【基本】光の性質

1.Maxwell方程式

光の特性は、これを電磁波をみなして評価することが多いです。電磁波の振る舞いはMaxwellの方程式として知られ、以下の様に表されます。

\begin{gather}
\nabla \times \mathbf{E} = – \frac{\partial \mathbf{B}}{\partial t} \label{eq:1} \end{gather}
\begin{gather} \nabla \times \mathbf{H} =\frac{\partial \mathbf{D}}{\partial t} \label{eq:2} \end{gather}
\begin{gather} \nabla \cdot \mathbf{D} = 0 \label{eq:3} \end{gather}
\begin{gather} \nabla \cdot \mathbf{B} = 0 \label{eq:4} \end{gather}

ここで、\(E, H, D, B\)は、それぞれ電磁波の電界、磁界、電束密度、磁束密度を表すベクトルで、空間と時間の関数です。また、誘電率\(\epsilon\)と透磁率\(\mu\)を用いて、次の関係があります。

\begin{gather} \mathbf{D} = \epsilon \mathbf{E} \label{eq:5} \end{gather}
\begin{gather} \mathbf{B} = \mu \mathbf{H} \label{eq:6} \end{gather}

2.波動方程式の導出と光の速度

波動方程式を導出して光の性質を見ていきます。以降、真空または誘電体(電荷も電流もない透明媒体)を考えます。(よって、式(3)と式(4)が成り立っています。)

式(2)の両辺を時間で偏微分すると、

\begin{gather} \nabla \times \frac{\partial \mathbf{H}}{\partial t} = \epsilon \frac{\partial^2 \mathbf{E}}{\partial t^2} \label{eq:7} \end{gather}

となります。また、式(1)の両辺のrotをとり、式(7)を考慮すると、

\begin{gather}
\nabla \times \nabla \times \mathbf{E} = – \mu \nabla \times \frac{\partial \mathbf{H}}{\partial t} = – \epsilon \mu \frac{\partial^2 \mathbf{E}}{\partial t^2} \label{eq:8} \end{gather}

となります。ここで、ベクトル解析の公式より、

\begin{gather}
\nabla \times \nabla \times \mathbf{E} = \nabla (\nabla \cdot \mathbf{E}) – \nabla^2 \mathbf{E} = -\nabla^2 \mathbf{E}
\label{eq:9} \end{gather}

となります。式(8)と式(9)から、次の式が得られます。

\begin{gather}
\nabla^2 \mathbf{E} = \epsilon \mu \frac{\partial^2 \mathbf{E}}{\partial t^2}
\label{eq:10} \end{gather}

ここで、

\begin{gather}
\nu = 1 / \sqrt{\epsilon \mu}
\label{eq:11} \end{gather}

とすると、電界について次の関係が得られます。

\begin{gather}
\nabla^2 \mathbf{E} = \frac{1}{\nu^2} \frac{\partial^2 \mathbf{E}}{\partial t^2}
\label{eq:12} \end{gather}

また、同様に磁界についても次の式が得られます。

\begin{gather}
\nabla^2 \mathbf{H} = \frac{1}{\nu^2} \frac{\partial^2 \mathbf{H}}{\partial t^2}
\label{eq:13} \end{gather}

式(12)と式(13)はともに、任意の関数が時間によって形を変えずに空間を移動する様子を表す波動方程式です。ちなみに、波動方程式は電磁波に限った方程式ではなく、すべての波を表す一般的な方程式です。例えば、弾性体中の縦波や、弦の振動、潮の満ち引き、電線を伝わる波なども表現します。\(\nu\)は、同じ位相の点が進む速度を表し、位相速度と呼ばれています。3次元の場合、波動の位相が等しい各点は曲面になり、この面を波面と呼んでいます。ただし、実際は媒質が移動するのではなく、単にその場で振動をしているだけです。

式(11)に真空の誘電率\(\epsilon_0\)と透磁率\(\mu_0\)を入れると、真空中の速度が求まります。

\begin{gather}
\epsilon_0 = 8.85418717 \times 10^{-12} [F/m]
\label{eq:14} \end{gather}
\begin{gather}
\mu_0 = 4 \pi \times 10^{-7} [H/m]
\label{eq:15} \end{gather}

これより、光の速度は次の様に求まります。

\begin{gather}
c = 1 / \sqrt{\epsilon_0 \mu_0} = 2.99792458 \times 10^{8} [m/s]
\label{eq:16} \end{gather}

これは、とりもなおさず光が電磁波であることの証左です。今後、光を表すので、速度\(\nu\)をcとします。

3.波動方程式の一般解

波動方程式の一般解を見てみます。簡単のため、1次元で考えてみます。式(12)は、次の様に表されます。

\begin{gather}
\frac{\partial^2 E}{\partial x^2} = \frac{1}{c^2} \frac{\partial^2 E}{\partial t^2}
\label{eq:17} \end{gather}

