【応用】レーザー非線形顕微鏡

フェムト秒レーザーは、その特異な能力で微細加工の領域に革命をもたらしました。非熱加工を高速に実施でき、高品質な加工をより身近なものとなりました。

一方で、計測の分野にも新たなブレークスルーをもたらしました。

微小な物体を正確に3次元計測する顕微鏡に、レーザー走査型顕微鏡があります。これは、共焦点顕微鏡の原理で焦点のあった高さ情報を取得します。高さ方向に焦点位置を変化させることで、3次元的な画像を高精度で取得できます。

この光源は、赤色や青色のLDが用いられる場合が多いのですが、フェムト秒レーザーw用いることで高いピークパワーで励起される非線形効果で、結像限界を超える分解能を達成することができます。

これは、多光子吸収などの非線形過程が、レーザーの強度の2乗、3乗に比例して発生するためです。これにより、ガウス分布したレーザースポットの強度分布が空間的に\(1/\sqrt{2}\)や\(1/\sqrt{3}\)というように小さくなります。すなわち、より細いプローブで物体を観察できることになります。これにより、結像限界を超えた分解能で観察が可能となります。

この顕微鏡は、光の照射面積が小さく非常に短時間の照射であるため、被測定物に影響をあまり与えないというメリットを活かして生きた生物や細胞等の観察につかわれます。また、波長の長い光を使うことも可能ですので、より深い位置の観察も可能となります。

フェムト秒レーザーは、技術開発が進み、手軽に利用できるファイバーレーザーなどが入手できるようになってきています。今後、さらなる活躍が期待されます。

【応用】Deep UV レーザー

レーザー微細加工を行う点から、レーザーの仕様を見たときに、重要な仕様の一つに平均出力があります。これは、加工の効率に直接影響を与えると考えられるためです。加工において、その効率というのはコストに直接反映されるため非常に重要な値です。

また、レーザーの場合の加工性は、波長にも依存します。なぜなら、波長によって材料へのエネルギー吸収性が異なり、それが直接加工効率に影響を与えるためです。

レーザーの波長は、基本波(近赤外)から2倍波(可視)、3倍波(紫外)というように短波長化が進んできました。近年では、さらに進み、4倍波(Deep UV)の産業応用も視野に入ってきています。あるレーザーメーカーは、平均出力60W@515nmのレーザーを元に平均出力20W@257.5nmのピコ秒レーザー(パルス幅1.5ps)を実現したとの報告があります。

このように、短波長化へ進むモチベーションの一つが、樹脂の微細加工です。樹脂は化学的な反応も寄与し、とくにUV領域の波長が多用されます。

近年、ホットな話題の5G通信用の基板にはポリイミドではなく、より誘電損失の少ない樹脂が使用されるようです。この樹脂は、3倍波のレーザーでも熱影響が大きく良好な切断が得られないらしいです。そのため、より吸収性の良い短波長の4倍波のレーザーを利用することを検討しているようです。

実際、この4倍波のDeep UVレーザーを用いた切断実験では、厚さ200µmという、微細加工にしては厚めのフィルムに対しても良好な切断ができたとの報告があります。

さらに、別の応用としてシリコン基板への表面処理なども検討されているようです。

このように、将来性が期待されるDeep UVですが、その特性のため、特殊は光学系が必要となったり、光学部品の寿命等の課題も浮き彫りになってきています。

このように、新しいニーズによって、それを実現する基盤技術もどんどん進化していきます。

室温・大気雰囲気でのレーザー金属成膜

新規開発中のレーザー金属成膜には、
既存のレーザー成膜技術にはない、次の5つの特徴があります。

1.大気雰囲気での成膜が可能。
   当然、技術的には、真空雰囲気で成膜することも、ガス置換した雰囲気での成膜も可能。
2.マスクレスで線状の成膜が可能。
   成膜パターンは直線でも、曲線でも可能。
3.金属であれば、純金属(銅など)だけでなく、合金(身近なところでSUS)でも成膜が可能。
   膜組成比は評価できていませんが、条件によると思われます。
4.基板加熱不要で成膜が可能。
   成膜後、水道水と界面活性剤で洗浄しても膜が剥離しません。
   一例として、幅50μm程度のライン状成膜部分でのテープ剥離テストでも膜剥離しません。
5.透明であればガラスでもアクリル板でも成膜可能。

例えば、下の2枚1組の画像はスライドガラスに「市松模様」を室温、大気雰囲気下でマスクレスでレーザー成膜したものです。
右上の画像に、強めの照明を照射して、反射光を強調して撮影した画像が左下の画像です。

