【応用】レーザーの医学応用(1)

レーザーの生体への作用

レーザーは工業用途のみならず、医学の分野でも用いられています。その応用は、狭義には治療と診断(計測)ですが、広義には光通信や情報の記録、微細加工なども含まれるかもしれません。

ここでは、狭義の治療と診断に絞って、レーザーのどのような特長が、どのように活用されうるかという光学的特性を見ていきます。

まず、医学では扱う対象は生物(生体)です。そのため、生体の光学的特性を見ていきます。生体に強度I0の単色平行光を入射するとき、生体が均一な吸収体であれば、入射位置から深さxの光の強度Iは、吸収係数\(\mu_\alpha\)を用いて、次式であらわされます。

$$ I = I_0 exp(- \mu _\alpha x) $$

しかし、実際には生体内部に様々な物質があり、散乱体とみなした方が良いです。そこで、散乱による減衰係数を\(\mu_s\)として、総合的な減衰係数\(\mu_t\)を用いて光の強度は次のようにあらわされます。

$$ I = I_0 exp(- \mu _t x) $$
$$\mu_t = \mu_\alpha + \mu_s $$

さらに、生体表面での光の反射もあります。その反射率をRとして、光の強度は次のようにあらわされます。

$$ I = I_0 (1-R) exp(- \mu _t x) $$

光がある単一粒子に照射されたとき、その散乱光はあらゆる方向へ進みます。進行方向に対する光の角度を散乱角と定義するとき、その角度が90度より小さい(光が進む方向へ散乱する)ときを前方散乱といいます。反対に90度より大きい(光の進む方向と反対)ときを後方散乱と呼びます。ぞれぞれ、非等方散乱パラメータgを用いて、g=1, g=-1とあらわします。等方散乱の時は、g=0です。一般に、生体内ではg=0.8~0.97と言われています。

この散乱は、一度で終わるものではなく、何度も繰り返し生体内をめぐっていきます(多重散乱)。この光が吸収され熱に変換されたり、生体分子を励起したり、様々な相互作用が起こります。しかも、均一の物質ではないため、複数の減少が複雑に発生することになります。

生体の主成分は水で、約70%と言われています。この水は600nm以下の波長帯で吸収が増大することが知られています。また、生体内にはタンパク質も多く含まれています。このたんぱく質は紫外域で大きな吸収を示します。このように生体での光の波長に対する吸収をプロットすると、700~1500nm付近で吸収が比較的小さくなります。このため、この帯域を「生体の分光学的窓」とも呼ばれています。

このように、生体の場合には、その生成によって光学的な特性が異なります。つまり、組織の種類によるところも多いです。内蔵のような軟組織と歯や骨のような硬組織でも異なります。下の図には、軟組織での光の深達長を光の波長ごとに模式的に示してあります。

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