偏光(へんこう)って何?(2)~意外と身近な偏光~

 前回の『偏光って何?(1)』では、液晶ディスプレイからの光が偏光していることを、偏光サングラスで観察することにより確認しました。

簡単に前回の内容についておさらいです。

・「偏光」とは、光の振動方向がある規則性をもって偏った状態の光のこと。
・検光子(身近なものとして、偏光サングラスを使いました)で、液晶ディスプレイ画面を観察すると液晶ディスプレイが見えなくなる位置(回転角度)がある。

という点について、簡単な実験を通して、示してみました。

 ところで、『光の振動方向』って何?と思ってしまいますね。
 そこで、今回は『光の振動方向』について、ざっくりと考えてみたいと思います。

 この『光の振動方向』を理解する為、必要になってくるのが『横波』(光、電波、“水の”波、など)に関する理解です。横波と対になるものは、『縦波』(音など)ですが、偏光の話しがテーマなので、縦波についての説明は省略します。

 話しは反れますが、物理法則というものは、数式等で理解することが必要な場面もあります。
 しかし、数式だけで理解するよりも、実際の現象を通して、想像力を働かせて、素直に考えれば、直観的に理解ができることも多いです。

 光に関する物理法則も、そんな身近な発見や、気づきを通して理解が進んだ例もあります。
 光学の“歴史”に着目すると、逆に、光に関する物理法則などは、理解しやすい場合もあるかもしれません。「光学史」に関しては、色々、おもしろい話しもありますので、それらはまたの機会に。

 さて、光は、横波に分類されますが、偏光のイメージをつかむためには、この横波の概念をもっておくと都合がよいと思います。

 そこで、横波についてのイメージをつかむため、誰でもできる身近なところで実験したいと思います。
 注)広い意味での検光子としての偏光サングラスの”機能”については、『偏光(へんこう)って何?(1)』に記載しています。

 実験は、お風呂に入ったついでに、できてしまいます。
 直観的な理解を助ける実験ですので、興味がある方は試してみてください。

 実験は2つあります。

実験1)

 湯舟に入る前に、水面が静かな状態にしておきます。
 面倒なときは、洗面器のようなものにためた水でもかまいません。
 その水面に、水滴を一滴、ポタリと落としてみてください。
 水面に同心円状の波紋が広がりますね。

 水滴の落下点が振動源で、落下方向が振動方向です。
 波は、水滴の落下点を中心に同心円状に進行していきますね。
 つまり、波の振動方向と同心円状の波紋の広がる方向(=波の進行方向)が直交している状態です。
 これが、横波です。

実験2)

 お風呂に入って、指先を前に伸ばして、水面で手のひらを動かしてみてください。
 手のひらの動きに合わせて、水面が動きます。
 そして、波の進む向きは、手のひらを中心にして、前方や左右方向に広がっていきます。
 これも、波の振動方向と波の進行方向が直交している状態です。
 つまり、横波です。

まとめ)
 媒質の振動方向が、波の進行方向と垂直である波を横波と呼びます。
 ところで、水面に起きた波の場合、媒質は「水」です。
 さて、光にとっての媒質は?となりますね。
 このお話しは、また別の機会にできればと思います。
 とりあえず、今回は横波のイメージをつかむところまで。

 次回は、「光は横波」ということを踏まえて、“反射によってあらわれる偏光”について、書いてみたいと思います。    

【基本】X線レーザー

X線レーザーは、原子の内殻電子の遷移を利用してX線領域の電磁波を出すレーザーです。

代表的な反転分布発生機構として、レーザー照射時の加熱相で反転分布の生じる電子衝突励起があります。強力な短パルス光で高エネルギーを原子に与え原子の束縛電子を強電離イオン状態を作ります。例えば、強力な電離によりC5+のように束縛電子が1個だけ残ったイオンを水素(H)様イオン、電子が2個残ったイオンをヘリウム(He)様イオンなどと呼びます。このような束縛電子が励起電離状態遷移によってレーザーを発振します。

最初にレーザー利得が報告されたのは波長20.6nmのネオン様セレンレーザーです。原子番号34のSe原子から24個の電子をとったSe24+のイオンが用いられました。

