【応用】レーザートリミング

レーザーは、微小な領域へエネルギーを集めることができ、除去量も精密に制御できるというメリットがあります。このように、微小な量だけ材料を除去する応用例の一つとしてレーザートリミングがあります。

ここでいうトリミングとは、抵抗やコンデンサなどの電子部品を少しだけ削り、その性能を調整することです。このような電子部品は最終製品の小型化・高性能化によって、どんどん小さく精度が高くなってきています。そのため、品質のばらつきが無視できなくなってきました。そこで、例えば抵抗であれば、抵抗そのものを少しだけ削り抵抗値を調整する作業が行われるようになりました。これにより、精度向上、歩留まり向上、製造工程での自動化、データ化ができるというメリットがあります。このような作業は、ファンクショントリミングと呼ばれ、そのための装置はファンクショントリマと呼ばれています。

ファンクショントリマは、レーザー、ガルバノミラーを含む光学系の他に、サンプルを移動させるステージや観察・アライメント系、性能を測る測定系などから構成されています。対象サンプルは、電子部品として個別になったものもあれば、ウエハを直接扱えるものもあります。装置形状は、多くを手動で行う卓上タイプからウエハを連続的に自動加工できる大型の装置まであります。

使用されるレーザーは、サンプルによって様々です。ナノ秒レーザーが使われる場合もあれば、より高精度の非熱加工を求め超短パルスレーザーが使用される場合もあるようです。波長もIRからGreen、UVまで幅広く使われているようです。レーザー出力も数Wの小出力タイプから、数十Wの高出力タイプまで用途に合わせて選択します。多くのメーカーでは、お客様の用途に合わせたカスタマイズを行っており、サンプルに最適な装置構成となっています。

かつては、微小粉体を高速・高圧で噴射して材料を除去するサンドブラストによるトリミングも行われていたようです。マイクロクラックが発生せず高速に低コストで導入できるというメリットがあったものの、微小量の制御が困難であり、削りすぎ(オーバーシュート)も起き、表面が荒れる(電子部品のノイズや安定性の原因)という課題がありました。

世界で最初にレーザートリミングを実用化したのは、米モトローラと言われています。1971年にネオジウムYAGとCOレーザーを組み合わせたレーザートリミングの開発に着手し、翌72年に米テレダインが最初の装置を市場に投入したようです。

このような、レーザーを用いたファンクショントリミンマを製造・販売しているメーカーは、国内外を問わず多く存在しているようです。また、その需要の増加、多様化によって、レーザトリマを専門に行う受託加工業者もあるようです。

今後も電子部品の小型化・高機能化、低コスト化が進むと考えられ、レーザートリマの重要性はさらに高まりそうです。

【応用】光ファイバ融着加工

光ファイバ同士を接続したり、先端を球状にしたり、コアを広げたりと様々な加工がなされる場合があります。

多くの場合には、熱を加えることで光ファイバ先端を変化させることで実現しています。この熱源としてCO2レーザーが使用されることが多いです。理由としては、比較的簡単に微小領域へ熱を集中できること、CO2レーザーの波長が樹脂に吸収されやすく効率が良いこと、技術的に成熟しておりコストが安いことなどがあげられます。

光ファイバ用の加工機として販売されているものもあります。このような装置は、レーザー加工部に加えて、アライメント・観察機能や制御用ソフトウエアが組み込まれており、確実に容易に作業できるようになっています。また、レーザーを使用するため、その安全性を保つため、装置全体としてレーザー安全企画クラス1に適合しているものがほとんどです。

操作性、加工安定性を考慮して、デスクトップ型の加工機が多くみられます。加工も、自動で完結できる機種もあれば、細かな設定を手動で変更できる機種もあるようです。

光ファイバは、高速情報通信の重要なインフラとして整備されてきています。伝送容量を拡大させるために、時分割・波長分割多重伝送や、空間分割多重伝送(マルチファイバ)などの技術開発が進められてきました。特に、マルチファイバは容易に伝送容量を増やせるため、ファイバの心数は今後もさらに増えると予想されます。

ファイバの溶着は、ここにあげたCO2レーザーの他にアーク放電溶着でも行われてきました。しかし、アーク放電では距離に応じて溶着性能が異なってしまい、特にマルチファイバの加工での利用に適さないようです。今後は、さらにCO2レーザーへの期待が高まりそうです。

