スライドガラスに細い金属膜を成膜して、文字や図を書いてみた。

 こういうものを描いてみました(画像1)。
 大気雰囲気(=真空中ではない)、且つ、
 室温(=基板加熱無し、雰囲気加熱無し)でスライドガラスに描いています。

画像1の日本地図・文字は、細い金属薄膜で形成されています。
文字部分の線幅は、約0.05mmです。

これらの文字・パターンは、“細い薄膜”で形成されています。
しかし、パルスレーザーデポジション(PLD)による成膜ではありません。
また、ガラス基板へのマーキング加工でもありません。
英字で“Printing”と成膜していますが、印刷でもありません。つまり、インクではない。
適当な表現が見つからないので、“Printing”にしていますが、実質的には「成膜」プロセスになります。

特別な洗浄などはしていない普通のスライドガラス基板上に、レーザーを使用して、描いたものです。
どんなパターンの線も、事前にプログラムしておけば、マスクレスで描くことが可能です。

基本的には常温常圧雰囲気で作成できます。
原理的には、真空中でも成膜可能です。

膜の密着力について。
大気雰囲気で成膜していますが、普通に、水洗いしても、テープで剥離させようとしても剝がれたりはしません。
画像1は、ガラスに成膜した雰囲気をお伝えする為に、指でガラスを持っている画像を撮っています。
画像2は、画像1と同じパターンです。寸法イメージをお伝えする為、再掲しています。

ちょっとしたアクセサリーや、おもちゃ、ロゴ、QRコード、バーコード
などに使えるかもしれません…が、利用方法は、目的次第ですね。

ちなみに、今回の作成例では、金属膜が成膜されているのは、ガラス裏面です。
ガラスが透明なので、表面に成膜されているようにも見えますね。

裏面に成膜するメリットの一つは、ガラス表面が汚れても成膜パターン自体は傷つかず、汚れないことです。

おわりに、色の濃淡も条件次第で制御できることを示しておきます。

画像3は濃淡制御をした例です。
上段は薄め、下段は濃いめの文字になっていることが分かりますね。

【基本】音響光学素子(AOM)

音響光学素子(AOM : Acousto Optics Modulator)は、レーザービームの位置や強度変調を行うための電子デバイスです。電気的に制御が可能であり高速に動作するというメリットがあります。デジタル制御で光のOn/Off、アナログ信号で角度の変化をつけるという使い方もあります。

原理的には、次のようになります。結晶内でレーザーと音響波が存在するとき、音響光学効果が発生します。音響波が入った結晶は、正弦波グレーティングのように屈折率分布が発生します。レーザーがここに入ると回折が起こり、各オーダーの光に分けられます。ここで、適切な設計をすると、強度な1次回折光を取り出すことができます。多くの場合は、この1次回折光を利用します。

偏向角度(0次光と1次光の角度)は、光の波長と周波数に比例して内部の音響波の速度に反比例します。

また、音響光学素子を透過した光の波長は、音響周波数と同じだけシフトします。

実際の音響光学素子は、アンプやコネクタがパッケージ化されて販売されているものが多いようです。対応できる波長は、紫外から赤外まで幅広く、波長によって仕様が異なります。

結晶として、紫外用は溶融石英、二酸化テルル、可視広域では、フリントガラス、水晶、モリブデン亜鉛、二酸化テルル、近赤外では、二酸化テルル、フリントガラス、カルコゲナイトガラス、赤外では、ゲルマニウム、ガリウムリンなどが使われるようです。また、各波長に合わせた適切なARコーティングもなされています。

音響波を発生させる周波数帯域としては、数十~数百MHz程度が多いです。ドライバの性能にもよりますので、選択には注意が必要です。

このように、高速なスイッチングが可能で、小型で扱いやすいAOMは、様々なビームハンドリングの応用に利用されています。

“小さな”フレキシブルディスプレイや、ウェアラブルデバイスに応用できるかな? ~ポリイミドフィルムの微細加工~

 ポリイミド製のフィルムはフレキシブルデバイスや、ウェアラブルデバイスの基板として利用されることもあるようです。
 見た目は、大抵、薄茶色~茶色です。最近では、透明タイプも開発されているようです。
 フィルムの厚さは、数十μm~百数十μm程度のものが多いです。

