずつずらすことで材料をカールさせることもできます。さらに、円状にレーザーを走査することで円錐形状を実現したり、自由曲線による局面形状にもできます。

レーザーフォーミングは、金型が不要な加工方法であるため、多品種少量生産にも適しています。また、過度な応力を加えないため、材料を破損させることもないようです。

使用されるレーザーは、CO2レーザーやファイバーレーザーです。平均出力が数十W程度のレーザーが用いられます。材料やレーザーの条件によりますが、加熱部は数百度(<千度)となります。熱によるひずみを利用した加工のため、レーザーを照射する材料表面と裏面で温度差をつけるような加工条件に設定する必要があります。加工条件んを最適化することで、折り曲げ角度の制御ができます。

【基本】ポッケルスセル

ポッケルスセルは、光の偏光方向を電気的に変更できるEO(Electro-optic)デバイスです。電圧で制御する波長版とも言えます。また、印加する電圧を変化させると、位相遅れを発せさせることができます。

このデバイスはポッケルス効果と呼ばれる現象を利用しています。物質に電圧が加わったときに物質内部の分極率が変化し、屈折率が変わります。屈折率は電圧に比例します。似たような現象にカー効果がありますが、こちらは電解の2乗に比例して屈折率が変わる現象です。また、ポッケルス効果は、圧電性のある物質にしか作用しません。このポッケルス効果とは、ドイツの物理学者であるフリードリッヒ・ポッケルスに由来します。

物質の素材は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)やリン酸二重水素化カリウム(KD*P)、BBO 、CdTe などがあります。

使用できる波長も紫外から遠赤外まで幅広く、各波長で適切なARコートがされているものもあります。

駆動電圧は、数kV以下程度が多く、MHzレベルの高周波で駆動できるデバイスもあります。立ち上がり時間もns以下と短く、高速な動作が要求される応用にも利用可能です。

光を入れる口径もφ数mm程度のデバイスが多く、扱いやすくなっています。

応用例としては、DPSSレーザー用Qスイッチ、レーザーの再生増幅制御、ビームチョッパー(アイソレーター)などがあげられます。

“小さな”フレキシブルディスプレイや、ウェアラブルデバイスに応用できるかな? ~ポリイミドフィルムの微細加工~

 ポリイミド製のフィルムはフレキシブルデバイスや、ウェアラブルデバイスの基板として利用されることもあるようです。
 見た目は、大抵、薄茶色~茶色です。最近では、透明タイプも開発されているようです。
 フィルムの厚さは、数十μm~百数十μm程度のものが多いです。

 レーザー加工では、そのような材料の加工も得意(!?)です。
 つまり、数十μm程度の薄めの素材で、やわらかく、熱変性しやすい材料などの加工です。
 例えば、下の写真(画像1)のような加工もできます。
 画像右下の目盛り(50μm)を見てもらえれば分かるように、とても小さいです。

 画像1は、厚さ0.05mmのポリイミドフィルムに、試し加工したものです。
 これは洗浄していませんが、もし洗浄できれば、もっと見た目が美しくなったかも?
 逆に言えば、加工による焦げ等は、ほとんど無いとも言えるかもしれません。
 大きさは、楕円の長軸(楕円形の横方向の長さ)が約0.6mmです。
 中央の円形は直径0.16mm程度です。
 両側の2つの円形は直径0.07mm程度です。
 
 ちなみに、画像1の形状は、もっと大きな面積のフィルムから切り出したものです。
 画像2は、切り出された側、所謂「抜け殻」フィルムを撮影しやすいように、適当に切り出したものです。
 画像1は、楕円形1個ですが、実際には、90個加工したうちの1個だったということです。

ついでに、違う形状も、加工してみました(画像3)。

 音叉形? 馬蹄形?
 カーブしているところは半径0.05mm程度、線幅は0.04mm程度です。
 この大きさになると、指でも、ピンセットでも持てません。
 取り扱い注意です。乱暴に扱うと折れてしまうので。
 このポリイミドフィルムは試し加工として使用した材料なので、汚れが目立ちますね…。 
 ちなみに、この形(画像3)を切り取られた側のフィルムは画像4のような状態です。

