【基本】銅蒸気レーザー

銅(Cu)蒸気レーザー(Metal-vapor laser)は、発振効率が数%と高く、平均出力が200W程度と高出力な特長があります。しかし、金属を蒸気にしてレーザーを発振させるため放電開始からレーザー発振まで1時間程度の長い時間がかかります。このデメリットのせいからか、最近は固体レーザーや半導体レーザーにその役割が置き換わりつつあります。用途は限られてきており、ウラン同位体分離用の色素レーザーのポンピング光源として、その他、金属・セラミックスの微細穴加工用途、ライトショー、高速写真の光源などに利用されています。

このレーザーは、510.6nm(緑色)と578.2nm(黄色)で発振するパルスレーザーです。このレーザーのレーザー管は高温になるため、通常は、セラミックス製の放電路が用いられます。放電により1500℃以上に加熱され銅ペレットを蒸気化します。セラミック管は、モリブデンの多層反射と保温材で覆われ安定した蒸気化を実現しています。断熱として、真空断熱や熱シールドなどが用いられています。

レーザー管の大口径化、管長の増大により高出力化を図ります。口径80mm、長さ3mの巨大なレーザー管で、平均出力500W,2000時間の連続動作をしたという報告もあります。

気体レーザーの上準位が非常に高いため、励起エネルギーの一部しかレーザー遷移にならず効率が悪いのですが、銅蒸気レーザーのようなアルカリ金属が媒体のレーザーの場合、低い準位のため、少ないエネルギーでレーザー発振します。

パルス発振のための放電には鋭い立ち上がりが必要なためサイリスタなどが用いられます。これにより、高繰り返しのパルス発振ができます。また、利得が大きく、低反射率のミラーでも発振します。

銅の代わりに金を用いると312.2nm(紫外線)と627.8nm(赤色)でレーザー発振します。鉛蒸気レーザーは、732nmで発振します。また、ルビジウムの蒸気を半導体レーザーで励起、発振する例もあります。

【基本】He-Cdレーザー

He-Cdレーザーは、CWの気体レーザーの一種で、使用する放電方法によって発振波長が異なります。グロー放電を用いるものとホロー陰極放電を用いるものがあります。出力は、数十~数百mW程度です。実用化されてから数十年の実績があります。

グロー放電の場合、発振波長は441.6nmと325nmです。レーザープリンターの光源、生物顕微鏡の光源、ラマン測定などに利用されます。一方の、ホロー陰極放電の場合、635.5nm, 636.0nm, 533.7nm, 537.8nm, 441.6nmであり、白色光が得られるため白色レーザーと呼ばれることもあります。カラープリンタ、ホログラフィーの記録などへの利用の期待があります。ノーベル賞を受賞した青色発光ダイオードの研究開発でも使われました。

He-Cdレーザーの構造は、He-Neレーザーとほぼ同じですが、レーザー管の構造が異なります。内径1~2mmの放電管中に、数TorrのHeガスに対して約1%のCdが封入されています。Heは、Cdによる吸着や漏れにより徐々に減少するため、Heの自動補給装置がついています。レーザー管の中には、Cd蒸気を送り込むためのCd金属溜を陰極付近に設けます。これを270~280℃で加熱して蒸気化され、He放電中にイオン化されレーザーが発振します。これらの工夫により、出力~200mWで~5000時間程度の寿命があります。

紫外域のアルゴンイオンレーザーに比べ、高効率で寿命が長いのでCW紫外レーザーとして重宝されましたが、最近は波長変換の技術も進み、固体レーザーが多用されるようになってきています。

【基本】エキシマレーザー

希ガス原子とハロゲンガス原子の混合ガスを媒質とするレーザーをエキシマ(エキサイマー)レーザーと言います。通常、希ガス原子(He, Ne, Ar, Kr, Xe)は安定ですが、励起状態となると他の原子(Br, F, Cl)と結合して分子を構成します。このように励起状態でのみ安定に存在する2原子分子を意味するexcited dimerに由来する言葉でexcimer(エキシマ、エクサイマ)と呼ばれます。エキシマは励起状態では安定ですが、基底状態に戻るとバラバラになり原子の状態に戻ります。下位準位がなく、すぐに基底状態となるため理想的な反転分布を得ることができます。エキシマレーザーはこの現象を利用しています。

多くは、放電励起方式で発振され、1~4気圧程度の高い圧力の気体に一様な放電をさせます。この放電には高い技術力が要求されるものの、紫外線領域の高いフォトンエネルギーと高いピークパワーを高効率で得ることができ、装置を小型化できることは魅力的で、広く普及しました。