 レーザー加工では、そのような材料の加工も得意(!?)です。
 つまり、数十μm程度の薄めの素材で、やわらかく、熱変性しやすい材料などの加工です。
 例えば、下の写真(画像1)のような加工もできます。
 画像右下の目盛り(50μm)を見てもらえれば分かるように、とても小さいです。

 画像1は、厚さ0.05mmのポリイミドフィルムに、試し加工したものです。
 これは洗浄していませんが、もし洗浄できれば、もっと見た目が美しくなったかも?
 逆に言えば、加工による焦げ等は、ほとんど無いとも言えるかもしれません。
 大きさは、楕円の長軸(楕円形の横方向の長さ)が約0.6mmです。
 中央の円形は直径0.16mm程度です。
 両側の2つの円形は直径0.07mm程度です。
 
 ちなみに、画像1の形状は、もっと大きな面積のフィルムから切り出したものです。
 画像2は、切り出された側、所謂「抜け殻」フィルムを撮影しやすいように、適当に切り出したものです。
 画像1は、楕円形1個ですが、実際には、90個加工したうちの1個だったということです。

ついでに、違う形状も、加工してみました(画像3)。

 音叉形? 馬蹄形?
 カーブしているところは半径0.05mm程度、線幅は0.04mm程度です。
 この大きさになると、指でも、ピンセットでも持てません。
 取り扱い注意です。乱暴に扱うと折れてしまうので。
 このポリイミドフィルムは試し加工として使用した材料なので、汚れが目立ちますね…。 
 ちなみに、この形(画像3)を切り取られた側のフィルムは画像4のような状態です。

【基本】偏光ビームスプリッター

一つの光線を二つに分岐させる光学素子にビームスプリッター(Beamsplitter : BS)があります。ビームスプリッターひとつをとっても、その仕様によりいくつかの種類に分けられます。

光線の偏光方向によって、分岐の方向(透過・反射)が変わるビームスプリッターを偏光ビームスプリッター(Polarizing Beamsplitters : PBS)といいます。

偏光ビームスプリッターは、光線にP偏光とS偏光が含まれていた場合、P偏光を透過、S偏光を反射させます。このように、偏光状態により光線を垂直に2つの光線に分岐させます。

コーティングとして誘電体多層膜が使われることが多く、光のロスが少なく効率よく光線を分岐させることができます。

このような特性がありますので、使用に際し、最適な波長は決まっており、通常は光を入射させる方向も決まっています。

偏光ビームスプリッターには、他のビームスプリッターと同じように、キューブ型とプレート型があり、それぞれ長所・短所があります。

キューブ型ビームスプリッターは、斜面に光学薄膜とつけた2つの直角プリズムの斜面同士を張り合わせてキューブ上にしたビームスプリッターです。このキューブ型ビームスプリッターは、光線が0°で入射しますので、光線のアライメントが容易で、透過光と反射光の光路差がないという特徴があります。また、透過光のビームシフトがなく、光学薄膜が空気に触れないため経年劣化が少ないという利点もあります。しかし、重量が大きく、大きなサイズを作成しにくく、一般的に価格が高いです。また、透過光の消光比と反射光の消光比が異なることが多いです。さらに、プリズムを構成するガラスの厚みがありますので、光線に波長分散が生じます。

プレート型ビームスプリッターは、プレート表面に誘電体多層膜などの光学薄膜を構成し、1枚で偏光ビームを分岐させることができる偏光ビームスプリッターです。基板1枚の構成のため、キューブ型と比べて軽量で比較的大きなサイズも製造でき、安価です。また、一般的に、より高い消光比や透過率、損傷閾値を要求される場合にこちらのプレート型が用いられます。しかし、透過光のビームシフトがあり、45°の角度で光線を入射される必要があるのでアライメントが多少面倒です。