この一般解は、次の様に波を表す関数\(f, g\)が時間tと変位xの一時結合となっています(検算をすれば簡単にわかります。)。

\begin{gather}
E = f(x – c t) + g(x + c t)
\label{eq:18} \end{gather}

つまり、fの時間に対する変化と位置に対する変化が同じということです。ということは、x軸(正)に対して起こった変化が、t軸(負)に対して起こるということです。これは、波が形を変えずに伝搬していく現象そのものです。

ただし、関数f,gが具体的にどのような形かは、この微分方程式だけからは分かりません。その形は最初の波形(初期条件)と境界での反射の条件(境界条件)によって定まります。一般に解は正弦関数や余弦関数を用いることが多いです。なぜなら、これらの関数によってすべての波を表現できるからです。

一般解のもつもう一つの重要な意味は、一時結合\(\xi = x – c t\)が一定値をとるなら、\(f(\xi)\)も一定値をとります。この場合、x-t平面で考えるとxはtに対して傾きcの直線となり、その直線に沿って波の変位が一定の部分が移動しているということです。つまり、\(f(\xi)\)は形を保ったままx軸(正)の方向へ速度cで進んでいくことになります。

ここまでは、1次元で現象を確認しましたが、これを空間内で考えるため3次元に拡張します。波動の進行方向を表す単位ベクトル\(\mathbf{e}\)と位置ベクトル\(\mathbf{r}\)を用いて、次のようにあらわされます。

\begin{gather}
\mathbf{E} = \mathbf{f}(\mathbf{e} \cdot \mathbf{r} – c t) + \mathbf{g}(\mathbf{e} \cdot \mathbf{r} + c t)
\label{eq:19} \end{gather}

eとrの内積により、その方向へ進んだ距離を表します。

4.横波

波動方程式の一般解から、電磁波が横波であることを確認します。式(3)と式(5)から、電界は発散しないことが分かります。すなわち、

\begin{gather}
\nabla \cdot \mathbf{E} =0 \label{eq:20} \end{gather}
\begin{gather}
\nabla \cdot (\mathbf{f}(\mathbf{e} \cdot \mathbf{r} – c t) + \mathbf{g}(\mathbf{e} \cdot \mathbf{r} + c t)) =0 \label{eq:21} \end{gather}\begin{gather}
\frac{\partial}{\partial x}(f_x + g_x) + \frac{\partial}{\partial y}(f_y + g_y) + \frac{\partial}{\partial z}(f_z + g_z) =0 \label{eq:22} \end{gather}
\begin{gather}
e_x(f’_x + g’_x) + e_y(f’_y + g’_y) + e_z(f’_z + g’_z) =0 \label{eq:23} \end{gather}
\begin{gather}
\mathbf{e} \cdot (\mathbf{f} + \mathbf{g}) =0 \label{eq:24} \end{gather}

ベクトルeとf+gの微分の内積が0ということは、電磁波の進行方向には電場は変化しないということです。すなわち、電場は進行方向と垂直方向にしか存在しえない、つまり、横波ということです。磁場についても同様なことが言えます。

5.電場と磁場

電場と磁場の関係を見てみます。簡単のため、z軸方向に進む電磁波でx方向の振幅成分だけがあるとします。つまり、

\begin{gather}
E_x = f(z-ct) + g(z+ct) \label{eq:25} \end{gather}
\begin{gather}
E_y =0 \label{eq:26} \end{gather}
\begin{gather}
E_z =0 \label{eq:27} \end{gather}

と表される電磁波を考えます。式(1)において、各成分に分解して考えます。

\begin{gather}
\frac{\partial E_y}{\partial z} – \frac{\partial E_z}{\partial y} + \frac{\partial B_x}{\partial t} = 0 \label{eq:28} \end{gather}
\begin{gather}
\frac{\partial E_x}{\partial z} – \frac{\partial E_z}{\partial x} + \frac{\partial B_y}{\partial t} = 0 \label{eq:29} \end{gather}
\begin{gather}
\frac{\partial E_y}{\partial x} – \frac{\partial E_x}{\partial y} + \frac{\partial B_z}{\partial t} = 0 \label{eq:30} \end{gather}

ここで、式(25)、(26)、(27)を代入すると、

\begin{gather}
\frac{\partial B_x}{\partial t} = 0 \label{eq:31} \end{gather}
\begin{gather}
\frac{\partial B_y}{\partial t} = – f'(z-ct) – g'(z+ct) \label{eq:32} \end{gather}
\begin{gather}
\frac{\partial B_z}{\partial t} = 0 \label{eq:33} \end{gather}

となります。tで積分すると、次の式となります。

\begin{gather}
\partial B_y= \frac{1}{c} f(z-ct) – \frac{1}{c} g(z+ct) \label{eq:34} \end{gather}

