【基本】色素レーザー

色素レーザーは、液体を媒質とするレーザーです。レーザー媒質は蛍光性有機色素をメチルアルコールなど溶媒に溶かしたものです。レーザーの励起にはXeフラッシュランプなどが使われます。色素溶液は、光共振器内でブリュースター角で膜状に噴射されています。発振波長の選択は、光共振器内に設置されたエタロン板や波長選択素子で行われます。

色素レーザーの電子状態を見てみますと、全てのスピンが対になっている1重項状態と1対のスピンがそろっている3重項状態のエネルギー準位系となっており、互いの移り変わりはゆっくりとしか行われません。また、色素は分子量の大きな複雑な分子であるため、各エネルギー順位はバンド状になっています。各遷移間は大きな吸収係数を持っているため、効率よく励起されます。基底状態に戻るときに蛍光が起こりますが、この蛍光が広いスペクトル幅を持っているため、任意の波長でレーザー発振ができることになります。

媒質である色素を変更することで発振波長を変えることができます。さらに、色素を合成することで希望の波長のレーザーを得ることもできます。現在では、500種類以上の媒質でレーザー発振できることが確認されています。

この色素レーザーで最も効率よく安定したレーザー発振ができる媒質は、ローダミン6Gといわれており、効率は30%にもなります。

色素レーザーは、他のレーザーを励起する種光として用いられることが多く、窒素レーザー、エキシマレーザー、YAGレーザー、アルゴンイオンレーザーに用いられます。しかし、比較的早く媒質が劣化することと波長可変固体レーザーの普及に伴い使用範囲が狭まっています。

【基本】He-Neレーザー

He-Neレーザーは、安定的に発振でき、長寿命で、小型化が可能で扱いが容易という利点から現在は非常に広く使われているガスレーザーです。

Neの中性原子の励起準位から遷移するスペクトル線は632.8nmの赤色で安定的に連続発振し、ビーム形状は回折限界に近いTEM00に近く、コヒーレンスが良いという特徴があります。装置の基本的な構成は、HeとNeの混合ガスを封入したガラス放電管、励起用の電源、光共振器です。光共振器の反射鏡が放電管の内部にあるものを内部鏡型と呼ばれランダムな偏光であり低出力です。一方、反射鏡が放電管の外部にあるものは直線偏光をし大出力を得ることができ、外部鏡型と呼ばれます。ガラス管内部には、~90%程度のHeガスと~15%程度のNeガスを約1tollの圧力で封入してあります。

発振の原理は次のとおりです。放電管のアノードとカソードの間に電圧を印可してプラズマを発生させると、He原子とNe原子はエネルギーの高い状態に励起されます。このうち、He準安定準位の励起電子は、Ne原子に内部エネルギーを与え、He原子は基底状態に戻ります。Neが下準位に落ちるときに632.8nmの光を出します。実は、この他にも543nm、594nm、612nm、および1523nmの光も出しますが、非常に弱く、得られる光の大部分は632.8nmです。

He-Neレーザーは、計測用光源、光軸調整、カメラ照明、実験用光源として多用されています。使用される用途からも大出力は不要であり、~数百mW程度の出力のレーザーが多いようです。

【基本】Arイオンレーザー

Arイオンレーザーは、可視領域で高出力の発振ができるガスレーザーの一つです。特に強い波長は青から緑色の488.0nmと514.5nmにあります。

原理は次のとおりです。Arガスは、イオン化した後にAr+の基底準位が大量に作られ、上準位に励起されます。このように、2段階の励起が起こります(2段階励起)。この反転分布状態から下基底準位に落ちるときに488.0nmと514.5nmの光を発振します。

基本的な構造は、He-Neレーザーと同等ですが、次に示す特徴のため、多少複雑になっています。

Arレーザーは36eV程度と非常に高いエネルギー準位まで励起する必要があるためレーザー管に大電流を流す必要があります。そのため、レーザー管は酸化ベリリウムのような耐熱性、耐イオン衝撃性のすぐれた材料を使用する必要があります。さらに、Arガスが陽極に集まりやすいため外部にガス用のバイパスを設けガスの偏りを低減します。また、ガスの消耗が激しいため補給用のリザーバーを取り付けます。

Arレーザーは空冷式と水冷式があります。空冷式ですと~100mW程度の出力ですが、水冷式ですと~数十W程度の大出力が得られます。

同様の希ガスレーザーとして、クリプトイオンレーザー(Kr+)があります。これは、647mn(赤色)を発振します。構造はArレーザーと基本的に同じですが、ガスをKrに換え、ミラーを赤色対応に換えてあります。

