【応用】エリプソメータ

光を利用した顕微鏡には、位相差顕微鏡、微分干渉顕微鏡、ラマン顕微鏡、共焦点顕微鏡、蛍光顕微鏡などがあります。これらは、照明光を落射や透過させて用います。

斜めに照明光を照射する顕微鏡にエリプソメータがあります。これは、被測定物の膜の厚さや光学特性(屈折率等)を測定するものです。膜への光の反射と透過光を検出して測定しますので、被測定物は十分に薄く(サブミクロン)面粗さが良い必要があります。また、最下層の基板は一般には光を通さない方が好ましいです。したがって、測定できる膜厚もサブミクロンレベルとなります。

エリプソメータの構造は、レーザー光が偏光子、補償子を通り被測定物へ入射します。その反射光は検光子を通り検出器で検出されます。レーザーの入射角は一般にブリュースター角に設定されます。

原理は、被測定物に斜めにレーザー(直線偏光)を照射し、その反射光を検出器にて検出することで物性値を求めます。反射光は、被測定物により円偏光、楕円偏光や直線偏光となります。媒質1から媒質3へ反射光のp偏光成分rとs偏光成分の振幅反射率rを用いると、次の関係が成り立ちます。
$$ r_p =  \frac{N_3 \cos{ \theta_1} – N_1 \cos{ \theta_3} }{N_3 \cos{ \theta_1} + N_1 \cos{ \theta_3}} $$
$$ r_s =  \frac{N_1 \cos{ \theta_1} – N_3 \cos{ \theta_3} }{N_1 \cos{ \theta_1} + N_3 \cos{ \theta_3}} $$
$$ \tan{\psi} e^{i \Delta} = \frac{r_p}{r_s} $$
ここで、\(\psi, \Delta\)は、エリプソメータパラメータと呼ばれ、このパラメータを求めることで、被想定物の膜厚や光学特性を算出します。Nは複素屈折率であり、N=n-ik(n:屈折率、k:消衰係数)です。

検出器で検出される光強度Iは、補償子の回転角Θcによって、次のように変化します。
$$ I = I_0 (a_0 + a_2 \cos{2 \theta_c} + b_2 \sin{ 2 \theta_c} + a_4 \cos{4 \theta_c } + b_4 \sin{4 \theta_c} ) $$

検出器で検出されるこの光強度信号から、フーリエ級数ai, bi (i=2, 4)を求め、次の式からエリプソメータパラメータを算出します。
$$ \Delta = \tan^{-1} \frac{\sin^2{ \frac {\delta}{2} \sqrt {a^2_2 + b^2_2}}}{\sin{ \delta (-a^2_4 \sin {2P} + b^2_4 \cos{2P}) }} $$
$$ \psi = \frac{1}{2} \tan^{-1} \frac{\sqrt{\sin^2 { \delta (-a_4 \sin{2P} + b_4 \cos{2P})^2 + \sin^4 {\frac{\delta}{2} (a^2_2 + b^2_2)}}}}{\sin {2A} \sin{\delta \{ \sin^2{\frac{\delta}{2} \cos{2A} – (a_4 \cos{2P} + b_4 \sin{2P})} \}}} $$
ただし、$$ 0 \circ \leq \Delta \leq 360 \circ $$
$$ 0 \circ \leq \psi \leq 90 \circ $$ です。ここで、P,A,\(\delta\)はそれぞれ偏光子と検光子の角度および補償子のリタデーションです。

信号は波長依存性がありますから、レーザーの波長を変えながらエリプソメータパラメータを取得し、コーシーモデルなどの複素屈折率の波長分散モデルへのフィッティング解析を行い、膜厚と複素屈折率を求めます。

【応用】レーザーマーキング

レーザーによって、様々な材料へのマーキングが行われています。レーザーマーキングは非常に多く使われているレーザーの応用の一つです。このマーキングとは、材料に幾何学的な印をつけることのみを指すのではなく、文字や模様、意匠性の高い印も含まれます。

一般にマーキングは、レーザーマーカーと呼ばれる装置で加工がおこなわれますが、原理的には我々が使用している加工機と同じです。レーザーを集光させ、材料に変質・改質を与え、他の部分とは異なる状態とすることで、人の目などに印として認識されるわけです。

普及しているレーザーマーカーは、COレーザーやYAGレーザー、半導体レーザーが使われることが多いです。長年の技術の蓄積があり安定して動作することとメンテナンスや価格など経済的なメリットが大きいためです。

マーキングをするためには、レーザースポットを加工物に対して相対的に移動させる必要があります。この方法の一つとしては、レーザー光路の途中に2枚の鏡を置き、その鏡の角度を変更することでスポット位置を変える方法があります。この2枚の鏡とその制御機構を含めた部分をユニット化してガルバノスキャナーとして実用化されています。
また、集光レンズを加工物に対して2次元的に移動させる、いわば、プロッターのような方法もあります。構造が簡易であり、走査範囲も比較的広くとることができますので、安価なレーザーマーカーが多く採用しているようです。