このように、電場と磁場は定数cの違いはありますが、同じ形で進むことになります。また、電場はx成分だけだったものが、磁場はy成分のみとなっています。つまり、電場と磁場は直交していることが分かります。

6.さいごに

以上のように、Maxwell方程式から波動方程式を導出し、その一般解を解釈することで、波は波形を保ったまま伝搬する事、波は横波であること、電場と磁場は直交していることを示しました。

【基本】電磁波の波長と周波数

光の周波数\(\nu\)は単位時間の波の繰り返し数、波長\(\lambda\)は波の繰返し周期なので、速度\(v\)との間には

\begin{gather}
v = \lambda \nu
\end{gather}

の関係があります。また、媒質中の光の速度\(v\)は真空中の速度\(c\)と異なり、その比は媒質の屈折率として次のように定義されています。

\begin{gather}
n \equiv c / v = \sqrt{\epsilon \mu / \epsilon_0 \mu_0}
\end{gather}

ここで、\(\epsilon\),\(\mu\)は、それぞれ誘電率、透磁率であり、添え字0は真空を表します。このことから、

\begin{gather}
\lambda = v / \nu = c / \nu n
\end{gather}

を得ます。時間が媒質中でも真空中でも同じですので、媒質中の波長は真空中に比べて屈折率nだけ短くなることになります。つまり、光の進む長さが屈折率の割合だけ伸びたことになります。実際の長さに屈折率をかけた長さのことを光路長と呼びます。

波長と周波数は下図のようにまとめられます。可視光は約390nm~約760nmといわれています。これより長い波長を赤外(遠赤外)、短い波長を紫外、X線、γ線となります。ただし、各波の分類の境目は曖昧になっています。

【基本】波の重ね合わせ

レーザーは位相の揃った電磁波であるため、複数が重なり合うと干渉します。その様子を下図に示します(イメージ図です)。青で示した波に対して、緑で示した波が空間的に移動しているとします。この時、波の重ね合わせは加法で求められ、赤線の波のようになります。ある地点(マーカーで記した0の位置)で、振幅が大きくなったり小さくなったりしています。青と緑の波が同位相の時は強め合い、位相が180°ずれると弱めあいます。このような現象が干渉です。

このような干渉は様々な分野で用いられています。空間的、時間的に強弱をつけられますので、干渉現象をうまく利用した大面積のオンデマンド微細加工があります。また、計測の分野では、光の波長を基準にできるため高精度な測定が可能となる干渉計として利用されています。

このアニメーションgifは、julia言語を用い以下のコードで作成しました。

using Plots
import ProgressMeter
gr(size=(1000,600))
n = 100  
prog = ProgressMeter.Progress(n,1)
i = -2π*5:0.3:2π*5
anim = @animate for t in 0:0.1:2π
    l = @layout [a;b;c]
    x0=zeros(1,length(t))
    x=[cos.(t)]
    y=[sin.(t)]
    global p = plot(xlims=(-30,30),ylims=(-2,2))
    global p = plot!(i, sin.(-i.+t), linecolor = "green", legend=:false)
    
    global q = plot(xlims=(-30,30),ylims=(-2,2))
    global q = plot!(i, sin.(-i), linecolor = "blue", legend=:false)
 
    global s = plot(xlims=(-30,30),ylims=(-2,2))
    global s = plot!(i, sin.(-i).+sin.(-i.+t), linecolor = "red", legend=:false)
    global s = plot!(x0, y, marker=:circle, legend=:false)
    
    
    plot(q, p, s, layout = l, link=:x)
    ProgressMeter.next!(prog)
end
fps = 20
filename = "plot.gif"
gif(anim, filename, fps = fps)

【基本】レーザー波長

レーザーで加工を行うときには、その波長が重要な意味を持ちます。波長により加工性が異なり、加工結果に影響を与えるからです。主なレーザーとその波長を下表に示します。

レーザーの種類レーザー媒質波長(真空中、nm)
気体レーザーHe-Cd
He-Ne
Ar+
CO2
CO
441
633, 1150, 3390
515
10600、9600
5000
液体レーザーローダミン6G色素560 – 640
固体レーザールビー
Ti:Al2O3
Nd3+:YAG
Nd:YVO
Nd3+:YLF
Yb:KGW
Er+:シリカファイバ
694
660 – 1180
1064
1064
1047
1028
1550
半導体レーザーZnSSe
AlGaInP
AlGaAs
InGaAsP
PbSnSeTe
200 – 500
600 – 800
700 – 900
1100 – 1800
4000 – 20000

【基本】超短パルスレーザー

レーザーでの加工は、その特性をいかし、多くのメリットがあります。特に微細加工においては、超短パルスレーザーが注目されています。近年、工業用途においてレーザー光源自体の安定性・信頼性が向上し、ものづくりで利用される機会が多くなってきています。