市販のものでは、出力エネルギー~1J程度、パルス幅10~30ns、繰り返し周波数~1000Hz程度のレーザーが多いようです。

最初に実現されたのはXe2レーザーと言われています。液体希ガス中に電子ビームを照射させてレーザー発振が得られました。その後、希ガスとハロゲン原子が結合した希ガスハライドが出現し高出力・高効率の紫外レーザーとしてポピュラーとなりました。

希ガスーハロゲンと発振波長を次に示します。

ArCl —- 175nm
ArF —- 193nm
KrCl —- 222nm
KrF —- 249nm
XeBr —- 282nm
XeCl —- 308nm
XeF —- 351nm

ガスや要素部品の寿命が短いという欠点がありましたが、最近ではガスの高純度化や部品の改善により、109ショット以上の長寿命化が進んでいます。

用途としては、紫外線分光の光源、光化学、レーザー微細加工、レーザーリソグラフィー、レーザーアニールに用いられています。また、レーシックなど視力矯正治療にも用いられています。

【基本】X線レーザー

X線レーザーは、原子の内殻電子の遷移を利用してX線領域の電磁波を出すレーザーです。

代表的な反転分布発生機構として、レーザー照射時の加熱相で反転分布の生じる電子衝突励起があります。強力な短パルス光で高エネルギーを原子に与え原子の束縛電子を強電離イオン状態を作ります。例えば、強力な電離によりC5+のように束縛電子が1個だけ残ったイオンを水素(H)様イオン、電子が2個残ったイオンをヘリウム(He)様イオンなどと呼びます。このような束縛電子が励起電離状態遷移によってレーザーを発振します。

最初にレーザー利得が報告されたのは波長20.6nmのネオン様セレンレーザーです。原子番号34のSe原子から24個の電子をとったSe24+のイオンが用いられました。

X線レーザーの発振に必要な励起強度は、レーザー波長の4乗に逆比例するため、短波長では特に高いエネルギーが必要となります。また、レーザー上準位の寿命は波長の3乗に比例して短くなるので、ファムと秒程度の短パルス励起が必要です。このように、X線レーザーは、発振条件がかなり厳しいです。

発振が確認されたX線レーザーは、25イオン種(波長3.6~28.6nm)で50以上あるようです。これまでの最短波長は、3nmです。X線レーザーの輝度は1026にもなり、超大型シンクロトロン放射光装置のアンジュレーターラインで放射されるX線の輝度に比べ6〜7桁も高くなっているようです。

報告されている最大レーザーエネルギーは、波長15.5nmのネオン様イットリウムレーザーで、7mJのようです。この時のパワーは、10MWに達したとされています。

X線レーザーは、水による吸収の少ない波長領域の光を扱えるため、生きたままの生物の観察や、生体高分子の解析など、医学・ライフサイエンス分野での大きな貢献が期待されています。

【基本】半導体レーザー

半導体レーザーは、レーザーダイオード(LD)とも呼ばれ、小型軽量、高効率、低電圧動作、電流制御が高速変調が容易に可能等の利点から広く使われています。CD/DVDなどの記録読み出し機器の光源、レーザープリンター用光源、光通信用光源、バーコードリーダー、レーザーポインターなど、身近な機器での利用が多いです。最近では、レーダー(LiDAR)の光源にも利用されています。また、大出力のレーザーでは、加工用途にも利用されています。

構造は、異種の層が重なってできるダブルヘテロ構造となっています。GaAsやAlGaAsなど2つ以上の化合物半導体層から構成されており、中央部にバンドギャップの狭い発光層(100nm程度の活性層)があります。その上下を、活性層より少しバンドギャップの広いp型とn型の半導体層からなっています。

このpnの順方向へ電流を流すとGaAs活性層に反転分布が形成され、へき開面よりレーザーが出射されます。これは、ファブリペロー共振型の半導体レーザーと呼ばれます。レーザーを単一縦モードでより安定的に動作させるための工夫が施された分布帰還型(DFB)の構造もあります。また、量子井戸の原理を利用して、単色性が極めてよく、高速で光変調させることができる量子井戸(QW)型のレーザーもあります。

通常は、これらのように半導体基板の端面から水平にレーザーを発光するのですが、基板面に垂直にレーザーを出射する面発光レーザー(VCSEL)もあります。この構造ですと、面的に多数のレーザーを配置できますので大量のデータを伝送するときや、多くの情報を表現できるため、高速並列処理に有利となります。

半導体レーザーは、発振形態としては、CWとパルスの両方があります。発振波長は、活性層の結晶材料がもつバンドギャップとチップの共振器長で決まりますが、300~1000nm程度が多いです。出力は数mW~数kW程度まで幅広く対応しています。半導体チップは真空封入されたパッケージとなっており扱いやすいです。また、大出力のレーザーでは冷却モジュールと一体になったものもあります。安定的に出力するために、PDを内蔵し出力をモニタ・フィードバックすることで電流電圧制御できるものもあります。

