【応用】原子・分子のイオン化

レーザーの特徴を使うと、原子・分子をイオン化できます。イオン化された原子・分子は、持っている電荷を増幅しパルス電圧として検出することで、その個数をカウントする研究に利用されています。

原子・分子のイオン化は、それら自身がもつイオン化エネルギーより大きなエネルギーを与えられると実現します。例えば、レーザーの1光子あたりのエネルギーは短波長レーザーほど大きいですが、その一つ、ArFエキシマレーザーでは、1光子あたりのエネルギーは、6.0eV程度です。これに対して、われわれの身近なガスは12~16eVと大きいため、そのままではイオン化できません。

そのため、次の2つの方法があります。

一つ目は、原子が吸収しやすい波長のレーザーを照射し段階を追ってイオン化する方法です(共鳴イオン化法)。この方法では、イオン化したい原子の吸収波長にあわせてレーザー波長を選択する必要があります。このため、波長可変レーザーが使われます。代表的な波長可変レーザーは、色素レーザーやチタン・サファイヤレーザーがあります。

もう一つの方法は、格子密度が非常に高いとどんな原子でもイオン化することを利用して、複数の光子を連続的に照射する方法(非共鳴イオン化法)です。この方法は、エネルギーの大きなレーザーがあれば、どんな原子でもイオン化できるというメリットがあります。実際、イオン化エネルギーが最も高いヘリウム原子(イオン化エネルギー24eV以上)でもイオン化できています。

この方法のイオン化率Wは入射レーザーパワー(P)のべき乗に比例することが知られています。イオン化に必要な光子数をnとすると、

$$ W \propto P^n $$

となります。しかし、どこまでもイオン化率が拡大するわけではなく、ある時点で確率1となり飽和します(イオン化の飽和)。

実際の例としては、水素分子をイオン化した例があります。真空装置中に1×10-4Paで封入し、そこへ、YAGレーザー第2高調波、30psパルス,10mJの超短パルスレーザーを照射することで、2×103個の水素イオンを検出しています。

今回紹介したレーザーの応用例は、レーザーの高密度エネルギーが貢献した特徴的な例であるといえます。

【基本】ポインティングベクトル

電磁波の流れの密度を表すポインティングベクトルを見てみます。

x軸の正の方向に進行する電磁波で、y軸方向に振動している電場を考えます。

$$ \bf{E} = (0, E_y, 0) $$,
$$ E_y = E_0 \sin(kx – \omega t) $$

磁場は、z軸方向に振動します。

$$ \bf{H} = (0, 0, H_z) $$,
$$ H_z = H_0 \sin(kx – \omega t) $$
ここで、\( H_0 = \sqrt{ \frac{\epsilon_0 }{\mu_0} }E_0 \) です。

ここで、電場と磁場のベクトル積を考えます。

$$ \bf{S} = \bf{S} \times \bf{H} = (S_x, 0, 0)$$

これをポインティングベクトルと呼び、電場と磁場に垂直ばベクトルです。この場合、x成分だけが存在し、

$$ S_x = E_0 H_0 \sin^2 (kx – \omega t) $$

となります。

ここで、電磁波が運ぶエネルギー密度の波長あたりの平均を考えてみます。時刻t=0の時にxについて0からλまで積分し、λで割ることで平均を求めてみます。

$$ S_x = \frac{1}{\lambda} \int^\lambda_0 S_x dx = \frac{1}{2} \bf{E_0} \bf{H_0} $$

この値は、時間によりませんが、ある点xにおいて、1周期の時間平均をとった場合も同じ結果となります。

また、電磁場の電場エネルギーと磁場エネルギーの1周期にわたる時間平均は同様に計算して、次のようになります。

$$ \overline{\frac{1}{2} \epsilon_0 E^2_y} = \frac{1}{4} \epsilon_0 E^2_0 $$,
$$ \overline{\frac{1}{2} \mu_0 H^2_z} = \frac{1}{4} \mu_0 H^2_0 $$

この両者は等しいので、次が分かります。

$$ \frac{1}{2} E_0 H_0 = \frac{1}{2} \epsilon_0 E^2_0 \frac{1}{ \sqrt{\epsilon_0 \mu_0} } = c \frac{1}{2} \epsilon_0 E^2_0 $$

これにより、

$$ \overline{S_x} = c( \overline{\frac{1}{2} \epsilon_0 E^2_y} + \overline{ \frac{1}{2} \mu_0 H^2_z}) $$

となり、電磁波のエネルギーがx軸方向へ高速で運ばれており、ポインティングベクトルであらわされることが分かります。

【基本】フラウンホーファー線

太陽光をプリズムを使って分光すると、特定の波長で暗い線が見られます。そのうち、特にはっきりと見える暗線のことをフラウンホーファー線と呼ばれています。

イギリスのウォラストンが1802年に発見しました。その12年後にドイツのフラウンホーファーが独立に数百本の暗線を発見し、長波長側からアルファベットの大文字でAから順に記号を付けて表しました。

記号元素波長 nm
A
B
C
D1
D2
D3
E2
F
G
G
H
酸素
酸素
水素
ナトリウム
ナトリウム
ヘリウム

水素

カルシウム
カルシウム
759.370
686.719
656.281
589.594
588.997
587.565
527.039
486.134
430.790
430.774
396.847

