【基本】ポンデロモーティブ力

3次元空間で強度が一様でない振動電磁場下で荷電粒子に加えられる力のことです。原子や分子にレーザー光を照射すると、電子は光電界によって力を受け、励起されます。x軸方向に偏光したレーザー光の電界を

$$ E_c = E_0 sin \omega t $$

とすると、電子の振動のエネルギー(=ポンデロモーティブエネルギー、 ponderomotive energy)は、光強度\( I \)、周波数\( \omega \)、電子の素電荷 \( e \)、電子の質量 \( m \)を用いて、次のように表されます。

$$ U_p = \frac{e^2 E^2_0}{4 m \omega^2} = 9.3 \times 10^{-14} I \lambda^2 [eV] $$

この式から、光強度に比例して、周波数の2乗に反比例することが分かります。

電磁場が一様な場合には、電荷が一周期後には元の位置に戻ります。しかし一様でない場合には、電荷が振幅の大きい領域にいる間に働く力は振幅の小さい領域へと向かうことになります。振幅の小さい領域にいる半周期の間に働く力は、振幅の大きい領域へと向うが、その大きさは小さいです。結果として、一周期の間に働く力を平均すると電荷は振幅の小さい領域へと向う力を受けていることになります。

また、レーザー強度があまり大きくない場合には、電子の振動のエネルギーは光電界に戻されますが、レーザー強度が大きく(> \( 10^13 W/cm^2 \) )なると、非線形効果により、多数の光子を同時に吸収して電離する多光子電離が起こります。

このポンデロモーティブ力により荷電粒子の振る舞いは、以下の分野で応用されているようです。

  1. 四重極イオントラップ
  2. プラズマ加速
  3. プラズマ推進エンジン
  4. 高次高調波発生
  5. テラヘルツ時間領域分光

偏光(へんこう)って何?(3)~わかりやすい偏光~

 今回も、実験を通して偏光の確認をしてみたいと思います。

 一般的な光学の教科書には、S偏光とP偏光のについての記載が、必ずといっていいほどあります。
 そこで、偏光について、計算式などを使わずに、直観的にわかりやすく説明してみたいと思います。

 実例を示しながら、順に説明していきます。

LED照明(点灯状態)
写真1.住宅用LED照明

 写真1は、一般的な住宅のLED照明です。目視で見た通り、直線状の形状をしています。

 写真2は、コップの水面に写真1のLED照明が反射している様子です。

 写真3は、偏光サングラスを通して、コップの水面に反射しているLED照明を見ているところです。
 
 写真2と同じ程度の反射の強さに見えますよね。ここで、偏光サングラスの左右方向(長手方向)と写真の左右方向とが直交していることに注目してください。

 普通、人が使用するときは、写真3のような偏光サングラスの向きで水面を見ることはないですね。
 人の両眼は、水平方向に並んでいますから。

 写真4も、偏光サングラスを通して、コップの水面に反射しているLED照明を見ているところです。

 写真3に比べて、反射している光が弱いことに気が付かれたかと思います。
 この状態は、人が偏光サングラスをかけて、モノ、風景を見ている状態ですね。

 なぜ、反射している光は全く同じなのに、偏光サングラスを通して観察すると見え方が違うのでしょうか?

 それは、偏光サングラスを普通に使用すると、横方向(水平方向)に振動して眼に入ってくる光が通過しにくいように作られているからです。

 水面(反射面、境界面)などに光が斜めに差し込んだときの反射光は、水面に平行(水平方向)に振動する光はよく反射するのです。
 逆に、水面に垂直な面に振動する光の反射は弱いのです。このような反射率の入射角依存性は、物理現象であり、自然な状態なのです。
 
  さて、光(横波)が振動している方向と偏光フィルターの方向が一致していると、光は、そのフィルターを通り抜けることができます。偏光フィルターは、光から見ると、スリットのようなものだとイメージしてもらえれば、わかりやすいかもしれません。

 これを言い換えると、偏光サングラスは垂直方向のスリットによって、水平方向に振動する光(S偏光)の大部分を遮断しているということです。だから、人間からすると、まぶしさが軽減されることになるのです。
一方、P偏光は、S偏光と直交した光(入射面に平行な光)です。

 『偏光って何?(2)』で書いたように、光は進行方向と直交する方向に振動する横波(※)ですから、このようなことも起こるのですが、これが、レーザー加工にも影響を及ぼす場合もあるのです。おもしろい(?)ですね。