半導体レーザーで手軽に扱えるようになったレーザーは、ますます活躍の場を広げています。

【基本】自由電子レーザー

自由電子レーザー(FEL:Free Electron Laser)は、自由電子と電磁場の共鳴を利用してコヒーレントな光を発生させるレーザーです。媒質によって光の波長が決まる一般的なレーザーとは異なり、電気的な操作で波長を変えることができます。軟X線、紫外光、可視光、遠赤外光まで幅広い波長を取り出すことができます。

電子ビームを供給する電子加速器、光を発生させ増幅するウィグラーまたはアンジュレータ、光共振器から構成されています。ウィグラーまたはアンジュレータは、挿入光源とよばれ、永久磁石を規則的に並べたユニットを向かい合わせ、その間を蛇行しながら電子ビームが進行していく装置です。この電子ビームが蛇行しながら進むことで、周期的に変化する横磁場により正弦波状に進行することになりシンクロトロン放射(SR)光が発生します。SR光とは、光速度に極めて近い高エネルギーの荷電粒子が、その進行方向を磁場などによって変えられた際に発生する電磁波のことです。この光を合わせ鏡で構成した光共振器内で共振させることでレーザー発振を実現します。

電子ビームのエネルギー、挿入光源の磁場の周期長、磁束密度のいずれかを変えると波長が変化します。広い波長域で連続的に波長を変化させることができ、メガW級の高出力、高効率なレーザーになると期待されています。

自由電子レーザーの原理となるアイデアは、1950年代にMotzおよびPhilipsのマイクロ波発生実験にあります。その後、1977年にスタンフォード大学で赤外域の3.4μmの波長での発振に世界で初めて成功し、1983年にはフランスで可視光650nmの発振に成功しました。

X線領域の波長のFELは、X線自由電子レーザー(XFLE:X-ray free-electron laser:) と呼ばれています。波長 0.1 nm以下を目指したXFEL発振装置は、米国 (SLAC LCLS)、日本 (SACLA)で稼働中であり、ヨーロッパでも開発が進められています。

【基本】色素レーザー

色素レーザーは、液体を媒質とするレーザーです。レーザー媒質は蛍光性有機色素をメチルアルコールなど溶媒に溶かしたものです。レーザーの励起にはXeフラッシュランプなどが使われます。色素溶液は、光共振器内でブリュースター角で膜状に噴射されています。発振波長の選択は、光共振器内に設置されたエタロン板や波長選択素子で行われます。

色素レーザーの電子状態を見てみますと、全てのスピンが対になっている1重項状態と1対のスピンがそろっている3重項状態のエネルギー準位系となっており、互いの移り変わりはゆっくりとしか行われません。また、色素は分子量の大きな複雑な分子であるため、各エネルギー順位はバンド状になっています。各遷移間は大きな吸収係数を持っているため、効率よく励起されます。基底状態に戻るときに蛍光が起こりますが、この蛍光が広いスペクトル幅を持っているため、任意の波長でレーザー発振ができることになります。

媒質である色素を変更することで発振波長を変えることができます。さらに、色素を合成することで希望の波長のレーザーを得ることもできます。現在では、500種類以上の媒質でレーザー発振できることが確認されています。

この色素レーザーで最も効率よく安定したレーザー発振ができる媒質は、ローダミン6Gといわれており、効率は30%にもなります。

色素レーザーは、他のレーザーを励起する種光として用いられることが多く、窒素レーザー、エキシマレーザー、YAGレーザー、アルゴンイオンレーザーに用いられます。しかし、比較的早く媒質が劣化することと波長可変固体レーザーの普及に伴い使用範囲が狭まっています。

【応用】レーザリンク

インターネットは、情報伝達の手段としてすでに私たちの生活に欠かすことができない技術となっています。しかし、世界を見渡すとまだまだインターネット(とくにブロードバンド)のメリットを享受できていない地域もあります。その解決策として、宇宙を利用した無線情報伝送の事業化が進んでいます。

これは、宇宙空間に人工衛星の一群・システム(コンステレーション)を構築し、その間、および衛星と地球をつなぐことで地球上の必要な地域にインターネットサービスを提供しようというものです。

この概念自体は、レーザーが誕生した1960年頃まで遡るといわれています。しかし、最初に実証されたのは、2008年に行われた欧州の衛星Terra SAR-Xと米の衛星Near Field Infrared Experimentの2つの低地球軌道衛星間でレーザー通信が行われた実験です。25秒以内で互いにロックオンし5.6Gbpsで約20分間双方向通信したそうです。