Arレーザーの用途としては、眼科などの医療分野、フォトリソグラフィの光源、高速度カメラの光源、エンターテイメントのレーザービームなどがあります。

“偏光(へんこう)”って何?(1)~意外と身近な偏光~

「偏光」という言葉を見たり、聞いたりしたことのある人は、多いのではないでしょうか?
ただ、「偏光って何?」と考えると、いまいちよく分からないという方もいらっしゃるかもしれません。

 そこで、今回は、「偏光」について、ざっくりとした感じで書いていきたいと思います。

「偏光」とは、光の振動方向がある規則性をもって偏った状態の光のことです。
 それに対して、「自然光」は、ありとあらゆる方向に振動しています。
 だから、これを「ランダム偏光」と呼ぶ場合もあります。
 ただ、それでは、「だから偏光って何なの?」という感じがしますよね。

 まず身近にある偏光について例を挙げてみます。
 例えば、次のような経験をしたことはありませんか?
 偏光サングラスをして運転席からカーナビのディスプレイを見てみる。
 すると、変な見え方になった経験とか…

 偏光サングラスをかけたままで、ガソリンスタンドでセルフ給油していた。
 そのとき、液晶画面(金額表示や、給油量など)が見えずらくなった経験とか…。

 なぜ見えずらいことになってしまうのか?
 それは、偏光サングラスをした状態で、偏光した光を見ていたからです。

液晶ディスプレイを通して見えている光は、実は、偏光子を通して眼に入っています。
その光は、偏光しているのです。

もしも、偏光サングラスなどを持っていれば、1秒で偏光を実感できる実験があります。
※結果画像はページ下部に載せています。

まずは、用意するものです。2つ必要です。

  • 「画面が表示されている液晶ディスプレイ」
    スマホでも、パソコンでも、テレビでも、要は液晶ディスプレイならば何でもOKです。
    ただ、プラズマテレビではダメです。偏光してませんから。
    表示させるものは、静止画でも動画でもなんでも構いません。
  • 「偏光サングラス」
    必ずしも偏光サングラスでなくても構いません。
    偏光子、あるいは、“偏光子のようなもの”であれば、何でも構いません。(そのようなものを持っていない人は残念ながら、この実験ができませんが、大丈夫です。結果の画像は、このページ下部にあります。)

準備は、これで終わりです。

さて、これから実験です。手順は4つです。

  1. 液晶ディスプレイを見ます。
     このページを見ていただいている時点で、液晶ディスプレイを見ている状態かもしれませんね。

2. 自分の両手で偏光サングラスを持ちます。

3. その偏光サングラスを自分の眼と液晶ディスプレイの間にもってきて、ディスプレイと大体平行になるように持ちます。

4. 3の状態から、偏光サングラスを液晶ディスプレイと平行に、クルマのハンドルを回すように回転させます。
 ※右回りでも左回りでもOKです。

すると、液晶ディスプレイが見える角度と見えなくなる角度があることに気が付くはずです。ほとんどの場合、90度回す度に、“見えない状態”⇔“見える状態”が繰り返されるはずです。おもしろくないですか?
普通の眼鏡レンズではこのようなことにはなりません。

 更に、光の反射がからむとどうなるか?
 などが絡んでくると長文になりますので、それは、またの機会に。

★実験結果★

 ページ下部の2枚の画像は、偏光サングラスを通して、液晶ディスプレイ画面を見ている様子を撮影したものです。

※茶色に着色された偏光サングラスで見ています。その為、サングラスを通してディスプレイを見ると茶色っぽく着色して見えています。その点は、重要ではないので、気にしないでください。

 左と右の画像では、サングラスが大体90度回転しています。
ディスプレイの額縁とサングラスのフレームの位置関係から、ほぼ90度回転していることが、見てとれるかと思います。

 右下の画像では、液晶ディスプレイがほとんど見えなくなっていますね。
※色の濃さの異なる別々のサングラスを使っているわけではありません。

 これは、ディスプレイの偏光方向とサングラスが透過できる偏光の角度が、光が透過できない位置関係になっている為です。

 光の透過具合は、偏光サングラス(偏光レンズ)の品質(偏光度合など)で多少の差はあると思いますが、光の透過量の違いは明確に感じられると思います。

液晶ディスプレイが、偏光サングラスを透過して見えている。液晶ディスプレイからの発光が遮られている。右側の画像よりも偏光サングラスが約90度回転している。

【基本】非球面レンズの加工

非球面レンズは、収差を抑えたり薄くできたりと、球面レンズに比べて多くのメリットがあります。しかし、表面が単なる球面ではありませんので、その製造には工夫が必要です。