※光は、電界と磁界が直交しながら振動する横波です。
 一般に、光の偏光の話しをしているときは、光の電界成分(電気ベクトル)に着目して議論されています。

【基本】TEA-CO2レーザー

単位体積当たりのレーザー出力が大きいレーザーにTEA-CO2レーザー(transversely excited atomospheric pressure laser:大気圧横方向放電励起レーザー)があります。CO2-N2-Heの3種混合ガスを媒質とするガスレーザーで波長は10.6μmで、1気圧以上の高圧動作が可能です。

光軸に平行に対向して設置された1対の電極間に電圧を印可して放電されます。この電極は、放電領域にわたって空間的に均一な電界が得られるように設計されており、高速放電回路を用いて数マイクロ秒以下の短時間の放電が行われます。また、安定して発振させるためにコロナ予備電離機能を備えています。

放電管1Lの容積のレーザーで~20J程度のエネルギーが得られ、尖頭値はメガワット級となります。パルス幅はマイクロ秒レベルで、~1000Hz程度の繰り返し周波数をもちます。ガスの寿命も108程度と比較的長いです。

レーザーマーカー、塗装剥離、EUV生成、ワイヤストリップ、材料加工、テラヘルツイメージングなどに利用されています。また、大気中での吸収が少ないのでレーザーレーダ(ライダ)などにも使われます。

【基本】銅蒸気レーザー

銅(Cu)蒸気レーザー(Metal-vapor laser)は、発振効率が数%と高く、平均出力が200W程度と高出力な特長があります。しかし、金属を蒸気にしてレーザーを発振させるため放電開始からレーザー発振まで1時間程度の長い時間がかかります。このデメリットのせいからか、最近は固体レーザーや半導体レーザーにその役割が置き換わりつつあります。用途は限られてきており、ウラン同位体分離用の色素レーザーのポンピング光源として、その他、金属・セラミックスの微細穴加工用途、ライトショー、高速写真の光源などに利用されています。

このレーザーは、510.6nm(緑色)と578.2nm(黄色)で発振するパルスレーザーです。このレーザーのレーザー管は高温になるため、通常は、セラミックス製の放電路が用いられます。放電により1500℃以上に加熱され銅ペレットを蒸気化します。セラミック管は、モリブデンの多層反射と保温材で覆われ安定した蒸気化を実現しています。断熱として、真空断熱や熱シールドなどが用いられています。

レーザー管の大口径化、管長の増大により高出力化を図ります。口径80mm、長さ3mの巨大なレーザー管で、平均出力500W,2000時間の連続動作をしたという報告もあります。

気体レーザーの上準位が非常に高いため、励起エネルギーの一部しかレーザー遷移にならず効率が悪いのですが、銅蒸気レーザーのようなアルカリ金属が媒体のレーザーの場合、低い準位のため、少ないエネルギーでレーザー発振します。

パルス発振のための放電には鋭い立ち上がりが必要なためサイリスタなどが用いられます。これにより、高繰り返しのパルス発振ができます。また、利得が大きく、低反射率のミラーでも発振します。

銅の代わりに金を用いると312.2nm(紫外線)と627.8nm(赤色)でレーザー発振します。鉛蒸気レーザーは、732nmで発振します。また、ルビジウムの蒸気を半導体レーザーで励起、発振する例もあります。

【基本】He-Cdレーザー

He-Cdレーザーは、CWの気体レーザーの一種で、使用する放電方法によって発振波長が異なります。グロー放電を用いるものとホロー陰極放電を用いるものがあります。出力は、数十~数百mW程度です。実用化されてから数十年の実績があります。

グロー放電の場合、発振波長は441.6nmと325nmです。レーザープリンターの光源、生物顕微鏡の光源、ラマン測定などに利用されます。一方の、ホロー陰極放電の場合、635.5nm, 636.0nm, 533.7nm, 537.8nm, 441.6nmであり、白色光が得られるため白色レーザーと呼ばれることもあります。カラープリンタ、ホログラフィーの記録などへの利用の期待があります。ノーベル賞を受賞した青色発光ダイオードの研究開発でも使われました。

