【応用】光学とインダストリー4.0

産業技術の改革として「インダストリー4.0」が提唱され、今では広く認識されていると思います。このキャッチーなコピーは、従来は縁の下の力持ちとして表舞台に立たなかった製造技術を世間に広めるという意味だけでも重要でした。

インタストリー4.0は、データの保存・処理にクラウドを用い、デバイスのIoT、統計学的処理・分析などにより、コンピューターとロボットが密接に関係しあい、製造効率の向上を目指す概念です。

精密光産業もすでにこの概念を踏襲してモノづくりを始めています。一例としてヨーロッパで2025年までにチリ・アタカマ砂漠に完成を目指す超大型望遠鏡(European Extremely Large Telescope:E-ELT)プロジェクトがあります。その構造は、軸外し放物面の798枚の六角形ミラー(サイズ約1.5m、表面粗さ10nmRMS)からなる超大型の望遠鏡です。

そのミラーの製造工程に、まさにインダストリー4.0の概念が使われています。

CNC研削(griding)と研磨(polish)によってミラーを加工していきますが、このような巨大非球面レンズの加工では、研削中に0.02mm~1mm程度の空間周波数をもつ波が形成されてしまうという問題がありました。この”波”は、残念ながら研磨工程では完全に取り切れず、研削と研磨の中間プロセス(グローリッシュ: grolish)を加えました。

工程が増えることによるコスト増、工期の遅延が心配されましたが、これをインダストリー4.0によって解決しようと奮闘しました。これにより、除去速度16.3mm3/min、0.3μmRMS、PV3μm等を達成し、後工程の研磨により理想のミラーができました。

グローリッシュのプロセスでは、従来のCNCではなく、より高速で低コストのロボットを導入しました。確かに、精度は低下しますが、それより高速性を重視したのです。ロボットの軌跡を構築するためは、コンピュータモデルを作り、その精度を上げました。また、統計学的な設計を活用し最適なパラメータを探索しました。統計処理やデータ保存等は、クラウドを効率よく活用し、クライアント側で過負荷による効率低下を避けました。

超精密が要求される光産業は、所謂、「職人」が必要と思われがちかもしれませんが、IT技術も活用し、より進化しているようです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です