レーザーマーカーへ、どのようなマーキングをするのかデータを入力する必要があります。データの形式は、各レーザーマーカーの仕様によりますが、テキストデータや、ラスターデータ、ベクトルデータなど描画データ、もしくは独自のデータ形式があります。レーザーマーカーには、各データを編集できるソフトウエアが付属している場合が多いです。

加工対象物も多岐にわたります。基本的にレーザーで変色・変質できる物質には広く応用できます。木材へのマーキングや、飲料ボトルパッケージへのバーコード印刷、金属への製造番号マーキング、玩具やお菓子までマーキングしています。

多くのマーキングは材料表面へのマーキングですが、レーザー波長に対して透明な材料へは材料内部へ直接マーキングすることも可能です。例えば、ガラス内部を変質させることで光の透過性を変更させることも可能です。これにより、透明なガラスの内部に文字や絵が浮かんで見えます。このような内部マーキングはゴミ等を嫌う工業用途でも積極的に利用されています。

レーザーでは、微細に正確に高速にマーキングできますから、今後も利用範囲は広まっていくものと思われます。

【応用】マイケルソン干渉計

レーザーを用いた応用の一つにマイケルソン干渉計があります。これは、かつて光の媒質として考えられていたエーテルを検出するために,マイケルソンが発明したものです。

原理は、図の通り、レーザー源からの光がビームスプリッタBSで2つの光路に分けられ、それぞれミラーM1とミラーM2に向かいます。光は、ミラーで反射し2つの光がBSで合わさりスクリーンもしくはフォトディテクタで検出されます。

BSで分けられた2つの光の光路の差により干渉縞が発生し、それがスクリーンで検出されます。例えば、ミラーM2がΔxだけ変位すると、干渉縞の数mと光の波長λの間に次のような関係が成り立ちます。

$$ 2 \Delta x = m \lambda $$

光の波長λが一定であるとするなら、干渉縞の数mを数えることでミラーM2の変位Δxを求めることができます。

多くの場合、光源としてHe-Neレーザー(波長632.8 nm)が用いられます。また、ミラーの変位に応じて発生する縞の変化は、内挿することでさらに細かい変位を求めることができます。干渉縞はフォトディテクタで検出され増幅後にAD変換されコンピュータなどの取り込まれ処理されます。AD変換の精度にもよりますが、16bitでAD変換すると、Δxは、

$$ 632.8 / 2^{16} / 2 = 0.005 nm $$

の分解能で検出できることになります。実際の精度は、装置のS/N比や光源の安定性のため、これほど高めることは難しいですが、それでもサブnmの精度で変位を測定できることになります。

マイケルソン干渉計は、すでに産業用途として実用化されており、微小な変位を高精度に測定する必要があるとき等に用いられています。2つのビームにより得られる2つの変位の差分から角度の検出にも用いられています。

また、光路差は屈折率の変化でも発生します。この現象を利用して屈折率を測定するためにマイケルソン干渉計の原理が使われることもあります。

【応用】レーザー冷却

レーザーは物質にエネルギーを与え、温度を上昇させるものですが、なんと冷却もできます。レーザー冷却という技術です。

具体的には、レーザー光を利用して原子の運動エネルギーを減少させる、つまり原子の速度が遅くなりますので、原子の温度が下がるということです。ただし、代表的な冷却冷媒である液体ヘリウムと異なり、気体のまま絶対零度近くまで冷やすことができます。実際は、10nKまで到達しているそうです。これは、原子などが完全に静止する絶対零度(-273.15℃)にかなり近い温度です。

原子や分子は光を吸収すると、エネルギー\(E = h \nu\)を受け取ります。この時、力(光圧)を進行方向に受けることになります。これにより原子や分子の速度が減速されるわけです。

実際には、気体原子を、その原子の吸収波長の中心から少し長い波長の光を当てます。レーザー光の吸収は、レーザーの光子と衝突して光のエネルギーが原子に移ることです。つまり、少し波長の長いレーザー光を原子にぶつけると、原子との正面衝突を繰り返し原子の速度が遅くなります。これがレーザー冷却の原理です。

この技術の応用例の一つに原子やイオンの観察があります。原子やイオンが長時間停止しているので、その内部構造を超精密に観測できるようになりました。

また、原子時計にもこの技術が使われ、精度が現在より2桁以上向上すると期待されています。

さらなる応用としては、量子性の研究(ボーズ・アインシュタイン凝縮や量子コンピュータ)が進められています。

この技術は、パワーが強く安定して連続発振できるレーザーの出現によってはじめて実用化されました。今後もレーザーの幅広い応用に期待があつまります。

【応用】長さの基準

日常生活の中でも、長さを正確に測り知ることは非常に重要です。この長さの基準は世界的に決められており、その決め方も技術の進歩によって変遷してきました。1960年までは、白金-イリジウム合金製のメートル原器が、1983年まではクリプトンランプの放射する特定波長を基準として長さの基準が決められてきました。その後、ヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザーが基準として採用されています。