連続的にレーザーを発射し続けるCWレーザーとは異なり、パルスレーザーは発射のOn/OFFを繰り返します。このパルスONの時間が短いレーザーは短パルスレーザーと呼ばれます。従来は、ナノ秒が使用されていました。ピコ秒/フェムト秒等の特に短いレーザーは超短パルスレーザーと呼ばれています。

ナノ、ピコ、フェムトは、接頭語でそれぞれ\(10^{-9}, 10^{-12}, 10^{-15}\)を表します。光速を\(3×10^{8}m/s\)とすると、1秒間に進む距離はナノ秒レーザーで300mm、フェムト秒レーザーでは0.3μmとなります。フェムト秒レーザーは、非常に短いパルスであることが分かります。

物質に対するレーザーでの加工は、一般的に熱加工であり、物質に熱を加える時間を短くすることで、物質への損傷を抑えることができます。レーザー照射時の熱拡散長\(x_D\)は、レーザーのパルス幅を\(\tau_p\)として、次式で表されます[1]。

\(x_D=\sqrt{\frac{2k_0\tau_p}{C_i}}\)

ここで、\(k_0[Wcm^{-1}K^{-1}]\)は熱伝導率、\(C_i[Jcm^{-1}K^{-1}]\)は格子イオンの熱容量です。例えば、銅に対してレーザーを照射し、蒸散が起こる融点で加熱すると、フェムト秒レーザーでは\(x_D\)=329nmですが、10nsのナノ秒レーザーでは、\(x_D\)=1.5μmとなります。ナノ秒レーザーの方が材料への損傷が大きいことは明らかです。

実際の加工結果を次の写真で示します。写真左から、ナノ秒レーザー、ピコ秒レーザー、フェムト秒レーザーでの加工結果です。写真上段がアルミ、下段が銅への溝加工結果です。ナノ秒->ピコ秒->フェムト秒とパルス幅が短くなるに従い加工幅が短くなり、きれいな加工になっていることが分かります。

[1] フェムト秒レーザーによる物質プロセッシング、橋田昌樹et.al.、光学、31 第8号(2002) 621

【基本】レーザーとは

1.レーザーとは?

レーザー(LASER)の名称は、その原理であるLight Amplification by Stimulated Emission of Radiation(放射の誘導放出による光増幅)の頭文字を取ったものに由来します。共振器を用いて光(電磁波)を増幅してレーザーを発振します。1917年にアインシュタインが「誘導放出の理論」にて、可能性を示した後、1960年にメイマンがルビー結晶を用いたレーザー発振を初めて成功させました。その後に次のように、多くのレーザーが開発されています。
・1961年 :Ali JavanによってHe-Neレーザー
・1962年:Nick Holonyak, Jrにより半導体レーザー
・1963年:W.BridgesによりArレーザー
・1964年:C. Kumar N. PatelによりCO2レーザー
・1966年:P.P.Sorokinによる色素レーザ
・1970年:によりエキシマレーザ

2.レーザーの特長

レーザーは次のような特長があります。
 ①単色性 :波長が一定です。
 ②指向性:真っすぐ進みます。
 ③可干渉性 :位相がそろっています。
 ④高光密度:少ない面積に集めることができ、大きな仕事ができます。

3.レーザーの機能と応用

レーザーの特長を活かすと、次のような機能を発揮します。

加工レーザーを集光させた高密度点で除去/付加加工ができる。レーザーマーカー、切断、アニーリング、溶接、レーザーメス
読取微小スポットでの検知光ディスク(CD/DVD/BD)の読取、バーコードリーダー
書込微小スポットで材質を変化光ディスク(CD/DVD/BD)の書込、レーザーマーカー
通信少ない減衰、高速応答、広帯域、小型を活かし、情報通信光ファイバー
照明微小スポットで高輝度に正確に照明レーザーポインター、レーザー顕微鏡、墨出し器
測定可干渉性、指向性、単色性により高精度測定レーザー干渉計、位相差顕微鏡、膜厚計、セルソーター、蛍光顕微鏡
検知高速性、指向性により正確な検知汚染物質検知、車間距離検知

3.レーザー微細加工の特長

レーザーの特長を最大限に活用すると、除去加工において次のような特性を得ることができます。

・微細加工性:極微小点に加工を行うため微細な加工ができます。
・精密加工性:安定した品質にて加工を行えます。
・高エネルギー密度加工:瞬時に材料を蒸散させ除去できます。
・高柔軟性:金型等が不要でプログラミングで任意に柔軟な加工ができます。
・高効率性:微小部分を効率良く除去します。
・化学反応:熱ではなく化学的な反応で除去します。

以上のように、レーザーは工業的な利用としては、歴史が浅いですが、微細加工においても無限の可能性がある技術です。