前回( レーザーのパワーって何?(1))の続きとして、ピークパワーについて説明します。
微細加工に使用している超短パルスレーザーなどでは、このピークパワーの大きさも利用しています。ここでは、典型的な数値を示しながら、説明していきます。
レーザー光源の例として、パルス幅10ピコ秒( 10[ps] )、繰り返し周波数100[kHz]、平均パワー1[W]のものがあるとします。平均パワーについては、先に説明した記事をご覧ください。
このレーザーのパルスエネルギーは、次のように計算されます。
1[W] / 100[kHz] = 1 [J/s] / ( 100 *1000 [1/s] ) = 0.00001[J] = 10 [μJ]
この意味は、
「1[W]、100[kHz]のときの1パルスのエネルギーが10[μJ]である。」です。
ここで、気を付けたいのは、パルスエネルギーを求める計算には、パルス幅に関する情報が無いということです。
パルス波形として考えてみると、パルスエネルギーとは、このパルス波形の全面積です。パルス幅の長さは考慮されていないのです。注目しているのは、パルス波形でいうところの面積にあたる部分であるということです。
ですから、所謂、ナノ秒パルスレーザーも、ピコ秒パルスレーザーも、フェムト秒パルスレーザーも、同じ平均パワー、同じ繰り返し周波数であれば、パルスエネルギーも等しいということです。
さて、このパルスエネルギーの考え方を踏まえて、ピークパワーについて説明します。ピークパワーとは、パルスエネルギー[J]をパルス幅(半値全幅)[sec]で割ったものです。
例えば、パルス幅が10[ps]の場合のピークパワーは、
10 [μJ] ÷ 10[ps] = 1[MW] です。
同様に、パルス幅が10[ns] のとき 10 [μJ] ÷ 10[ns] = 1[kW]
パルス幅が10[fs] のとき 10 [μJ] ÷ 10[fs] = 1[GW] となります。
つまり、パルスエネルギーが同じであっても、10[ps]のパルスレーザーは、10[ns]のパルスレーザーよりも1000倍大きなピークパワーを持っているのです。
このように、極短い時間に、一点に大きなエネルギーを与えることができることが、超短パルスレーザーの特徴の一つといえるのです。
そして、次に、大事なパラメータとなってくるのが、エネルギー密度(フルエンス)ですが、それはまた次の機会に。