1. 型を使う方法

球面レンズでも非球面レンズでも、型を用いて成型によりレンズを作ることは従来から行われてきました。この方法では、大量のレンズを精度よく低コストで製造できます。

従来から、金属の型を超精密旋盤等の工作機械を用いてきました。高精度の工作機械を用いると表面を非常になめらかに加工でき、また、形状も自由に変えることができます。この金属の型で樹脂を成型してCDのピックアップレンズや低価格のカメラなどの光学機器が作られてきました。

しかし、ガラスは融点が高いために金属の型では成型が困難でした。そこで、近年は耐熱性のファインセラミックスが登場に、それによりガラスの成型も可能になりました。このように型で成形されたレンズは、モールドレンズと呼ばれ、デジタルカメラなどのレンズに多用されるようになりました。

また、複合非球面レンズと呼ばれ、ガラスのレンズの表面に樹脂のレンズを成型したものもあります。基材がガラスのため、プラスチックレンズよりも温度や湿度の影響を受けにくいという特徴があり、焦点距離の変動が少ないため、カメラの交換レンズ等に応用されています。

2. 非球面創生

型による大量生産ではなく、1つ1つ非球面レンズを加工していく方法もあります。レンズの製造過程で、砂かけ・研磨の段階がありますが、この時にレンズの表面に非球面形状を創生します。こちらは、高額な型を作らないため、多品種少量生産に向いています。

加工原理から、半径方向の同心円の細かな傷を除去することが非常に困難です。そのため、多くの研究がなされています。

【基本】ポインティングベクトル

電磁波の流れの密度を表すポインティングベクトルを見てみます。

x軸の正の方向に進行する電磁波で、y軸方向に振動している電場を考えます。

$$ \bf{E} = (0, E_y, 0) $$,
$$ E_y = E_0 \sin(kx – \omega t) $$

磁場は、z軸方向に振動します。

$$ \bf{H} = (0, 0, H_z) $$,
$$ H_z = H_0 \sin(kx – \omega t) $$
ここで、\( H_0 = \sqrt{ \frac{\epsilon_0 }{\mu_0} }E_0 \) です。

ここで、電場と磁場のベクトル積を考えます。

$$ \bf{S} = \bf{S} \times \bf{H} = (S_x, 0, 0)$$

これをポインティングベクトルと呼び、電場と磁場に垂直ばベクトルです。この場合、x成分だけが存在し、

$$ S_x = E_0 H_0 \sin^2 (kx – \omega t) $$

となります。

ここで、電磁波が運ぶエネルギー密度の波長あたりの平均を考えてみます。時刻t=0の時にxについて0からλまで積分し、λで割ることで平均を求めてみます。

$$ S_x = \frac{1}{\lambda} \int^\lambda_0 S_x dx = \frac{1}{2} \bf{E_0} \bf{H_0} $$

この値は、時間によりませんが、ある点xにおいて、1周期の時間平均をとった場合も同じ結果となります。

また、電磁場の電場エネルギーと磁場エネルギーの1周期にわたる時間平均は同様に計算して、次のようになります。

$$ \overline{\frac{1}{2} \epsilon_0 E^2_y} = \frac{1}{4} \epsilon_0 E^2_0 $$,
$$ \overline{\frac{1}{2} \mu_0 H^2_z} = \frac{1}{4} \mu_0 H^2_0 $$

この両者は等しいので、次が分かります。

$$ \frac{1}{2} E_0 H_0 = \frac{1}{2} \epsilon_0 E^2_0 \frac{1}{ \sqrt{\epsilon_0 \mu_0} } = c \frac{1}{2} \epsilon_0 E^2_0 $$

これにより、

$$ \overline{S_x} = c( \overline{\frac{1}{2} \epsilon_0 E^2_y} + \overline{ \frac{1}{2} \mu_0 H^2_z}) $$

となり、電磁波のエネルギーがx軸方向へ高速で運ばれており、ポインティングベクトルであらわされることが分かります。

【基本】フラウンホーファー線

太陽光をプリズムを使って分光すると、特定の波長で暗い線が見られます。そのうち、特にはっきりと見える暗線のことをフラウンホーファー線と呼ばれています。

イギリスのウォラストンが1802年に発見しました。その12年後にドイツのフラウンホーファーが独立に数百本の暗線を発見し、長波長側からアルファベットの大文字でAから順に記号を付けて表しました。

