【基本】装置の性能維持

1. 装置の性能維持のために

長期にわたり安定した加工を行うためには、装置の性能維持が不可欠です。性能を確認する方法や基準は様々あると思います。弊社が得意としているのは、レーザー微細加工ですので、加工結果を評価して装置が正常に稼働しているか評価することは理にかなっていると思います。

加工結果から装置の性能維持を確認する方法としては、例えば、ある時期に加工した結果を記録しておき、その後、修理やメンテナンス後に同じ条件で加工して同じ結果が得られるかを確認する方法があります。

では、得られたデータから装置の性能が維持されているかどうかをどのように評価すれば良いでしょうか?

一つの方法は、統計的に評価する方法です。検定することにより確認する方法を以下に記します。統計的な計算にはR言語を使用します。

2. 評価

2.1 データ

ある時点で、ステンレス板へ直径φ100μmの貫通穴を40穴加工したとします。その加工穴の直径を全て測定すると、以下のdat0というデータが得られたとします。

> dat0
 [1]  99.29  94.97 100.78 101.17 101.78  91.89 101.10 101.55  92.89 104.78 103.92 111.50 100.78 100.23 100.48 100.35
[17]  90.76  91.64  99.61  97.09 100.27  89.44  92.51  94.49 104.93  94.51  96.00 100.40  98.39 100.73 111.53  94.38
[33]  98.47  97.42 107.56  96.15  99.59 103.94  94.71 108.28

その後、装置をメンテンナンスしました。従来と全く同じ条件で同じようにステンレス板へ直径Φ100μmの穴加工を40回行いました。その測定結果が、dat1として得られました。

> dat1
 [1] 107.55  97.05 106.23 102.22 105.38 102.96 109.92  95.39 100.36 102.00  97.53  97.26 103.39 102.71  88.20 109.74
[17] 105.00 118.00 107.61 100.82 120.28 120.49  96.19 106.31 102.23 104.62 104.87  95.93 105.21 114.00 102.52 102.52
[33] 111.89 108.89  93.61 104.87 113.42 111.99 106.02 107.83

結果をヒストグラムで確認してみます。

library(tidyverse)
library(ggplot2)
library(reshape2)
dat <- data.frame(dat0, dat1)
dat %>% melt() %>% 
  ggplot() + 
  geom_histogram(aes(x=value, fill=variable))  

性能が維持できているかどうかは、加工穴の平均直径が2回の加工結果でほぼ同じであると言えればよさそうです。ヒストグラムから、何となく2つの結果が似ているように見えます。性能は維持できていそうです。

より正確に評価するために、この2つのデータdat0, dat1から、メンテナンス後の装置が従来と同じ性能を維持しているか見てみます。

2.2 正規性の確認

検定を行うためには、データが正規分布しているかどうかが重要です。これにより検定方法が変わってきます。正規性の確認は、シャピロ・ウィルク検定で行います。

> shapiro.test(dat0)

	Shapiro-Wilk normality test

data:  dat0
W = 0.9765, p-value = 0.5618

> shapiro.test(dat1)

	Shapiro-Wilk normality test

data:  dat1
W = 0.97739, p-value = 0.5935

p値(p-value)を見ますと、0.05以上ですので、帰無仮説(H0:正規分布している)が棄却されなかったことになります。つまり、dat0, dat1とも正規分布しているとしてよさそうです。

2.3 等分散の確認

2つのデータは同じ分散であるか調べます。等分散の検定はF検定です。

> var.test(dat0, dat1)

	F test to compare two variances

data:  dat0 and dat1
F = 0.57319, num df = 39, denom df = 39, p-value = 0.0862
alternative hypothesis: true ratio of variances is not equal to 1
95 percent confidence interval:
 0.3031598 1.0837410
sample estimates:
ratio of variances 
         0.5731899 

p値が0.05以上ですので、帰無仮説(H0:等分散である)は棄却されませんので、2つのデータは同じ分散であると言えます。

2.4 t検定

前節で等分散であることが分かりましたので、t検定(スチューデントのt検定)を行います。等分散でない場合にはWelchの検定を行うことになります。

> t.test(dat0, dat1, var.equal = TRUE)

	Two Sample t-test

data:  dat0 and dat1
t = -4.0146, df = 78, p-value = 0.0001359
alternative hypothesis: true difference in means is not equal to 0
95 percent confidence interval:
 -8.330322 -2.807178
sample estimates:
mean of x mean of y 
  99.2565  104.8252 

p値が0.05以下ですので、この結果、帰無仮説(H0:2つの平均値データに差がある)が棄却され2つのデータに差がない、つまり同じ加工条件で加工した場合、装置は同じ加工結果を得られたことになります。よって、装置の性能は維持できていると言えそうです。

3. まとめ

検定という統計手法を用いることで、装置の性能維持ができていることを確かめる方法を見てきました。評価方法は様々ありますが、加工機ですから加工結果で性能を評価することが最も重要ではないでしょうか。

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