【基本】アシストガス

レーザーにて加工を行う際に、レーザー照射と同時にある特定の気体を被加工物へ噴射することがあります。これをアシストガスと呼んでいます。

アシストガスを用いる理由としては様々ありますが、除去加工を行う場合には、以下のことが挙げられます。
(1)レーザー加工で出た飛散物を取り除き、レーザーが十分に被加工物へ到達し加工効率の低下を防ぎ、精度の良い穴や溝加工を行います。
(2)酸素ガスを用いる場合、積極的な酸化を促しその熱的作用により加工速度を向上させます。反対に、窒素等の不活性ガスを用いる場合は、被加工物の酸化を防ぐ役割があります。
(3)ガス流によりレーザー加工中の被加工物を冷却し余分な熱影響を避けます。
(4)レーザー加工によって生ずる飛散物等が加工レンズに付着することを防ぎ、レンズを保護します。

アシストガスを使う場合には、ガスの種類や流速、圧力、温度などの条件設定が重要となります。この条件は、各社がノウハウとして持っています。

【基本】フレネルロム

光の位相を変化させる光学素子として、フレネルロムがあります。こちらのページで説明しましたように、光の全反射の現象を利用して1/4ないし1/2波長の位相変化をさせます。1/2波長の位相変化は、1/4波長の位相変化を2回繰り返すことで実現しています。直線偏光を入れるとフレネルロム内部での全反射により光のp,s成分の位相差がπ/2となるので、出射光は円偏光となります。つまり、1/4波長板として機能します。また、逆に円偏光を入れると直線偏光が得られます。このように、フレネルロムは直線偏光と円偏光の変換素子として働きます。

このフレネルロムの特長としては、他の波長板より広い波長範囲があげられます。その原理からも分かりますように、複屈折波長板では困難な広帯域波長板として機能します。

波長帯域が広いので、白色光源の偏光方向を変えることもできます。これを利用した分光計測なども行われます。

また、レーザー応用装置では光アイソレータとしても使われます。フレネルロムに直線偏光の光が入ると円偏光として出てきます。この光が鏡等に反射して戻るときには入射光と反対回りの円偏光となります。この光が再度フレネルロムに入ると直線偏光で出てきますが、偏光の振動方向は入射光と直交しています。よって、フレネルロムの前に直線偏光子を置いておけば、反射光は光源には戻らないことになります。この原理から電子部品のダイオードと同じ働きをしていると見ることもできます。

レーザー装置の場合、反射光が光源に戻るとレーザーが不安定になります。よって、このような光アイソレータを用いて反射光が光源に戻らないようにします。光ディスクプレーヤーや光通信で利用されています。

フレネルロムの形状は、プリズム状で、内部で反射を起こしています。材質は、BK7や合成石英が多いようです。

実際の使用では、汚れなどには注意することはもちろんですが、光の入射角度も重要です。これをしっかり管理しないと所定の性能を得ることはできません。

このフレネルロムは、発明者であるフランスの物理学者オーギュスタン・ジャン・フレネルにちなんで名づけられました。

【応用】レーザークラッディング

金属材料へ異なる材料を置き、その材料を溶融させて表面に付着させることで複合材料化することを言います。これは、レーザー肉盛とも呼ばれています。

その方法としては、ワイヤや粉末を供給してレーザーで溶かしながら溶着させていきます。ニッケル、クロム、チタン、マンガン、ステライト、アルミなど金属や金属合金が用いられます。加工中は、加工の促進、加工の安定化のためにガスの噴射も同時に行われることがあります。

付加する材料は基板にはあまり浸透させず、付加する材料と基板の材料の性質はそのまま利用します。異部材のクラッディングも可能ですので、母材に別の機能を付加することが可能です。粉末レーザークラッディングでは、サブmm程度以上の厚み制御が可能です。このように、微細な肉厚の制御ができることが強みとなっています。

レーザーヘッドと被加工物を相対的に上手く移動させることができれば、平面のみならず、円筒や任意の3次元形状へもクラッディングできます。

レーザーを用いるため、微細なスポットでの溶接が可能であるという特徴があります。また、熱影響を小さくできることも利点です。さらに、レーザーのパラメータ等を数値で管理できるため再現性が良く安定した加工ができます。

この技術は、2000年代前半にドイツで始まったといわれています。レーザー先進国のドイツらしい技術です。

【基本】透過率と反射率

振幅と強度の反射率と透過率”の項では、透過光、反射光と媒質の屈折率の関係を求めました。

今回は、入射光に対する透過光と反射光の強度、透過率と反射率を求めてみます。

光の強度Iは次の通りとします。

\begin{gather}
I = \frac{n E^2}{2 \sqrt{\mu_0}}
\end{gather}

媒質の屈折率はnとし、透磁率はすべての媒質で真空透磁率μ0に等しいとします。媒質の境界面での反射、透過の強度は次の通り表されます。

・入射光強度
\begin{gather}
I_{ap} = \frac{n_1}{2 \sqrt{\mu_0}} |A_p|^2 \cos \phi_1
\end{gather}
\begin{gather}
I_{as} = \frac{n_1}{2 \sqrt{\mu_0}} |A_s|^2 \cos \phi_1
\end{gather}