続いて、2013年にNASAがLLCD(Lunar Laser Communication Demonstration)によって月からデータを送信しました。この時の速度は622Mbpsで宇宙からの無線でのデータ速度としては高速で、技術的に大きな進展が見られました。

2016年には、最初の商用レーザ衛星間でのレーザリンクが運用されました。エアバスがSpaceDataHighwayとして、テサット社のレーザ通信ターミナルを用いて、低地球軌道上の4基の衛星によって収集された画像データを地球に1.8Gbpsで送信しました。2019年には、2期目の対地同期衛星が追加され、中継速度が向上しました。

これらの技術をさらに発展させて、ブロードバンドが未整備の地域へインターネットサービスを提供する動きもあります。SpaceX社が衛星打ち上げサービスの低価格化を実現したため、衛星を経由したインターネットサービスが目前に迫っているとの指摘もあります。

無線データ通信は、マイクロ波リンクでも実現可能です。この方式ですと、雲や霧など大気中で光信号が遮られることがないというメリットがあります。一方で、レーザは伝送帯域幅が広く、受信機を小さくでき、盗聴されにくいというメリットがあります。ただ、レーザー接続を常に維持するために相対位置を制御し続ける必要があります。

ブロードバンドを世界に届けるという目標の解決策としてFacebookはドローンを検討していたようですが、今では衛星の方にシフトしているようです。

レーザーのハードウエアは、分布帰還型(DFB)半導体レーザー+増幅器の1550nmや1080nm帯、DPSSレーザーの1064nmが使用されているようです。

技術的にも、まだまだ課題が多く、困難が伴いますが、世界の人々が平等にインターネットを使うことができれば、素晴らしいですね。

【基本】He-Neレーザー

He-Neレーザーは、安定的に発振でき、長寿命で、小型化が可能で扱いが容易という利点から現在は非常に広く使われているガスレーザーです。

Neの中性原子の励起準位から遷移するスペクトル線は632.8nmの赤色で安定的に連続発振し、ビーム形状は回折限界に近いTEM00に近く、コヒーレンスが良いという特徴があります。装置の基本的な構成は、HeとNeの混合ガスを封入したガラス放電管、励起用の電源、光共振器です。光共振器の反射鏡が放電管の内部にあるものを内部鏡型と呼ばれランダムな偏光であり低出力です。一方、反射鏡が放電管の外部にあるものは直線偏光をし大出力を得ることができ、外部鏡型と呼ばれます。ガラス管内部には、~90%程度のHeガスと~15%程度のNeガスを約1tollの圧力で封入してあります。

発振の原理は次のとおりです。放電管のアノードとカソードの間に電圧を印可してプラズマを発生させると、He原子とNe原子はエネルギーの高い状態に励起されます。このうち、He準安定準位の励起電子は、Ne原子に内部エネルギーを与え、He原子は基底状態に戻ります。Neが下準位に落ちるときに632.8nmの光を出します。実は、この他にも543nm、594nm、612nm、および1523nmの光も出しますが、非常に弱く、得られる光の大部分は632.8nmです。

He-Neレーザーは、計測用光源、光軸調整、カメラ照明、実験用光源として多用されています。使用される用途からも大出力は不要であり、~数百mW程度の出力のレーザーが多いようです。

【基本】Arイオンレーザー

Arイオンレーザーは、可視領域で高出力の発振ができるガスレーザーの一つです。特に強い波長は青から緑色の488.0nmと514.5nmにあります。

原理は次のとおりです。Arガスは、イオン化した後にAr+の基底準位が大量に作られ、上準位に励起されます。このように、2段階の励起が起こります(2段階励起)。この反転分布状態から下基底準位に落ちるときに488.0nmと514.5nmの光を発振します。

基本的な構造は、He-Neレーザーと同等ですが、次に示す特徴のため、多少複雑になっています。

Arレーザーは36eV程度と非常に高いエネルギー準位まで励起する必要があるためレーザー管に大電流を流す必要があります。そのため、レーザー管は酸化ベリリウムのような耐熱性、耐イオン衝撃性のすぐれた材料を使用する必要があります。さらに、Arガスが陽極に集まりやすいため外部にガス用のバイパスを設けガスの偏りを低減します。また、ガスの消耗が激しいため補給用のリザーバーを取り付けます。

Arレーザーは空冷式と水冷式があります。空冷式ですと~100mW程度の出力ですが、水冷式ですと~数十W程度の大出力が得られます。

同様の希ガスレーザーとして、クリプトイオンレーザー(Kr+)があります。これは、647mn(赤色)を発振します。構造はArレーザーと基本的に同じですが、ガスをKrに換え、ミラーを赤色対応に換えてあります。

Arレーザーの用途としては、眼科などの医療分野、フォトリソグラフィの光源、高速度カメラの光源、エンターテイメントのレーザービームなどがあります。