このように、それぞれの型の特性をよく理解して、用途や目的に合わせて選択する必要があります。

偏光ビームスプリッターの用途としては、ランダム偏光のレーザー光線を1:1に分割したり、1つの偏光方向の光を取り出すフィルタリング用途に用いられます。

【応用】フィゾー干渉計

レーザーを応用した干渉計の一つにフィゾー干渉計(Fizeau interferometer)があります。これは発散光をうまく用いて大面積を一度に正確に測定できる優れた干渉計です。

基本的な原理は、下図のように、光源からの発散光を用います。発散光はコリメータレンズで平行光に変換され一部の光を通す参照面に進みます。一部の光は参照面で反射します(緑線)。この参照平面は、オプティカルフラットとも呼ばれ基準となるため非常に高い平面度を持っています。他方は参照面を透過して被測定物へ進み、そこで反射します(赤線)。両方の光は重なり合い、コリメータレンズで集光されます。集光された光はビームスプリッターで45度方向を変えられ、検出器に進みます。この重なり合った光は、参照面と被測定物面との光路差で干渉し、強め合ったり(明線)、打ち消しあったり(暗線)します。この違いを検出器で検出することで、参照面と被測定物の形状誤差を測定することができます。

ビームスプリッターや検出器の位置が異なるなど、多少の構成の違いはありますが、基本的な原理は、この図で説明できます。また、ここでは、平面を測定する例を示しましたが、コリメータレンズ後に再度光を集光させ(キャッツアイ)そこに参照面を置くことで球面の測定も可能となります。

光源としては、He-Neレーザーなどが用いられます。参照面は数十nmという非常に高い精度で加工されています。検出器としては、CCD素子などが用いられ、専用ソフトウエアと組み合わせることで簡易な測定を実現しています。また、干渉縞を走査してより高い精度で測定を行う「フリンジスキャン」という技術もあります。測定できる面積(口径)は、測定機により、φ数十~数百mmとなっています。

このようにフィゾー干渉計は、構造が簡単でありながら、光学平面や球面を非常に高精度に測定できます。また、面を一括して測定できるために、安定した測定が行え、測定時間の短縮にもなります。これらの特長のために、多く使用されています。

【応用】マッハ・ツェンダー干渉計

マッハ・ツェンダー干渉計(Mach–Zehnder interferometer)は、1つの光源からの光を2つに分け、その光路差(位相差)を干渉によって検出する干渉計の一種です。通常は、一方の光路中にサンプルを置き、その影響によって生じる位相差を検出します。

図のように、1つの光源からの光がビームスプリッター(BS1)によって2つに分けられます。それぞれの光はミラーによって光路を変えられ、再度ビームスプリッター(BS2)によって結合されます。結合された光は、干渉し干渉縞を形成して、検出器1もしくは2にて検出されます。

ここで、2つに分けられた光の光路差が波長λの整数倍nと等しければ、光は強め合い検出器で検出される干渉縞は明るくなります。反対に、光路差が波長の整数倍からずれると徐々に光は弱めあうことになりn+1/2倍の時に最少となり干渉縞は暗くなります。

実際には、物理的に光路長を変えるのではなく、光路中にサンプルを挿入するとそのサンプルの屈折率の差から光路差(位相差)が生じて、検出器にて干渉縞が観察されることになります。

この干渉計を構成する光源は、Ne-Neレーザー、半導体レーザー(UV~IR)などが多いようです。有効鏡径は、φ数mm~数百mmまでのものもあるようです。検出器としては、CCDカメラ、デジタルカメラ、光速度カメラなど、使用用途によって選択されます。