・反射光強度
\begin{gather}
I_{rp} = \frac{n_1}{2 \sqrt{\mu_0}} |R_p|^2 \cos \phi_1
\end{gather}
\begin{gather}
I_{rs} = \frac{n_1}{2 \sqrt{\mu_0}} |R_s|^2 \cos \phi_1
\end{gather}

・透過光強度
\begin{gather}
I_{tp} = \frac{n_2}{2 \sqrt{\mu_0}} |T_p|^2 \cos \phi_2
\end{gather}
\begin{gather}
I_{ts} = \frac{n_2}{2 \sqrt{\mu_0}} |T_s|^2 \cos \phi_2
\end{gather}

ここで、”振幅と強度の反射率と透過率”の項で求めたフレネルの公式を用いると、次の関係が求められます。

\begin{gather}
R_p \equiv I_{rp} /I_{ap} = \frac{ \tan^2 (\phi_1 – \phi_2)}{ \tan^2 (\phi_1 + \phi_2)}
\end{gather}
\begin{gather}
R_s \equiv I_{rs} /I_{as} = \frac{ \sin^2 (\phi_1 – \phi_2)}{ \sin^2 (\phi_1 + \phi_2)}
\end{gather}
\begin{gather}
T_p \equiv I_{tp} /I_{ap} = \frac{ \sin 2 \phi_1 \sin 2 \phi_2}{\sin^2 (\phi_1 + \phi_2) \cos^2(\phi_1 – \phi_2)}
\end{gather}
\begin{gather}
T_s \equiv I_{ts} /I_{as} = \frac{ \sin 2 \phi_1 \sin 2 \phi_2}{\sin^2 (\phi_1 + \phi_2) }
\end{gather}

これらにより、

\begin{gather}
R_p + T_p = 1
\end{gather}
\begin{gather}
R_s + T_s = 1
\end{gather}

が成り立つことが分かります。すなわち、媒質を通り抜けても光エネルギーが保存されるわけです。

また、垂直入射の場合には、

\begin{gather}
R = \left( \frac{n_1 – n_2}{n_1 + n_2} \right)^2
\end{gather}
\begin{gather}
T = \frac{4 n_1 n_2}{(n_1 + n_2)^2}
\end{gather}

となります。

【基本】光の反射

光の材料への影響を考えるとき、反射率をR、吸収率をA、透過率をTとすると、
 R+A+T=1
の関係が成り立ちます。これらの現象は、レーザー加工にとって重要な意味を持ちます。

レーザーが材料に何かしらの影響を与えるには、吸収が一番重要です。レーザーのエネルギーが吸収され、熱もしくは化学的な反応となって材料を除去します。もしくは、光造形法ですと材料を固化して形状を創生します。したがって、レーザーのエネルギーをうまく吸収させることによって効率よく加工ができます。

例えば、金属加工を考えた場合、透過率Tは0に近いですから、吸収率Aを大きくするには反射率Rを小さくすれば良いことがわかります。この、反射率Rを詳しく見ていきます。

反射率Rは、その定義から次の式で表されます。

\begin{gather}
R = \frac{I_R}{I_0}
\end{gather}

屈折率がそれぞれn1, n2の媒質1から媒質2へ光が入射する時、入射光の角度θiと透過光の角度θtを用いて、反射率Rは次式で表されます。

\begin{gather}
R = \frac{ n_1 \cos \theta_i – n_2 \cos \theta_t }{n_1 \cos \theta_i + n_2 \cos \theta_t}
\end{gather}

垂直に光が入射する場合、比屈折率をn=n1/n2とした場合、この反射率Rは、

\begin{gather}
R = \frac{ (n-1)^2}{(n+1)^2}
\end{gather}

となります。ここで、複素数を用いた屈折率を考えます。屈折率nとダンピングファクターk(波数ではありません)を用いると、反射率Rは次のようになります。

\begin{gather}
\hat{n} = n – ik
\end{gather}
\begin{gather}
R = | \frac{ \hat{n}-1}{\hat{n}+1} |^2 = \frac{(n-1)^2 + k^2}{(n+1)^2 + k^2} = \frac{n^2 + k^2 + 1 -2n}{n^2 + k^2 + 1 +2n}
\end{gather}

ここで、n,kの関係を求めるために、波動方程式を考えます。

光の性質の項では、Maxwell方程式を用い、光の性質を確認しました。ここでは、磁場Hの変化を次のように表しました。

\begin{gather}
\nabla \times \mathbf{H} =\frac{\partial \mathbf{D}}{\partial t}
\end{gather}