下の画像は、上に示した市松模様のパターンが変わる部分を拡大観察した画像です。

上記のようなパターンは、直線を任意のパターンでマスクレスで成膜したものです。
同様に、曲線パターンも成膜可能です。
下の画像は、幅約50μmの銅の膜を同様の方法で、スライドガラス上に円形状に成膜したものです。
もっと複雑なパターンも可能です。
更に細い成膜なども、今後、ご紹介していきたいと思います。

検討すべき項目はまだありますが、将来的には、アンテナ(5Gなど)や、小型のセンサーデバイスなどへの応用が期待できるかもしれません。

【応用】レーザー曲げ加工

レーザーは物体に称されると熱源として働くことができます。一般に物体が加熱されると、熱による応力が発生してひずみます。この現象をうまく利用すると曲げ加工を実施することができます。このような加工方法はレーザーを応用した塑性加工の一種で、レーザー曲げ加工(レーザーフォーミング)と呼ばれます。

この技術は特に金属材料へ適用されます。金属へ溶融が起きない程度の温度となるようにレーザーを照射します。この時、レーザー照射位置は高温となるため、金属材料が膨張します。照射をやめると冷却され、反対に収縮します。

この原理を上手く応用すると、ひずみの応力で材料を曲げることができます。実際には、材料に対してレーザー照射位置を走査することで、直線状の応力ひずみが発生し材料が直線で曲げられます。レーザーを照射する直線を平行に少しずつずらすことで材料をカールさせることもできます。さらに、円状にレーザーを走査することで円錐形状を実現したり、自由曲線による局面形状にもできます。

レーザーフォーミングは、金型が不要な加工方法であるため、多品種少量生産にも適しています。また、過度な応力を加えないため、材料を破損させることもないようです。

使用されるレーザーは、CO2レーザーやファイバーレーザーです。平均出力が数十W程度のレーザーが用いられます。材料やレーザーの条件によりますが、加熱部は数百度(<千度)となります。熱によるひずみを利用した加工のため、レーザーを照射する材料表面と裏面で温度差をつけるような加工条件に設定する必要があります。加工条件んを最適化することで、折り曲げ角度の制御ができます。

ガラスに微細な金属ラインをレーザーで成膜~装飾・アクセサリーなどへの応用とか?~

 透明なガラス基板に描くこと(成膜すること)微細な金属の線をレーザーを使って成膜し、
 下の動画1のように、市松模様の反射デザインをガラス面に形成することができます。
 尚、サンプルの作成は室温、大気雰囲気で実施しています。

 動画1での、市松模様デザインのサンプルは、左側の薄く見える四角形の部分です。
 1辺20mmの四角形の中に、1辺5mmの四角形16個で構成されています。
 そして、それらが、幅0.07mmの銅の膜の配列で構成されています。
 (実際のパターンは、画像1の観察画像参照)

 注意)動画には、ノイズ音として、加工装置などの音が少し入っています。
    消音かボリューム小さめでご覧ください。

動画1:ガラス基板にCuの微細ラインで市松模様を成膜

 DXFファイルなどから、パターンを入力すれば文字や絵(曲線)を描くことができます。
 レーザーでの成膜ですので、パターンマスクは不要、マスクレスでの成膜です。
 描ける範囲(面積)の制限はあります。
 
 一般に、印刷などでも、金属光沢を出すことができます。
 ただ、この方法では、実際の金属材料での反射という点も特徴の一つです。

 紹介した動画は、銅(Cu)でガラス基板(一般的なスライドガラス)上に成膜されています。
 ほかに、成膜材料としては、ステンレスでも同じ様に描画できます。
 成膜基板は、透明なアクリル板でも構いません。

 実際の見た目は、光のあたる角度で反射の様子が変わります。
 また、成膜材料の違いでも、反射の色合い自体も変化します。
 そのため、デザイン次第で、装飾品・アクセサリーなどにも利用できそうです。

 画像1は、動画1で示したパターンの一部分の観察画像です。
 幅70μmの銅のライン成膜と空白の幅が周期的にレーザーで成膜されています。
 もちろん、パターンの方向や間隔、直線or曲線などは自由に変えることができます。

【応用】次世代超大型望遠鏡(TMT)

次世代超大型望遠鏡(Thirty Meter Telescope: TMT)は、国立天文台が日本、米国、カナダ、中国、インドによる国際協力により進める大型望遠鏡建設計画です。既存の8m級の望遠鏡による研究をより大きく発展させることができると期待されます。2022年の本格運用を目指してプロジェクトが進められています。