この干渉計は、光が到達しさえすれば、検出できるため、比較的大きな空間での利用が可能です。そのため、光学部品の精度測定、流体力学での流れの可視化やプラズマ工学や伝熱学など、気体の圧力、温度勾配の測定にも用いられます。また、最近では、量子もつれや量子暗号などでも使われるようです。

この他の干渉計にマイケルソン干渉計がありますが、光の反射を伴うマイケルソン干渉計と異なり、マッハツェンダー干渉計はシングルパスの干渉計です。

【応用】すばる望遠鏡

すばる望遠鏡は、日本が1999年に製作したハワイ島マウナケア山頂(4,200m)に設置されている巨大な反射望遠鏡です。自然科学研究機構国立天文台が運営しています。

望遠鏡の反射鏡は、大きいほうが光を集める能力が高くなりますので、観測には有利です。

主鏡の口径は8.2mmで一枚鏡としては世界最大です。望遠鏡に使用される反射鏡は1950年代から大型化が始まり、主流だった3mから徐々に大きくなってきました。世界一大きな天体望遠鏡の口径は、2007年にできたアメリカ・アリゾナ州にあるグラハム山国際天文台の11.9mですが、これは2枚の鏡からできているため、一枚鏡の望遠鏡で最大のものは、日本のすばる望遠鏡となります。

この主鏡は、超低熱膨張ガラスで作られており、厚さが20cm、重さ22.8トンもあります。表面の平均誤差が0.014マイクロメートルととてつもなく高精度にできています。

地球上から観測するためには、空気が澄んでいて、空が暗く、天候の良い日が多いことが望まれます。日本国内では候補地がなかったため、ハワイ島のマウナケア山頂が選定されました。標高4,200mの山頂の気圧は平地の2/3で、晴天が多く乾燥しているそうです。また、貿易風により雲がかかることがあまりありません。さらに、周囲に都市がないため暗く観測には最適の条件と言えます。この設置のための準備期間は20年にも及んだそうです。このような好条件のため、マウナケアには 11 ヶ国13 の望遠鏡を運営しています。

観測の成果は、ホームページのギャラリーで公開されており、どの画像も息をのむ美しさです。また、科学的にも多くの成果を上げており、今後のさらなる成果に期待できます。

【応用】ハッブル宇宙望遠鏡

ハッブル宇宙望遠鏡は、グレートオブザバトリー計画の一環として、1990年にアメリカのNASAのスペースシャトルによって宇宙空間に打ち上げられた宇宙望遠鏡です。名称は、宇宙の膨張を発見した天文学者Edwin Powell Hubbleにちなむものです。本体は円筒形状をしており、長さ13.1m、重さ11トンあります。主鏡の直径2.4mの反射望遠鏡を内蔵しており、いわゆる宇宙の天文台のようなものです。メンテナンスが必要な場合には、宇宙飛行士がスペースシャトルで乗り込み、光軸の調整や観測装置の修理、追加のカメラや分光器の取り付けなどを行ってきました。

ハッブル宇宙望遠鏡の軌道は地上約600kmにあり、大気の揺らぎがないため宇宙の微細な構造を観測することができます。大気に邪魔されないため、遠くの星を高分解能で観測できます。

稼働開始以来、多くの実績を残してきました。銀河系を取り巻くダークマターの存在を明らかにしたり、宇宙の膨張が加速しているという証拠を観測したり、ブラックホールの存在を示したりと、これまで地上からの観測では得られなかった知見を得てきました。

科学雑誌に投稿された論文は21年間で10,000件を超えることからも、成果の大きさが分かります。成果の一つとして、得られたイメージがNASAのホームページで公開されています。これらのイメージからも非常に鮮明な画像が得られていることが分かります。

ハッブル宇宙望遠鏡は、打ち上げからかなりの年月が経っています。次の宇宙望遠鏡の計画もあるようです。2021年には、その後継機としてより高性能なジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 の打ち上げが計画されているようです。

”光”の観測により、我々人類はさらに多くの発見を得ることができそうです。