【応用】光ピンセット

光ピンセットは、光の力学的な作用を利用して、物体をマニピュレーションする方法ないし、装置です。操作する対象は主に液体内にある光に対して(ほぼ)透過なマイクロメートルオーダーの物体です。稀に空気中で微小物体を操作する研究も見受けられます。

光ピンセットは、被操作物体に集光光を当て、その力学的な作用である放射圧(光圧)によって、操作する技術です。

この放射圧は、17世紀にニュートンによって予測され、19世紀にマクスウエルによって定式化され、レーザーが実用化されてきたことにより、この微小な力の研究と応用が進められてきました。

主となる応用分野は、生物学です。微生物や細胞の操作などに広く使われるようになってきているようです。

光によって発生する力「光圧」は、電磁波中の誘電体に生じる双極子によって起こる電磁界の歪から計算することができます。電磁界のもつ単位体積当たりの運動量Pは、ポインティングベクトルS,物質中の光の速さvを用いて、次式であらわされます。

$$ P = \frac{S}{ v^2 }$$

力学的な力Fは、運動量の変化によって生じますので、次式で求められることになります。

$$ F = \frac{\Delta P}{ \Delta t} $$

これらより、光の入射強度をIとすると、力は次の式で表されます。

$$ F = \frac{QIn}{c} $$

ここで、nは粒子の屈折率、cは真空中の光の速さ、Qは運動量の変化の度合いに対応する無次元の定数(0~2)で効率をみなせます。

照射する光の波長が被操作対象に対して大きいか小さいかで力の発生原理が異なります。対象が波長より大きい場合はMie散乱領域として扱われ、小さい場合はRayleigh散乱領域として扱われます。

被操作対象が、光が照射されると反射・透過を何度も繰り返します。そのそれぞれの光線が力を発生させます。下図のように、光強度Iの光線が被操作対象に角度Θで入射したときの散乱力と勾配力を考えます。被操作対象が光の波長より大きいとして幾何光学的に散乱力Fsと勾配力Fgを求めると次式であらわされます。

$$ F_\xi = F_s = \frac{n_1 I}{c}\left[ 1 + R \cos 2 \theta – \frac{T^2 \{ \cos (2 \theta – 2 r) + R \cos 2 \theta \}}{1 + R^2 + 2 R \cos 2 r} \right]$$
$$ F_\eta = F_g = \frac{n_1 I}{c}\left[ R \sin 2 \theta – \frac{T^2 { \sin (2 \theta – 2 r) + R \sin 2 \theta }}{1 + R^2 + 2 R \cos 2 r} \right]$$

ここで、被操作対象の屈折率がn1、反射係数がR、透過率がTです。

全光線についての力を足し合わせることで被操作対象に働く力を求めることができます。この式をグラフ化するとわかるのですが、入射光線の進行方向と反対方向への力を発生することもできます。

光ピンセットの例としては、1064nmのNd:YAGレーザー145mWを対物レンズ(×100、NA=1.3)で集光させエチレングリコール内の直径1μmのポリスチレン微粒子をトラップした例などがあります。

Arthur Ashkinは、この研究成果により、2018年にノーベル物理学賞を受賞しています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です