X線レーザーの発振に必要な励起強度は、レーザー波長の4乗に逆比例するため、短波長では特に高いエネルギーが必要となります。また、レーザー上準位の寿命は波長の3乗に比例して短くなるので、ファムと秒程度の短パルス励起が必要です。このように、X線レーザーは、発振条件がかなり厳しいです。

発振が確認されたX線レーザーは、25イオン種(波長3.6~28.6nm)で50以上あるようです。これまでの最短波長は、3nmです。X線レーザーの輝度は1026にもなり、超大型シンクロトロン放射光装置のアンジュレーターラインで放射されるX線の輝度に比べ6〜7桁も高くなっているようです。

報告されている最大レーザーエネルギーは、波長15.5nmのネオン様イットリウムレーザーで、7mJのようです。この時のパワーは、10MWに達したとされています。

X線レーザーは、水による吸収の少ない波長領域の光を扱えるため、生きたままの生物の観察や、生体高分子の解析など、医学・ライフサイエンス分野での大きな貢献が期待されています。

【応用】光学とインダストリー4.0

産業技術の改革として「インダストリー4.0」が提唱され、今では広く認識されていると思います。このキャッチーなコピーは、従来は縁の下の力持ちとして表舞台に立たなかった製造技術を世間に広めるという意味だけでも重要でした。

インタストリー4.0は、データの保存・処理にクラウドを用い、デバイスのIoT、統計学的処理・分析などにより、コンピューターとロボットが密接に関係しあい、製造効率の向上を目指す概念です。

精密光産業もすでにこの概念を踏襲してモノづくりを始めています。一例としてヨーロッパで2025年までにチリ・アタカマ砂漠に完成を目指す超大型望遠鏡(European Extremely Large Telescope:E-ELT)プロジェクトがあります。その構造は、軸外し放物面の798枚の六角形ミラー(サイズ約1.5m、表面粗さ10nmRMS)からなる超大型の望遠鏡です。

そのミラーの製造工程に、まさにインダストリー4.0の概念が使われています。

CNC研削(griding)と研磨(polish)によってミラーを加工していきますが、このような巨大非球面レンズの加工では、研削中に0.02mm~1mm程度の空間周波数をもつ波が形成されてしまうという問題がありました。この”波”は、残念ながら研磨工程では完全に取り切れず、研削と研磨の中間プロセス(グローリッシュ: grolish)を加えました。

工程が増えることによるコスト増、工期の遅延が心配されましたが、これをインダストリー4.0によって解決しようと奮闘しました。これにより、除去速度16.3mm3/min、0.3μmRMS、PV3μm等を達成し、後工程の研磨により理想のミラーができました。

グローリッシュのプロセスでは、従来のCNCではなく、より高速で低コストのロボットを導入しました。確かに、精度は低下しますが、それより高速性を重視したのです。ロボットの軌跡を構築するためは、コンピュータモデルを作り、その精度を上げました。また、統計学的な設計を活用し最適なパラメータを探索しました。統計処理やデータ保存等は、クラウドを効率よく活用し、クライアント側で過負荷による効率低下を避けました。

超精密が要求される光産業は、所謂、「職人」が必要と思われがちかもしれませんが、IT技術も活用し、より進化しているようです。

【基本】半導体レーザー

半導体レーザーは、レーザーダイオード(LD)とも呼ばれ、小型軽量、高効率、低電圧動作、電流制御が高速変調が容易に可能等の利点から広く使われています。CD/DVDなどの記録読み出し機器の光源、レーザープリンター用光源、光通信用光源、バーコードリーダー、レーザーポインターなど、身近な機器での利用が多いです。最近では、レーダー(LiDAR)の光源にも利用されています。また、大出力のレーザーでは、加工用途にも利用されています。

構造は、異種の層が重なってできるダブルヘテロ構造となっています。GaAsやAlGaAsなど2つ以上の化合物半導体層から構成されており、中央部にバンドギャップの狭い発光層(100nm程度の活性層)があります。その上下を、活性層より少しバンドギャップの広いp型とn型の半導体層からなっています。

このpnの順方向へ電流を流すとGaAs活性層に反転分布が形成され、へき開面よりレーザーが出射されます。これは、ファブリペロー共振型の半導体レーザーと呼ばれます。レーザーを単一縦モードでより安定的に動作させるための工夫が施された分布帰還型(DFB)の構造もあります。また、量子井戸の原理を利用して、単色性が極めてよく、高速で光変調させることができる量子井戸(QW)型のレーザーもあります。