長さの単位である「メートル」は「光が真空中に2億9979万2458分の1秒のあいだに進む距離」と1983年の改定時に定義されました。つまり、時間と距離を正確に知る必要があります。時間は、原子時計で非常に正確に測定されます。長さは光波干渉法により測定されますが、その基準にヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザー(波長633nm)が用いられます。このレーザーが使われている理由は、波長の安定度・確度が良好であり、小型で操作性に優れるからです。また、現在測長用干渉光源として多くはヘリウムネオンレーザーが用いられており、この校正のためにも好都合という理由があります。

ヨウ素安定化レーザーは、基本的に鏡2枚を対向させた共振器内にヘリウムネオンのレーザー増幅管に加え、ヨウ素分子を封入した吸収セルを置く構造となっています。筐体は、アルミ円筒で作られていますが、重要な部分(鏡の間隔を制御する部分)はスーパーインバーで作られています。全体の長さは40cm程度と非常にコンパクトになっています。

一般的に、レーザーは波長変化に対し出力変化はなだらかに変化しますが、ヨウ素安定化レーザーの場合、ヨウ素分子の吸収変化のあるところで微妙に急峻な変化をします。これを一定に制御することで、波長精度の極めて高いレーザー光を実現しています。このレーザーの確度(再現性)は、10-11以上であり、鏡の間隔30cmを0.000000003mm(原子直径の1/100程度)以下の精度で制御することに相当します。これを実現するために、圧電素子が使用されています。

この長さの基準となるレーザーは、産総研(旧計量研)が管理しています。1997年には、世界の基準との相互比較が行われ2×10-11の精度で波長が一致していることが確かめられました。このように、7桁の精度しかなかった白金-イリジウム合金のメートル原器、9桁の精度のクリプトンランプを経て、11桁の精度で長さの基準が管理されるようになりました。

【応用】オートフォーカス

カメラなど撮像機器を用いて観察・計測する際に、焦点を自動で合わせる機能であるオートフォーカス(AF)が利用されています。AFは、人が取得画像を確認しながら焦点を合わせるより、高速に正確に焦点を合わせることができます。そのため、微細なレーザー加工を行う分野でも広く使われるようになってきました。

AFの原理としては、
・レーザーAF
・位相差AF
・コントラストAF
があります。

それぞれの原理には、一長一短あるのですが、位相差AFとコントラストAFの場合、一度画像を取得して、その画像を処理しながら焦点を求めます。余分な装置が不要なため、簡便でコストも抑えられますが、暗闇など画像を明確に取得できない場合はうまく働きませんし、画像処理に時間がかかるという問題もあります。

一方のレーザーAFは赤外線レーザーを用い、自らが光を発するため薄暗い場所でも利用可能ですし、高速に処理できるというメリットがあります。しかし、測長用のレーザーと受光素子を付加する必要がありますので、サイズ・コストの面で不利となります。

技術の進歩とコストダウンの努力でレーザーAFは身近になってきており、スマートフォンにも搭載されるまでになりました。

レーザーの活躍の場がさらに増えてきています。

【応用】レーザーポインター

レーザーの応用の一つで、我々の生活になじみのあるものとして、レーザーポインターがあります。

レーザーポインターの例

プレゼンテーション等で自分から離れた場所を指し示すために使われます。レーザーは遠くまで真っすぐに届きますから、支持棒で指し示すことができないほど遠くの場所へも対応可能です。遠くからでも、輝点ははっきりしており、見やすく便利です。小さく軽いので片手で操作もできます。価格も数千円~と手ごろです。

ポイント例

輝点は赤色が多いですが、最近は緑色のレーザーポインターや、ポイントの形状が点だけではなく、四角だったり、矢印だったり変形するものもあります。さらに、ボールペンや、プロジェクターなどの機器を制御する機能が付加されているものもあるようです。

ここで使われているのは、半導体レーザーです。こちらのページにありますように、通常は半導体レーザーにコリメートレンズ、駆動回路がパッケージされて数cm程度の大きさです。電源をつなぐだけで動作します。

レーザーは出力によっては、人体に悪影響を与えますから、扱いには注意する必要があります。特にレーザーポインターのように、誰でも容易に入手でき使用できる機器は製造する側にも規制があります。2001年以降、1mW以上の出力を持つレーザーポインターの製造販売や輸入販売は法律で禁止されています。

【応用】CD読取ヘッド

レーザーの応用の一つに光ディスク(CD/DVD/BD)の読取りがあります。半導体レーザーからの光を光ディスクに当てます。反射した光はPD(フォトダイオード)にて検出して、得られた信号から光ディスクのピット(1/0)を読み取ります。

こちらが実際の読取りヘッドです。読み取るディスクやメーカーにより細部は異なりますが、基本的には同じ構造です。レンズ部をボイスコイルモータで微小に移動させトラックを正確に読み取るような工夫をしています。

対象ディスクにより使用するレーザー波長が異なります。これは、CD->BDに行くに従い、ピットが細かくなるため、それを読み取るスポットを小さくする必要があります。そのために、より短波長のレーザーを使うわけです。各光ディスクにおいて、CDでは780nm、DVDでは650nm、BDでは405nmの半導体レーザーが用いられています。スポット径は、それぞれ、1.7μm、1.1μm、0.5μmです。このピットの微細化により同じ円板面積で大容量化を実現しています。