記号元素波長 nm
A
B
C
D1
D2
D3
E2
F
G
G
H
酸素
酸素
水素
ナトリウム
ナトリウム
ヘリウム

水素

カルシウム
カルシウム
759.370
686.719
656.281
589.594
588.997
587.565
527.039
486.134
430.790
430.774
396.847

その約50年後には、ドイツのブンゼンとキルヒホフが炎色反応の光に2つの波長589.0nmと589.6nmがあり、フラウンホーファー線のDとD1とそれぞれ一致することを発見しました。

20世紀にはいると、量子力学の進展により、これらの波長が原子の中の電子軌道の変化によるものであることが発見されました。原子中の電子のエネルギー準位の高い軌道から低い軌道へ落ちるときの発光に起因するものであることが分かりました。

太陽は約6000度の高温のため、ナトリウムが気体として存在しています。このナトリウムによって吸収された光が地球に到達したとき、暗線として観察されるわけです。フラウンホーファー線の波長は、原子の軌道間のエネルギー差のみによって決まり、外界の影響を受けないので、波長の同定に用いられます。

天体物理学においては、恒星から届く光のスペクトラムを測定し、赤方偏移によるフラウンホーファー線のずれを調べることで太陽系と恒星の距離を推定することができます。また、フラウンホーファー線の有無から元素の有無を推定できます。

【基本】フレネルロム

光の位相を変化させる光学素子として、フレネルロムがあります。こちらのページで説明しましたように、光の全反射の現象を利用して1/4ないし1/2波長の位相変化をさせます。1/2波長の位相変化は、1/4波長の位相変化を2回繰り返すことで実現しています。直線偏光を入れるとフレネルロム内部での全反射により光のp,s成分の位相差がπ/2となるので、出射光は円偏光となります。つまり、1/4波長板として機能します。また、逆に円偏光を入れると直線偏光が得られます。このように、フレネルロムは直線偏光と円偏光の変換素子として働きます。

このフレネルロムの特長としては、他の波長板より広い波長範囲があげられます。その原理からも分かりますように、複屈折波長板では困難な広帯域波長板として機能します。

波長帯域が広いので、白色光源の偏光方向を変えることもできます。これを利用した分光計測なども行われます。

また、レーザー応用装置では光アイソレータとしても使われます。フレネルロムに直線偏光の光が入ると円偏光として出てきます。この光が鏡等に反射して戻るときには入射光と反対回りの円偏光となります。この光が再度フレネルロムに入ると直線偏光で出てきますが、偏光の振動方向は入射光と直交しています。よって、フレネルロムの前に直線偏光子を置いておけば、反射光は光源には戻らないことになります。この原理から電子部品のダイオードと同じ働きをしていると見ることもできます。

レーザー装置の場合、反射光が光源に戻るとレーザーが不安定になります。よって、このような光アイソレータを用いて反射光が光源に戻らないようにします。光ディスクプレーヤーや光通信で利用されています。

フレネルロムの形状は、プリズム状で、内部で反射を起こしています。材質は、BK7や合成石英が多いようです。

実際の使用では、汚れなどには注意することはもちろんですが、光の入射角度も重要です。これをしっかり管理しないと所定の性能を得ることはできません。

このフレネルロムは、発明者であるフランスの物理学者オーギュスタン・ジャン・フレネルにちなんで名づけられました。

【基本】光の反射

光の材料への影響を考えるとき、反射率をR、吸収率をA、透過率をTとすると、
 R+A+T=1
の関係が成り立ちます。これらの現象は、レーザー加工にとって重要な意味を持ちます。

レーザーが材料に何かしらの影響を与えるには、吸収が一番重要です。レーザーのエネルギーが吸収され、熱もしくは化学的な反応となって材料を除去します。もしくは、光造形法ですと材料を固化して形状を創生します。したがって、レーザーのエネルギーをうまく吸収させることによって効率よく加工ができます。

例えば、金属加工を考えた場合、透過率Tは0に近いですから、吸収率Aを大きくするには反射率Rを小さくすれば良いことがわかります。この、反射率Rを詳しく見ていきます。