通常は、これらのように半導体基板の端面から水平にレーザーを発光するのですが、基板面に垂直にレーザーを出射する面発光レーザー(VCSEL)もあります。この構造ですと、面的に多数のレーザーを配置できますので大量のデータを伝送するときや、多くの情報を表現できるため、高速並列処理に有利となります。

半導体レーザーは、発振形態としては、CWとパルスの両方があります。発振波長は、活性層の結晶材料がもつバンドギャップとチップの共振器長で決まりますが、300~1000nm程度が多いです。出力は数mW~数kW程度まで幅広く対応しています。半導体チップは真空封入されたパッケージとなっており扱いやすいです。また、大出力のレーザーでは冷却モジュールと一体になったものもあります。安定的に出力するために、PDを内蔵し出力をモニタ・フィードバックすることで電流電圧制御できるものもあります。

半導体レーザーで手軽に扱えるようになったレーザーは、ますます活躍の場を広げています。

【基本】自由電子レーザー

自由電子レーザー(FEL:Free Electron Laser)は、自由電子と電磁場の共鳴を利用してコヒーレントな光を発生させるレーザーです。媒質によって光の波長が決まる一般的なレーザーとは異なり、電気的な操作で波長を変えることができます。軟X線、紫外光、可視光、遠赤外光まで幅広い波長を取り出すことができます。

電子ビームを供給する電子加速器、光を発生させ増幅するウィグラーまたはアンジュレータ、光共振器から構成されています。ウィグラーまたはアンジュレータは、挿入光源とよばれ、永久磁石を規則的に並べたユニットを向かい合わせ、その間を蛇行しながら電子ビームが進行していく装置です。この電子ビームが蛇行しながら進むことで、周期的に変化する横磁場により正弦波状に進行することになりシンクロトロン放射(SR)光が発生します。SR光とは、光速度に極めて近い高エネルギーの荷電粒子が、その進行方向を磁場などによって変えられた際に発生する電磁波のことです。この光を合わせ鏡で構成した光共振器内で共振させることでレーザー発振を実現します。

電子ビームのエネルギー、挿入光源の磁場の周期長、磁束密度のいずれかを変えると波長が変化します。広い波長域で連続的に波長を変化させることができ、メガW級の高出力、高効率なレーザーになると期待されています。

自由電子レーザーの原理となるアイデアは、1950年代にMotzおよびPhilipsのマイクロ波発生実験にあります。その後、1977年にスタンフォード大学で赤外域の3.4μmの波長での発振に世界で初めて成功し、1983年にはフランスで可視光650nmの発振に成功しました。

X線領域の波長のFELは、X線自由電子レーザー(XFLE:X-ray free-electron laser:) と呼ばれています。波長 0.1 nm以下を目指したXFEL発振装置は、米国 (SLAC LCLS)、日本 (SACLA)で稼働中であり、ヨーロッパでも開発が進められています。

【基本】色素レーザー

色素レーザーは、液体を媒質とするレーザーです。レーザー媒質は蛍光性有機色素をメチルアルコールなど溶媒に溶かしたものです。レーザーの励起にはXeフラッシュランプなどが使われます。色素溶液は、光共振器内でブリュースター角で膜状に噴射されています。発振波長の選択は、光共振器内に設置されたエタロン板や波長選択素子で行われます。

色素レーザーの電子状態を見てみますと、全てのスピンが対になっている1重項状態と1対のスピンがそろっている3重項状態のエネルギー準位系となっており、互いの移り変わりはゆっくりとしか行われません。また、色素は分子量の大きな複雑な分子であるため、各エネルギー順位はバンド状になっています。各遷移間は大きな吸収係数を持っているため、効率よく励起されます。基底状態に戻るときに蛍光が起こりますが、この蛍光が広いスペクトル幅を持っているため、任意の波長でレーザー発振ができることになります。

媒質である色素を変更することで発振波長を変えることができます。さらに、色素を合成することで希望の波長のレーザーを得ることもできます。現在では、500種類以上の媒質でレーザー発振できることが確認されています。

この色素レーザーで最も効率よく安定したレーザー発振ができる媒質は、ローダミン6Gといわれており、効率は30%にもなります。

色素レーザーは、他のレーザーを励起する種光として用いられることが多く、窒素レーザー、エキシマレーザー、YAGレーザー、アルゴンイオンレーザーに用いられます。しかし、比較的早く媒質が劣化することと波長可変固体レーザーの普及に伴い使用範囲が狭まっています。