その約50年後には、ドイツのブンゼンとキルヒホフが炎色反応の光に2つの波長589.0nmと589.6nmがあり、フラウンホーファー線のDとD1とそれぞれ一致することを発見しました。

20世紀にはいると、量子力学の進展により、これらの波長が原子の中の電子軌道の変化によるものであることが発見されました。原子中の電子のエネルギー準位の高い軌道から低い軌道へ落ちるときの発光に起因するものであることが分かりました。

太陽は約6000度の高温のため、ナトリウムが気体として存在しています。このナトリウムによって吸収された光が地球に到達したとき、暗線として観察されるわけです。フラウンホーファー線の波長は、原子の軌道間のエネルギー差のみによって決まり、外界の影響を受けないので、波長の同定に用いられます。

天体物理学においては、恒星から届く光のスペクトラムを測定し、赤方偏移によるフラウンホーファー線のずれを調べることで太陽系と恒星の距離を推定することができます。また、フラウンホーファー線の有無から元素の有無を推定できます。

【応用】年代別 科学者

光学を支えてきた多くの科学者がいます。年代順に表示してみます。

グラフはRで作成しました。そのコードは、下記のとおりです。

library(tidyverse)
library(ggplot2)

dat <-matrix( c(
  "ガリレオ", 1564, 1642,
  "ケプラー", 1571, 1630,
  "スネル", 1591, 1626,
  "フェルマー", 1607, 1665,
  "ホイヘンス", 1629, 1695,
  "レーフェンフック", 1632, 1723,
  "フック", 1635, 1703,
  "ニュートン", 1643, 1727,
  "ダランベール", 1717, 1783,
  "ラプラス",1749, 1827,
  "ヤング", 1773, 1829,
  "マリュス",1775, 1812,
  "リッター",1776, 1810,
  "ガウス", 1777, 1855,
  "フラウンホーファー", 1787, 1826,
  "フレネル",1788, 1827,
  "レンツ",1804, 1865,
  "フィゾー",1819, 1896,
  "ザイデル", 1821, 1896,
  "マクスウェル", 1831, 1879,
  "アッベ", 1840, 1905,
  "レントゲン", 1845, 1923,
  "リーギ", 1850, 1920,
  "フィッツジェラルド", 1851, 1901,
  "マイケルソン", 1852, 1931,
  "プランク", 1858, 1947
), ncol=3, byrow = TRUE)

chronological_dat <- dat %>% 
  as.data.frame() %>% 
  rename("name"=V1, "b_year"=V2, "d_year"=V3) %>% 
  mutate(b_year=as.numeric(b_year), d_year=as.numeric(d_year)) %>% 
  arrange(desc(b_year)) %>% 
  mutate(cap=paste(name, "(", b_year, "-", d_year, ")")) %>% 
  pivot_longer(!c(name, cap), names_to="fname", values_to="fyear") %>% 
  ggplot() +
  geom_line(aes(fyear, fct_inorder(name, fyear), group = name), color = 'black', size = 2) +
  geom_point(aes(fyear, fct_inorder(name, fyear)), size = 3) +
  theme(axis.title.x=element_blank(), axis.title.y=element_blank())

chronological_dat

【応用】レーザーVIAホール加工

電子部品が載ったプリント基板の層間を電気的に接続するための穴(スルーホール)は、基板の小型化とともに小さくなってきました。一方で、電流確保のためにその数を増やす必要がある場合があります。また、ランドとの確実な導通も必要とされるため、穴の品質も求められます。

このVIAホール加工にもレーザーが用いられてきました。1971年に米ウエスタン・エレクトリック社により最初にこの技術が紹介されたようです。1974年には、同社がCO2レーザーを用いた加工装置を実用化してVIAホール加工の量産を始めたようです。この後、固体レーザー、エキシマレーザーを用いたVIA加工も提唱され、電子産業の盛り上がりの波に乗り、レーザーの一大応用となりました。

レーザー光源としては、樹脂を加工するという観点からCOレーザーが多く用いられています。また、このレーザーは技術的にも成熟しており大出力の者でも安定的に稼働でき、導入・ランニングコストも安いというメリットがあります。一方で、より大出力・高安定性を求め、YAGレーザーやファイバーレーザーなどを利用する例もあります。また、波長が長いと近年の微細穴加工に対応することが厳しくなります。実際にビアホール径は、数百μmだったものが、最近では数十μmにまで小さくなってきています。この微細化に対応するため、より短い波長のレーザーを用いる動きもあるようです。

VIAホールを加工するレーザー加工機は、電子部品の需要増から、より早くより多くの加工が求められます。そのため、ビーム走査はガルバノスキャナーで高速に行われます。さらに、1台の装置に複数のレーザーを搭載し、複数のビームラインで一度に加工する技術もあります。最新の加工機によっては、1秒間に数万穴という非常に高速の穴加工ができる場合があります。また、レーザー・レーザー光学系の進歩のみならず、アライメント・検査のための画像認識技術や、基板搬送技術も日々進歩しています。

基板の種類の多様化が進んできました。最近の加工機では、BGA, FPC, CSP, HDIなど様々な基板に対応できるようになってきています。このように、任意の加工対象へ柔軟に対応できるのがオンデマンド加工ができるレーザーの強みです。