このプロジェクトでは、プロジェクト名になっているように、口径30mの主鏡をもつ超大型の望遠鏡を建設します。これにより、従来の8m望遠鏡とくらべると解像力は約4倍(補償光学技術を含む)になり、集光能力は10倍以上となります。

この主鏡は、ガラスセラミックス製で、対角が1.44mの六角形をした鏡を492枚組み合わせることで実現されます。わずかに形状の異なる82種類の非球面鏡を6枚ずつ使用して主鏡を構成します。精度のよい観測をするため、鏡の表面粗さは2nmと非常に小さくなっています。

大気のゆらぎによる観測誤差を低減するため、赤外線による観測を行い、さらに、補償光学技術が用いられます。これにより宇宙から観測する宇宙望遠鏡以上の解像度を実現します。

この望遠鏡は、すばる望遠鏡と同じく、ハワイ島のマウナケア山頂に設置されます。標高4,200mの高地は世界中でもっとも天体観測に適している場所と言われています。既存のすばる望遠鏡との連携による新たな発見も期待されます。

この望遠鏡が完成すると太陽系外惑星をより詳しく知ることができ、生命が存在する新たな惑星の発見ができるかもしれません。また、宇宙の起源を解き明かす発見があるかもしれません。

こちらのサイトには、望遠鏡のギャラリーがあります。

透明アクリル板に金属(銅)をレーザーで成膜してみた。

 市販の透明アクリル板に銅を成膜して、文字とQRコードを描いてみました(画像1)。
 大気圧雰囲気、基板無加熱でマスクレス成膜です。

 成膜後に、水道水+界面活性剤で、指で擦りながら洗浄しました。
 その後に、ティッシュペーパーで拭き上げ処理をしても膜剥離しませんでした。
 ちなみに、画像2も同様の後処理をしています。
 また、簡易的なテープ剥離テストでも、膜剥離はありませんでした。

 今回の例では、文字を形成する細線の幅は約0.1mmです。
 
 光沢感を強調する為に、掲載画像では、サンプルに白色照明をあてています。
 画像1では、2パターンの色合いを示しています様に、ある程度の色合いの制御も可能です。

 画像2でも、アクリル板に銅を成膜した例を示しています。
 こちらは、手でサンプルのアクリル板を持ち、指で曲げています。
 繰り返し曲げる動作をしても、膜が剥離することはありませんでした。


 これらの成膜には、パルスレーザーを使用しています。
 但し、所謂、パルスレーザーデポジション(PLD)ではありません。
 この成膜方法は、PLDとは異なる考え方に基づいた成膜方法であり、現在、開発を進めています。
 
 今のところ、成膜可能な基板は透明ガラス、透明アクリル板ですが、その他の基板材料も検討中です。
 また、成膜可能な材料は、金属ならば対応可能と思われます。

 加飾、アクセサリー、ロゴ、コード(QR,JAN,etc)などへの利用可能性があると思われます。
 

スライドガラスに細い金属膜を成膜して、文字や図を書いてみた。

 こういうものを描いてみました(画像1)。
 大気雰囲気(=真空中ではない)、且つ、
 室温(=基板加熱無し、雰囲気加熱無し)でスライドガラスに描いています。

画像1の日本地図・文字は、細い金属薄膜で形成されています。
文字部分の線幅は、約0.05mmです。

これらの文字・パターンは、“細い薄膜”で形成されています。
しかし、パルスレーザーデポジション(PLD)による成膜ではありません。
また、ガラス基板へのマーキング加工でもありません。
英字で“Printing”と成膜していますが、印刷でもありません。つまり、インクではない。
適当な表現が見つからないので、“Printing”にしていますが、実質的には「成膜」プロセスになります。

特別な洗浄などはしていない普通のスライドガラス基板上に、レーザーを使用して、描いたものです。
どんなパターンの線も、事前にプログラムしておけば、マスクレスで描くことが可能です。

基本的には常温常圧雰囲気で作成できます。
原理的には、真空中でも成膜可能です。

膜の密着力について。
大気雰囲気で成膜していますが、普通に、水洗いしても、テープで剥離させようとしても剝がれたりはしません。
画像1は、ガラスに成膜した雰囲気をお伝えする為に、指でガラスを持っている画像を撮っています。
画像2は、画像1と同じパターンです。寸法イメージをお伝えする為、再掲しています。