【応用】レーザリンク

インターネットは、情報伝達の手段としてすでに私たちの生活に欠かすことができない技術となっています。しかし、世界を見渡すとまだまだインターネット(とくにブロードバンド)のメリットを享受できていない地域もあります。その解決策として、宇宙を利用した無線情報伝送の事業化が進んでいます。

これは、宇宙空間に人工衛星の一群・システム(コンステレーション)を構築し、その間、および衛星と地球をつなぐことで地球上の必要な地域にインターネットサービスを提供しようというものです。

この概念自体は、レーザーが誕生した1960年頃まで遡るといわれています。しかし、最初に実証されたのは、2008年に行われた欧州の衛星Terra SAR-Xと米の衛星Near Field Infrared Experimentの2つの低地球軌道衛星間でレーザー通信が行われた実験です。25秒以内で互いにロックオンし5.6Gbpsで約20分間双方向通信したそうです。

続いて、2013年にNASAがLLCD(Lunar Laser Communication Demonstration)によって月からデータを送信しました。この時の速度は622Mbpsで宇宙からの無線でのデータ速度としては高速で、技術的に大きな進展が見られました。

2016年には、最初の商用レーザ衛星間でのレーザリンクが運用されました。エアバスがSpaceDataHighwayとして、テサット社のレーザ通信ターミナルを用いて、低地球軌道上の4基の衛星によって収集された画像データを地球に1.8Gbpsで送信しました。2019年には、2期目の対地同期衛星が追加され、中継速度が向上しました。

これらの技術をさらに発展させて、ブロードバンドが未整備の地域へインターネットサービスを提供する動きもあります。SpaceX社が衛星打ち上げサービスの低価格化を実現したため、衛星を経由したインターネットサービスが目前に迫っているとの指摘もあります。

無線データ通信は、マイクロ波リンクでも実現可能です。この方式ですと、雲や霧など大気中で光信号が遮られることがないというメリットがあります。一方で、レーザは伝送帯域幅が広く、受信機を小さくでき、盗聴されにくいというメリットがあります。ただ、レーザー接続を常に維持するために相対位置を制御し続ける必要があります。

ブロードバンドを世界に届けるという目標の解決策としてFacebookはドローンを検討していたようですが、今では衛星の方にシフトしているようです。

レーザーのハードウエアは、分布帰還型(DFB)半導体レーザー+増幅器の1550nmや1080nm帯、DPSSレーザーの1064nmが使用されているようです。

技術的にも、まだまだ課題が多く、困難が伴いますが、世界の人々が平等にインターネットを使うことができれば、素晴らしいですね。

【基本】He-Neレーザー

He-Neレーザーは、安定的に発振でき、長寿命で、小型化が可能で扱いが容易という利点から現在は非常に広く使われているガスレーザーです。

Neの中性原子の励起準位から遷移するスペクトル線は632.8nmの赤色で安定的に連続発振し、ビーム形状は回折限界に近いTEM00に近く、コヒーレンスが良いという特徴があります。装置の基本的な構成は、HeとNeの混合ガスを封入したガラス放電管、励起用の電源、光共振器です。光共振器の反射鏡が放電管の内部にあるものを内部鏡型と呼ばれランダムな偏光であり低出力です。一方、反射鏡が放電管の外部にあるものは直線偏光をし大出力を得ることができ、外部鏡型と呼ばれます。ガラス管内部には、~90%程度のHeガスと~15%程度のNeガスを約1tollの圧力で封入してあります。

発振の原理は次のとおりです。放電管のアノードとカソードの間に電圧を印可してプラズマを発生させると、He原子とNe原子はエネルギーの高い状態に励起されます。このうち、He準安定準位の励起電子は、Ne原子に内部エネルギーを与え、He原子は基底状態に戻ります。Neが下準位に落ちるときに632.8nmの光を出します。実は、この他にも543nm、594nm、612nm、および1523nmの光も出しますが、非常に弱く、得られる光の大部分は632.8nmです。

He-Neレーザーは、計測用光源、光軸調整、カメラ照明、実験用光源として多用されています。使用される用途からも大出力は不要であり、~数百mW程度の出力のレーザーが多いようです。