He-Cdレーザーの構造は、He-Neレーザーとほぼ同じですが、レーザー管の構造が異なります。内径1~2mmの放電管中に、数TorrのHeガスに対して約1%のCdが封入されています。Heは、Cdによる吸着や漏れにより徐々に減少するため、Heの自動補給装置がついています。レーザー管の中には、Cd蒸気を送り込むためのCd金属溜を陰極付近に設けます。これを270~280℃で加熱して蒸気化され、He放電中にイオン化されレーザーが発振します。これらの工夫により、出力~200mWで~5000時間程度の寿命があります。

紫外域のアルゴンイオンレーザーに比べ、高効率で寿命が長いのでCW紫外レーザーとして重宝されましたが、最近は波長変換の技術も進み、固体レーザーが多用されるようになってきています。

【基本】エキシマレーザー

希ガス原子とハロゲンガス原子の混合ガスを媒質とするレーザーをエキシマ(エキサイマー)レーザーと言います。通常、希ガス原子(He, Ne, Ar, Kr, Xe)は安定ですが、励起状態となると他の原子(Br, F, Cl)と結合して分子を構成します。このように励起状態でのみ安定に存在する2原子分子を意味するexcited dimerに由来する言葉でexcimer(エキシマ、エクサイマ)と呼ばれます。エキシマは励起状態では安定ですが、基底状態に戻るとバラバラになり原子の状態に戻ります。下位準位がなく、すぐに基底状態となるため理想的な反転分布を得ることができます。エキシマレーザーはこの現象を利用しています。

多くは、放電励起方式で発振され、1~4気圧程度の高い圧力の気体に一様な放電をさせます。この放電には高い技術力が要求されるものの、紫外線領域の高いフォトンエネルギーと高いピークパワーを高効率で得ることができ、装置を小型化できることは魅力的で、広く普及しました。

市販のものでは、出力エネルギー~1J程度、パルス幅10~30ns、繰り返し周波数~1000Hz程度のレーザーが多いようです。

最初に実現されたのはXe2レーザーと言われています。液体希ガス中に電子ビームを照射させてレーザー発振が得られました。その後、希ガスとハロゲン原子が結合した希ガスハライドが出現し高出力・高効率の紫外レーザーとしてポピュラーとなりました。

希ガスーハロゲンと発振波長を次に示します。

ArCl —- 175nm
ArF —- 193nm
KrCl —- 222nm
KrF —- 249nm
XeBr —- 282nm
XeCl —- 308nm
XeF —- 351nm

ガスや要素部品の寿命が短いという欠点がありましたが、最近ではガスの高純度化や部品の改善により、109ショット以上の長寿命化が進んでいます。

用途としては、紫外線分光の光源、光化学、レーザー微細加工、レーザーリソグラフィー、レーザーアニールに用いられています。また、レーシックなど視力矯正治療にも用いられています。

【基本】チタンサファイアレーザー

サファイア(Al2O3)にTi3+イオンをドープしたレーザー媒質を持つレーザーが、チタンサファイア(Ti:Al2O3)レーザーです。0.66~1.15μmの幅広い帯域で発振され、一つの媒質としては最も広く、波長可変レーザーとして知られています。最も効率が良いのは、800nmです。

また、媒質がサファイアであるため、硬く安定しており、熱伝導性も良いのでレーザーの実用には有利です。励起光源としては、Nd:YAGレーザーの第2高調波や、アルゴンレーザーなど高出力で安定したレーザーが用いられます。レーザー上準位の寿命が3.2μsと短いため、ランプ励起は使えません。

発振形態としては、超短パルスから連続発振まで幅広い使われ方があります。チタンサファイアの結晶と、波長選択と分散補償のためのプリズム対、可変幅スリットから構成される共振器でパルス幅11fsの超短パルスが得られた例もあります。

また、近年は広帯域にわたって分散を制御するチャープミラーなどを使うことで10fs以下のパルス幅も実現されています。理論的には、350nmある利得帯域幅からすると、3fs程度のパルスが発生できる可能性があります。

この超短パルスは、共振器内のパルス自身がレーザー媒質内部で引き起こすレーザービームの自己集束を利用したカーレンズモード同期によるものです。いったんモード同期がおこると、自己位相変調により周波数が広がり、さらにパルスが短くなり、ピーク強度が増加します。これにより安定したモード同期発振がなされます。

さらに、従来の色素レーザーに比べ平均出力が大きいという特長があります。チャープパルス増幅を用いた再生増幅器も実用化されており、mJ程度のさらに大きなエネルギーを扱うことができます。

テラヘルツ光の発生やフェムト秒分光、微細加工などの用途で用いられています。