【応用】X線顕微鏡

X線顕微鏡は、光源にX線を利用した顕微鏡で、X線の発見から半世紀程度しか経っていないため、比較的新しい原理の顕微鏡です。

X線が物体に入射すると、以下のような現象が起き、各性質を生かして様々な分析が行われます。

  • 蛍光X線ー>元素分析
  • 光電子ー>表面解析
  • 回折ー>結晶解析
  • 散乱ー>分光・分析
  • 吸収ー>分光・分析
  • 偏光ー>分光・分析
  • 位相ー>生体観察

小さな物体を観察するための方法として、像を拡大して観察する顕微鏡があります。光を用いて物体を観察する顕微鏡では、観察できる最小量である分解能は、使用する波長とレンズの開口数NAによって決まります。分解能は、波長λとレンズの開口数NAと定数kを用いて kλ/NA で表されます。より細かいものを観察するためには、より高い分解能が必要となりますが、この関係式から波長を短くするかNAを大きくすると良いことがわかります。

電子顕微鏡(SEM)でも、原子レベルの分解能が得られますが、真空中で観察する必要があるため、生体材料など水分を含んだ物体を生きたままの状態での観察は難しいです。

大気中でなるべく高分解能となるような装置を前提に、波長に注目したとき、物体を観察する光源としてX線のように短い波長の光を使うと分解能を非常に高められることがわかります。

X線顕微鏡は、倍率が高くなるので明るい光源が必要となります。従来はシンクロトロンの放射光が使われていたようですが、重大な問題が具現化しました。長時間利用による放射線損傷と熱などによるブレアが像に見られることです。この問題を解決するためにX線の露光時間をナノ秒まで短縮して機器への影響を最小にしています。反対に、短時間での観察を可能するため強力な光源が必要となります。そのためレーザー生成プラズマが利用されます。

生体材料を観察するために波長2.3~4.3nmが利用されます。この領域では、水分子の酸素に吸収される割合が、生体材料のタンパク質の炭素での吸収の10分の1以下であるので水を含んだ生体材料を観察できることになります。しかし、ミラーの反射率が数%程度しかないので、反射現象を利用した結像系を実現することは難しいです。そのため、X線レジストに非測定物を密着させ、その陰を観察する手法がとられます。この像を原子間力顕微鏡(AFM)にて観察します。これにより数nmの分解能が得られます。

この手法の問題は、厚い試料の観察ができないことです。そのため、X線領域で利用できる光学素子ができることが期待されてきました。また、コヒーレントな光源を実現できれば、ホログラフィの原理で立体画像の生成も可能となると考えられてきました。

1980年代の半導体製造技術の進展などにより、光学素子の実用化に弾みがつきました。同時期に、光源の研究開発が飛躍的に進みました。

これにより、徐々に使いやすいX線顕微鏡が製品化されてきました。光学部品の性能も向上し、卓上型のX線顕微鏡も市販されています。非破壊にて内部構造を高分解能で観察できるものもあります。X線を適切にスキャンすることで3次元的な像を取得し、専用のソフトウエアで立体的に可視化できるようになっています。

また、時間的に連続して像を取得することでCTを利用して4次元像も表現できるようになってきています。

このように、X線顕微鏡は、すでに実用の域に達しており、像の観察のみならず様々な分析に活用されています。

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