【応用】Deep UV レーザー

レーザー微細加工を行う点から、レーザーの仕様を見たときに、重要な仕様の一つに平均出力があります。これは、加工の効率に直接影響を与えると考えられるためです。加工において、その効率というのはコストに直接反映されるため非常に重要な値です。

また、レーザーの場合の加工性は、波長にも依存します。なぜなら、波長によって材料へのエネルギー吸収性が異なり、それが直接加工効率に影響を与えるためです。

レーザーの波長は、基本波(近赤外)から2倍波(可視)、3倍波(紫外)というように短波長化が進んできました。近年では、さらに進み、4倍波(Deep UV)の産業応用も視野に入ってきています。あるレーザーメーカーは、平均出力60W@515nmのレーザーを元に平均出力20W@257.5nmのピコ秒レーザー(パルス幅1.5ps)を実現したとの報告があります。

このように、短波長化へ進むモチベーションの一つが、樹脂の微細加工です。樹脂は化学的な反応も寄与し、とくにUV領域の波長が多用されます。

近年、ホットな話題の5G通信用の基板にはポリイミドではなく、より誘電損失の少ない樹脂が使用されるようです。この樹脂は、3倍波のレーザーでも熱影響が大きく良好な切断が得られないらしいです。そのため、より吸収性の良い短波長の4倍波のレーザーを利用することを検討しているようです。

実際、この4倍波のDeep UVレーザーを用いた切断実験では、厚さ200µmという、微細加工にしては厚めのフィルムに対しても良好な切断ができたとの報告があります。

さらに、別の応用としてシリコン基板への表面処理なども検討されているようです。

このように、将来性が期待されるDeep UVですが、その特性のため、特殊は光学系が必要となったり、光学部品の寿命等の課題も浮き彫りになってきています。

このように、新しいニーズによって、それを実現する基盤技術もどんどん進化していきます。

【基本】光アイソレータ

光アイソレータは、一方向の光のみを伝える光学部品です。順方向の光のみを伝送し、逆方向の光を遮断しますので、電子部品のダイオードのような働きをします。

一般に光の発信源に光が入ると動作が不安定になったり、ひどい場合には損傷したりします。この部品により、戻り光によるレーザーの損傷や不安定化、情報通信のノイズ低減等が実現されます。情報通信ですと、LD、ファイバ、PDが基本部品ですが、最近では、この他に光増幅器、光カップラ、光減衰器、分波器、スイッチなど多彩になってきています。そして、この光アイソレータも重要な役割を果たしています。光アイソレータは、LDとファイバの間に設置されます。

原理的には、磁性体ファラデー素子で光の進行方向により偏光方向が変化する現象を利用しています。一般的に、ファラデー回転子を偏光方向の異なる偏光子で挟んだ構造となっています。ファラデー回転子の周りには円筒形の磁石があり、光の進行方向に磁場をかけています。この光アイソレータには、透過する光が直線偏光の場合に利用できる偏光依存型と、偏光によらずアイソレーションできる偏光無依存型があります。

偏光依存型素子の場合、順方向に進む直線偏光の光が偏光子を通り、磁界の加わったファラデー素子で偏光方向が変化されます。その偏光方向の光が透過する方向(45度)に置かれた偏光子によって光は透過します。逆に、逆方向の光は偏光子を透過後にファラデー素子により順方向と反対方向へ偏光が回転させられ90度の角度となり、次の偏光子を通過できません。この原理により、逆方向の光の遮断が行われるわけです。

偏光無依存型素子の場合、複屈折の原理を用いて逆方向の光を遮断します。

光アイソレータで必要な特性としては、逆方向の光に対して損失が大きいこと、反対に順方向の光に対して損失はなるべく小さい必要があります。また、実用上は、小型・低コストが望まれ、温度係数が小さいこと、飽和磁界が少なくて済むことなど、様々な要求があり、その材料の選択も重要な要素です。

ファラデー素子として用いられるのは、YIG(イットリウム鉄ガーネット)や希土類磁性ガーネットR3Fe5O12などの磁性薄膜です(Rは希土類)。Rを磁気光学材料Biに置き換えたタイプもあります。長波長の光に対しては、これらの素子が有効ですが、短波長では吸収が大きいという欠点があります。この欠点を補うために、最近では希薄磁性半導体を材料として用いる場合もあります。