反射率Rは、その定義から次の式で表されます。

\begin{gather}
R = \frac{I_R}{I_0}
\end{gather}

屈折率がそれぞれn1, n2の媒質1から媒質2へ光が入射する時、入射光の角度θiと透過光の角度θtを用いて、反射率Rは次式で表されます。

\begin{gather}
R = \frac{ n_1 \cos \theta_i – n_2 \cos \theta_t }{n_1 \cos \theta_i + n_2 \cos \theta_t}
\end{gather}

垂直に光が入射する場合、比屈折率をn=n1/n2とした場合、この反射率Rは、

\begin{gather}
R = \frac{ (n-1)^2}{(n+1)^2}
\end{gather}

となります。ここで、複素数を用いた屈折率を考えます。屈折率nとダンピングファクターk(波数ではありません)を用いると、反射率Rは次のようになります。

\begin{gather}
\hat{n} = n – ik
\end{gather}
\begin{gather}
R = | \frac{ \hat{n}-1}{\hat{n}+1} |^2 = \frac{(n-1)^2 + k^2}{(n+1)^2 + k^2} = \frac{n^2 + k^2 + 1 -2n}{n^2 + k^2 + 1 +2n}
\end{gather}

ここで、n,kの関係を求めるために、波動方程式を考えます。

光の性質の項では、Maxwell方程式を用い、光の性質を確認しました。ここでは、磁場Hの変化を次のように表しました。

\begin{gather}
\nabla \times \mathbf{H} =\frac{\partial \mathbf{D}}{\partial t}
\end{gather}

しかし、電流は真の電流の他に電束密度の時間変化に伴う変位電流が存在することを考慮すると、次の関係が成り立ちます(Amp`ere-Maxwellの法則)。

\begin{gather}
\nabla \times \mathbf{H} = j + \frac{\partial \mathbf{D}}{\partial t}
\end{gather}

この関係を用いて、波動方程式を再度計算すると次のようになります。

\begin{gather}
c^2 \nabla^2 \mathbf{E} = \frac{\sigma}{\epsilon_0} \frac{\partial \mathbf{E}}{\partial t} + \epsilon \frac{ \partial ^2 \mathbf{E}}{\partial t^2}
\end{gather}

x成分のみを考えると次の通りとなります。

\begin{gather}
c^2 \frac{\partial^2 E_x}{\partial z^2} = \frac{\sigma}{\epsilon_0} \frac{\partial E_x}{\partial t} + \epsilon \frac{ \partial ^2 E_x}{\partial t^2}
\end{gather}

この解を次のように置きます。

\begin{gather}
E_x = E_0 exp[i \omega (t – \frac{zn}{c})]
\end{gather}

すると、以下の関係が求まります。

\begin{gather}
n^2 = \epsilon – \frac{\sigma}{\epsilon_0 \omega} i = \epsilon – \frac{\sigma}{2 \pi \epsilon_0 \nu} i
\end{gather}

ここで、nを複素数で\(\hat{n}\)とすると、

\begin{gather}
\hat{n}^2 = n^2 – k^2 – 2 n k i = \epsilon -\frac{\sigma}{2 \pi \epsilon_0 \nu} i \equiv \epsilon_1 – i \epsilon_2
\end{gather}

ですので、Maxwell relation(\(\sigma \approx 0, \epsilon \approx n^2\))から、次の関係が求まります。

\begin{gather}
\epsilon = n^2 – k^2
\end{gather}
\begin{gather}
\sigma = 4 \pi \epsilon_0 n k \nu
\end{gather}
\begin{gather}
\epsilon_1 = n^2 – k^2
\end{gather}
\begin{gather}
\epsilon_2 = 2 n k = \frac{\sigma}{2 \pi \epsilon_0 \nu}
\end{gather}

これらの関係と、周波数が小さい領域\(\nu < 10^{13} Hz\)では、\(\sigma / 2 \pi \epsilon_0\)が極めて大きいことを考慮すると、次式が求まります。

\begin{gather}
n^2 = \frac{1}{2} \left( \sqrt{ \epsilon^2 + (\frac{\sigma}{2 \pi \epsilon_0 \nu})^2} + \epsilon \right) = \frac{1}{2} \left( \sqrt{ \epsilon^2_1 + \epsilon^2_2} + \epsilon_1 \right) \approx \frac{\epsilon_2}{2}
\end{gather}
\begin{gather}
k^2 = \frac{1}{2} \left( \sqrt{ \epsilon^2 + (\frac{\sigma}{2 \pi \epsilon_0 \nu})^2} – \epsilon \right) = \frac{1}{2} \left( \sqrt{ \epsilon^2_1 + \epsilon^2_2} – \epsilon_1 \right) \approx \frac{\epsilon_2}{2}
\end{gather}
\begin{gather}
n^2 \approx k^2 \approx \frac{\epsilon_2}{2} \approx \frac{\sigma}{4 \pi \epsilon_0 \nu}
\end{gather}