【基本】偏光ビームスプリッター

一つの光線を二つに分岐させる光学素子にビームスプリッター(Beamsplitter : BS)があります。ビームスプリッターひとつをとっても、その仕様によりいくつかの種類に分けられます。

光線の偏光方向によって、分岐の方向(透過・反射)が変わるビームスプリッターを偏光ビームスプリッター(Polarizing Beamsplitters : PBS)といいます。

偏光ビームスプリッターは、光線にP偏光とS偏光が含まれていた場合、P偏光を透過、S偏光を反射させます。このように、偏光状態により光線を垂直に2つの光線に分岐させます。

コーティングとして誘電体多層膜が使われることが多く、光のロスが少なく効率よく光線を分岐させることができます。

このような特性がありますので、使用に際し、最適な波長は決まっており、通常は光を入射させる方向も決まっています。

偏光ビームスプリッターには、他のビームスプリッターと同じように、キューブ型とプレート型があり、それぞれ長所・短所があります。

キューブ型ビームスプリッターは、斜面に光学薄膜とつけた2つの直角プリズムの斜面同士を張り合わせてキューブ上にしたビームスプリッターです。このキューブ型ビームスプリッターは、光線が0°で入射しますので、光線のアライメントが容易で、透過光と反射光の光路差がないという特徴があります。また、透過光のビームシフトがなく、光学薄膜が空気に触れないため経年劣化が少ないという利点もあります。しかし、重量が大きく、大きなサイズを作成しにくく、一般的に価格が高いです。また、透過光の消光比と反射光の消光比が異なることが多いです。さらに、プリズムを構成するガラスの厚みがありますので、光線に波長分散が生じます。

プレート型ビームスプリッターは、プレート表面に誘電体多層膜などの光学薄膜を構成し、1枚で偏光ビームを分岐させることができる偏光ビームスプリッターです。基板1枚の構成のため、キューブ型と比べて軽量で比較的大きなサイズも製造でき、安価です。また、一般的に、より高い消光比や透過率、損傷閾値を要求される場合にこちらのプレート型が用いられます。しかし、透過光のビームシフトがあり、45°の角度で光線を入射される必要があるのでアライメントが多少面倒です。

このように、それぞれの型の特性をよく理解して、用途や目的に合わせて選択する必要があります。

偏光ビームスプリッターの用途としては、ランダム偏光のレーザー光線を1:1に分割したり、1つの偏光方向の光を取り出すフィルタリング用途に用いられます。

【応用】レーザー切断加工

最も広く普及しているレーザー切断加工の応用は、板金(シートメタル)加工だと思われます。これは、板状の金属を所定の形状にレーザーで切断加工する応用です。切断は、外形切断だけではなく、穴あけやスリット加工も含みます。

板金の加工は、切削などの機械加工やエッチングなどの化学加工、放電加工も候補となりますが、加工経路(パス)の自由度やコスト、加工速度、さらに加工品質を考慮して、レーザーが選択される場合があります。

需要としては鉄、ステンレス、アルミなどの金属の加工が多いようですが、セラミックス、木材、ゴム等の非金属も加工も行われます。

使用されるレーザーは、CO2レーザーが主流でしたが、YAGレーザーやファイバーレーザーの割合が多くなってきています。連続発振するCWレーザーが多いですが、まれにパルスレーザーが用いられます。加工条件の違いにも依存するようですが、パルスレーザーの方が高品質な加工ができるようです。

レーザーを被加工部表面に集光させ高いエネルギーを与えることで切断加工を実施します。被加工物に対するレーザー集光点を相対的に移動させることで、穴あけや切断などを実施します。レーザー移動機構の進歩や、CAD/CAMの発展により、より柔軟な形状をより高精度に高速に加工できるようになってきました。

この応用の当初のレーザー出力は、1kW程度でしたが、時代とともに大出力化に進み、現在では10kW以上のレーザーもあります。

また、加工中はアシストガスを有効に活用することで、加工の促進を図ったり、高品質化を目指したりします。

これらの技術進歩により、初期の頃は、切断できる材料の厚さはSPCCで数mm厚だったものが、現在では、20mmを超える厚手の材料まで切断できるようになりました。