ちょっとしたアクセサリーや、おもちゃ、ロゴ、QRコード、バーコード
などに使えるかもしれません…が、利用方法は、目的次第ですね。

ちなみに、今回の作成例では、金属膜が成膜されているのは、ガラス裏面です。
ガラスが透明なので、表面に成膜されているようにも見えますね。

裏面に成膜するメリットの一つは、ガラス表面が汚れても成膜パターン自体は傷つかず、汚れないことです。

おわりに、色の濃淡も条件次第で制御できることを示しておきます。

画像3は濃淡制御をした例です。
上段は薄め、下段は濃いめの文字になっていることが分かりますね。

“小さな”フレキシブルディスプレイや、ウェアラブルデバイスに応用できるかな? ~ポリイミドフィルムの微細加工~

 ポリイミド製のフィルムはフレキシブルデバイスや、ウェアラブルデバイスの基板として利用されることもあるようです。
 見た目は、大抵、薄茶色~茶色です。最近では、透明タイプも開発されているようです。
 フィルムの厚さは、数十μm~百数十μm程度のものが多いです。

 レーザー加工では、そのような材料の加工も得意(!?)です。
 つまり、数十μm程度の薄めの素材で、やわらかく、熱変性しやすい材料などの加工です。
 例えば、下の写真(画像1)のような加工もできます。
 画像右下の目盛り(50μm)を見てもらえれば分かるように、とても小さいです。

 画像1は、厚さ0.05mmのポリイミドフィルムに、試し加工したものです。
 これは洗浄していませんが、もし洗浄できれば、もっと見た目が美しくなったかも?
 逆に言えば、加工による焦げ等は、ほとんど無いとも言えるかもしれません。
 大きさは、楕円の長軸(楕円形の横方向の長さ)が約0.6mmです。
 中央の円形は直径0.16mm程度です。
 両側の2つの円形は直径0.07mm程度です。
 
 ちなみに、画像1の形状は、もっと大きな面積のフィルムから切り出したものです。
 画像2は、切り出された側、所謂「抜け殻」フィルムを撮影しやすいように、適当に切り出したものです。
 画像1は、楕円形1個ですが、実際には、90個加工したうちの1個だったということです。

ついでに、違う形状も、加工してみました(画像3)。

 音叉形? 馬蹄形?
 カーブしているところは半径0.05mm程度、線幅は0.04mm程度です。
 この大きさになると、指でも、ピンセットでも持てません。
 取り扱い注意です。乱暴に扱うと折れてしまうので。
 このポリイミドフィルムは試し加工として使用した材料なので、汚れが目立ちますね…。 
 ちなみに、この形(画像3)を切り取られた側のフィルムは画像4のような状態です。

【応用】フィゾー干渉計

レーザーを応用した干渉計の一つにフィゾー干渉計(Fizeau interferometer)があります。これは発散光をうまく用いて大面積を一度に正確に測定できる優れた干渉計です。

基本的な原理は、下図のように、光源からの発散光を用います。発散光はコリメータレンズで平行光に変換され一部の光を通す参照面に進みます。一部の光は参照面で反射します(緑線)。この参照平面は、オプティカルフラットとも呼ばれ基準となるため非常に高い平面度を持っています。他方は参照面を透過して被測定物へ進み、そこで反射します(赤線)。両方の光は重なり合い、コリメータレンズで集光されます。集光された光はビームスプリッターで45度方向を変えられ、検出器に進みます。この重なり合った光は、参照面と被測定物面との光路差で干渉し、強め合ったり(明線)、打ち消しあったり(暗線)します。この違いを検出器で検出することで、参照面と被測定物の形状誤差を測定することができます。

ビームスプリッターや検出器の位置が異なるなど、多少の構成の違いはありますが、基本的な原理は、この図で説明できます。また、ここでは、平面を測定する例を示しましたが、コリメータレンズ後に再度光を集光させ(キャッツアイ)そこに参照面を置くことで球面の測定も可能となります。

光源としては、He-Neレーザーなどが用いられます。参照面は数十nmという非常に高い精度で加工されています。検出器としては、CCD素子などが用いられ、専用ソフトウエアと組み合わせることで簡易な測定を実現しています。また、干渉縞を走査してより高い精度で測定を行う「フリンジスキャン」という技術もあります。測定できる面積(口径)は、測定機により、φ数十~数百mmとなっています。

このようにフィゾー干渉計は、構造が簡単でありながら、光学平面や球面を非常に高精度に測定できます。また、面を一括して測定できるために、安定した測定が行え、測定時間の短縮にもなります。これらの特長のために、多く使用されています。