デバイス形状としては、表面実装で基板に固定できるタイプや、同軸状の筒で固定するタイプなど、用途に応じた形状として提供されているようです。

これからの情報通信社会において、より高速、高安定な通信に必要不可欠な光学部品です。

【基本】単結晶の製法

レーザーを扱っていると、様々な結晶を利用します。その製法は、大きく溶液法、溶融法、気相法、固相法に分けられます。

1. 溶液法

水溶液法は、水溶液を加熱濃縮後に冷却して単結晶を生成する方法です。イオン結晶やハロゲン化銀に使われます。

水熱合成法は、オートクレーブ中の高加圧下で単結晶を育成します。常温常圧で水に溶けない物質の生成も可能であるため通常得られなような物質の合成が可能です。人工水晶やPZT薄膜などに利用されています。

フラックス法は、高温で溶解している低融点溶剤(フラックス)に溶質を溶解させ、フラックスの蒸発や冷却により結晶を析出させる方法です。装置が簡便で実験等を簡単に行える方法です。

2. 溶融法

ベルヌーイ法は、酸化物粉末を酸素・水素炎中に落下、溶融させ、種結晶がついた結晶受棒へ落とします。落下した溶液が冷却・固化して結晶となる製法です。

チョクラルスキー法(CZ法)は、軸の先に種結晶を取り付け、先端を溶液に接触させ、互いに反対方向に回転させながらゆっくりと引き上げることで結晶を生成する方法です。

ブリッジマン法(B法)は、加熱容器に粉末原料を入れ、加熱溶融させ徐々に材料を降下させ、冷却・固化することで結晶を得る方法です。

浮遊帯溶融法(FZ法)は、種結晶(多結晶)を付けた棒を垂直に設置し、軸を回転させながら加工させる間に部分的に集中加熱して単結晶化していく加工方法です。

3. 気相法

昇華再結晶法(PVT法)は、蒸気圧の大きい物質を昇華、再結晶させることで単結晶を得る方法です。大きな結晶ができない欠点があります。大型の基板への結晶成長にも対応できます。

化学輸送法(CVT法)は、密閉容器内の高温部に多結晶体材料を置き、気化させます。気化化合物は低温部に輸送され冷却され再結晶化する製法です。比較的大型で高品質の結晶を得られるとされています。

化学気相成長法(CVD法)は、気相化合物を原料として、反応させて蒸気圧の低い化合物として単結晶を析出させる方法です。基板の上に単結晶薄膜を形成するときに利用されます。

4. 固相法

固相反応法は、粒成長現象を利用して原材料を溶融することなく直接単結晶を生成する方法です。多結晶体を加熱すると結晶粒子の中で結晶が周囲の微細な結晶を併合していき成長する現象を利用しています。フェライトの製造などに利用されています。

ゾル・ゲル法は、セラミック粉末の合成方法の一種で、溶液から加水分解、縮重合を経てゲル状の物質にし、熱処理をして最終製品を作る方法です。低温で化学的に均質な多成分系のセラミックスができるようです。

【基本】フラッシュランプ励起レーザー

今では、あまり使われなくなったかもしれませんが、従来からフラッシュランプによってレーザー媒質を励起し、発振させるレーザーが多用されていました。繰り返し周波数は低いものの、ナノ秒程度の短パルスレーザーを構築でき、高いパルスエネルギーを扱ることから、特に加工の点で有利で、工業的にも多くの分野で使われており成功したレーザーの一つではないでしょうか。

レーザー媒質としては、Nd:YAGやNd:YVO4といったネオジウムドープの結晶です。この結晶の吸収スペクトルは、急峻なバンドとラインからなっています。それに対して、幅広い連続波長(160~1000nm)をもつフラッシュランプで励起するわけですから、非常に効率は低いです。

そのため、大部分が熱となり放出されます。この熱により、熱レンズ効果でビーム品質の低下等が問題となります。加工応用の場合、このビーム品質低下が波長変換の効率低下や加工品質の低下に直結するという問題もあります。そこで、冷却が必要となります。電力の消費と水冷の手間というデメリットが生じていたわけです。

近年は、この励起光をLDに置き換えたDPSS(Diode Pumped Solid State)レーザーが主流となっています。LD波長もある程度は調整できるため、より効率の良いレーザー発振ができるようになっています。