しかし、電流は真の電流の他に電束密度の時間変化に伴う変位電流が存在することを考慮すると、次の関係が成り立ちます(Amp`ere-Maxwellの法則)。

\begin{gather}
\nabla \times \mathbf{H} = j + \frac{\partial \mathbf{D}}{\partial t}
\end{gather}

この関係を用いて、波動方程式を再度計算すると次のようになります。

\begin{gather}
c^2 \nabla^2 \mathbf{E} = \frac{\sigma}{\epsilon_0} \frac{\partial \mathbf{E}}{\partial t} + \epsilon \frac{ \partial ^2 \mathbf{E}}{\partial t^2}
\end{gather}

x成分のみを考えると次の通りとなります。

\begin{gather}
c^2 \frac{\partial^2 E_x}{\partial z^2} = \frac{\sigma}{\epsilon_0} \frac{\partial E_x}{\partial t} + \epsilon \frac{ \partial ^2 E_x}{\partial t^2}
\end{gather}

この解を次のように置きます。

\begin{gather}
E_x = E_0 exp[i \omega (t – \frac{zn}{c})]
\end{gather}

すると、以下の関係が求まります。

\begin{gather}
n^2 = \epsilon – \frac{\sigma}{\epsilon_0 \omega} i = \epsilon – \frac{\sigma}{2 \pi \epsilon_0 \nu} i
\end{gather}

ここで、nを複素数で\(\hat{n}\)とすると、

\begin{gather}
\hat{n}^2 = n^2 – k^2 – 2 n k i = \epsilon -\frac{\sigma}{2 \pi \epsilon_0 \nu} i \equiv \epsilon_1 – i \epsilon_2
\end{gather}

ですので、Maxwell relation(\(\sigma \approx 0, \epsilon \approx n^2\))から、次の関係が求まります。

\begin{gather}
\epsilon = n^2 – k^2
\end{gather}
\begin{gather}
\sigma = 4 \pi \epsilon_0 n k \nu
\end{gather}
\begin{gather}
\epsilon_1 = n^2 – k^2
\end{gather}
\begin{gather}
\epsilon_2 = 2 n k = \frac{\sigma}{2 \pi \epsilon_0 \nu}
\end{gather}

これらの関係と、周波数が小さい領域\(\nu < 10^{13} Hz\)では、\(\sigma / 2 \pi \epsilon_0\)が極めて大きいことを考慮すると、次式が求まります。

\begin{gather}
n^2 = \frac{1}{2} \left( \sqrt{ \epsilon^2 + (\frac{\sigma}{2 \pi \epsilon_0 \nu})^2} + \epsilon \right) = \frac{1}{2} \left( \sqrt{ \epsilon^2_1 + \epsilon^2_2} + \epsilon_1 \right) \approx \frac{\epsilon_2}{2}
\end{gather}
\begin{gather}
k^2 = \frac{1}{2} \left( \sqrt{ \epsilon^2 + (\frac{\sigma}{2 \pi \epsilon_0 \nu})^2} – \epsilon \right) = \frac{1}{2} \left( \sqrt{ \epsilon^2_1 + \epsilon^2_2} – \epsilon_1 \right) \approx \frac{\epsilon_2}{2}
\end{gather}
\begin{gather}
n^2 \approx k^2 \approx \frac{\epsilon_2}{2} \approx \frac{\sigma}{4 \pi \epsilon_0 \nu}
\end{gather}

反射率Rの関係に戻り、上記の関係を用いると、反射率Rに関して次式が求まります。

\begin{gather}
R = | \frac{ \hat{n}-1}{\hat{n}+1} |^2 = \frac{(n-1)^2 + k^2}{(n+1)^2 + k^2} = \frac{n^2 + k^2 + 1 -2n}{n^2 + k^2 + 1 +2n}
\end{gather}
\begin{gather}
\approx 1 – \frac{4 n}{2n^2 + 2n + 1} \approx 1 – \frac{2}{n} = 1 – 2 \sqrt{ \frac{4 \pi \epsilon_0 \nu}{\sigma}} = 1 – 4 \sqrt{\frac{\nu}{\sigma} \pi \epsilon_0}
\end{gather}

この関係式は、Hagen-Rubensの公式と呼ばれ、反射率Rと材料特性の関係を示しています。主に金属は波長が長いほど反射率は高くなります。また、電気伝導度が大きいほど反射が大きくなることが分かります。

例えば、銅はレーザーで切りにくい。という話を聞いたことがあるかもしれません。これは、上記の関係があるためだと考えられます。