反射率Rの関係に戻り、上記の関係を用いると、反射率Rに関して次式が求まります。

\begin{gather}
R = | \frac{ \hat{n}-1}{\hat{n}+1} |^2 = \frac{(n-1)^2 + k^2}{(n+1)^2 + k^2} = \frac{n^2 + k^2 + 1 -2n}{n^2 + k^2 + 1 +2n}
\end{gather}
\begin{gather}
\approx 1 – \frac{4 n}{2n^2 + 2n + 1} \approx 1 – \frac{2}{n} = 1 – 2 \sqrt{ \frac{4 \pi \epsilon_0 \nu}{\sigma}} = 1 – 4 \sqrt{\frac{\nu}{\sigma} \pi \epsilon_0}
\end{gather}

この関係式は、Hagen-Rubensの公式と呼ばれ、反射率Rと材料特性の関係を示しています。主に金属は波長が長いほど反射率は高くなります。また、電気伝導度が大きいほど反射が大きくなることが分かります。

例えば、銅はレーザーで切りにくい。という話を聞いたことがあるかもしれません。これは、上記の関係があるためだと考えられます。

【基本】全反射

スネルの法則 \( \sin \phi_1 = (n_2 / n_1) \sin \phi_1 \) において、媒質1の屈折率が媒質2のそれより大きい場合(n1 > n2)、φ2の方がφ1より大き。ここで、φ2は90°以下であるから、この式を満足する最大の角度Φcは\( \sin \phi_c = n_2 / n_1\)です。この角度を臨界角と呼びます。入射角が臨界角以上では、入射光が全て反射します。この状態を全反射と呼びます。

ここで、全反射の状態(φc < φ1 < 90°)での振幅反射率を求めてみます。この時、φ2の実数解はありませんが、虚数解として

\begin{gather}
\cos \phi_2 = \pm i \sqrt{\frac{\sin^2 \phi_1}{n^2} – 1}
\end{gather}

があります。ここで、n2/n1を相対屈折率としてnで表示してあります。 このうち、正の解を、こちらで示した振幅屈折率の式に代入すると

$$ r_p \equiv R_p / A_p = \tan( \phi_1 – \phi_2 ) / \tan( \phi_1 + \phi_2) = \frac{n^2 \cos \phi_1 – i \sqrt{\sin^2 \phi_1 – n^2}}{n^2 \cos \phi_1 + i \sqrt{\sin^2 \phi_1 – n^2}}$$
$$ r_s \equiv R_s / A_s = – \sin( \phi_1 – \phi_2 ) / \sin( \phi_1 + \phi_2) = \frac{ \cos \phi_1 – i \sqrt{\sin^2 \phi_1 – n^2}}{ \cos \phi_1 + i \sqrt{\sin^2 \phi_1 – n^2}}$$

が得られます。振幅反射率が複素数で得られることから\(r_p \equiv |r_p| e^{i \theta_p}\), \(r_p \equiv |r_s| e^{i \theta_s}\)を使って表すと

$$ |r_p| = 1, \tan \frac{\theta_p}{2} = – \frac{\sqrt{\sin^2 \phi_1 – n^2}}{n^2 \cos \phi_1}$$
$$ |r_s| = 1, \tan \frac{\theta_s}{2} = – \frac{\sqrt{\sin^2 \phi_1 – n^2}}{ \cos \phi_1}$$

となります。反射率は1ですが、位相はΘp, Θsだけ変化することになります。

この位相差は、

$$ \theta \equiv \theta_p – \theta_s = \tan \frac{\theta}{2} = \frac{\cos \phi_1 \sqrt{\sin^2 \phi_1 – n^2}}{ \sin \phi_1}$$

となります。φ1=π/2, φcの時0となります。

また、極大値をとるφ1は、\(d(\tan (\theta / 2))/d \phi_1 = 0\)から、\(\sin^2 \phi_1 = 2n^2 / (1 + n^2)\)となることがわかります。この時、最大値は、\(\tan(\theta_{max}) = (1-n^2)/2n\)となります。

全反射では、p,sの位相が変化することから、遅相子を構成することができます。この代表例がフレネルロムです。