【基本】光ファイバー

光ファイバーとは、透過率の高い材質で作られた光伝送路です。材質としては、性能と経済性・生産性を考慮して石英やアクリルなどの樹脂で作られています。形状は、細い繊維状となっており、中心部のコアの周囲にクラッドと呼ばれる少し材質の異なった部分の外径125µmの同心円形状、さらに外側にはφ250µmの被覆があり内部を保護しているタイプもあります(ファイバ素線)。コアの屈折率はクラッドより高くなっており、全反射や屈折を利用することで光を伝搬することができます。

光ファイバの特長として、下記があげられます。
・低損失
・広帯域
・低電磁ノイズ
・軽量

構造で分類すると、マルチモードファイバ(MMF)、シングルモードファイバ(SMF)、ダブルクラッドファイバなどがあります。

マルチモードファイバは、コア径が約50µmや62.5µmと大きくファイバー内を光が進むときに複数の経路があるタイプです。コアの屈折率が一定のステップインデックス(SI)型と屈折率が半径方向に変化するグレートインデックス(GI)型があります。伝送速度が遅くなるためSI型は光のパワーを伝送する場合に、GI型は短距離情報伝送に使用されます。

シングルモードファイバは、コア径がφ9~10µmと小さく通信用に多用されています。コア径が小さく、光が直線的に進むため、多くのパルスを正確に送ることができます。

ダブルクラッドファイバは、直径の異なるコアが同心円状に2つあり、ファイバーレーザーなどに利用されています。

ファイバの材質は、石英、他成分のガラス、フッ化物、カルコゲナイト、樹脂などがあります。それぞれ、特徴がありますので、用途に合わせて選択することになります。伝送に適する波長も材質によって決まります。

適した波長は、石英ファイバは0.3~2µm、他成分のガラスファイバは0.5~1µm、樹脂ファイバは0.5~1.6µm、フッ化物ファイバは0.4~5µm、カルコゲナイトは2~9µmとなります。

ファイバを評価する指標には、以下のようなものがあります。

・損失:光がファイバを通過すると徐々に減衰しますが、その程度のことです。
・伝達帯域:通常、多くの情報を一度に流したいので、その速度を示す帯域が重視されます。
・カットオフ波長:光を伝達/非伝達の境となる波長のことです。
・開口数(NA):光を入射できる最大の角度のことです。

光ファイバの用途としては、上にあげたように光通信用途が圧倒的です。通信は、銅線を用いたDSLが主流でしたが、近年はその速度や安定性から光ファイバーが用いられることが非常に多くなりました。また、車載などの情報ネットワーク、照明、センサ、FA機器に用いられます。レーザー産業では、ファイバーレーザーにも用いられています。

室温・大気雰囲気でのレーザー金属成膜

新規開発中のレーザー金属成膜には、
既存のレーザー成膜技術にはない、次の5つの特徴があります。

1.大気雰囲気での成膜が可能。
   当然、技術的には、真空雰囲気で成膜することも、ガス置換した雰囲気での成膜も可能。
2.マスクレスで線状の成膜が可能。
   成膜パターンは直線でも、曲線でも可能。
3.金属であれば、純金属(銅など)だけでなく、合金(身近なところでSUS)でも成膜が可能。
   膜組成比は評価できていませんが、条件によると思われます。
4.基板加熱不要で成膜が可能。
   成膜後、水道水と界面活性剤で洗浄しても膜が剥離しません。
   一例として、幅50μm程度のライン状成膜部分でのテープ剥離テストでも膜剥離しません。
5.透明であればガラスでもアクリル板でも成膜可能。

例えば、下の2枚1組の画像はスライドガラスに「市松模様」を室温、大気雰囲気下でマスクレスでレーザー成膜したものです。
右上の画像に、強めの照明を照射して、反射光を強調して撮影した画像が左下の画像です。

下の画像は、上に示した市松模様のパターンが変わる部分を拡大観察した画像です。

上記のようなパターンは、直線を任意のパターンでマスクレスで成膜したものです。
同様に、曲線パターンも成膜可能です。
下の画像は、幅約50μmの銅の膜を同様の方法で、スライドガラス上に円形状に成膜したものです。
もっと複雑なパターンも可能です。
更に細い成膜なども、今後、ご紹介していきたいと思います。

検討すべき項目はまだありますが、将来的には、アンテナ(5Gなど)や、小型のセンサーデバイスなどへの応用が期待できるかもしれません。